見出し画像

【開催報告】「ローカルモビリティ・サミットin 中国山地」&「猪田有弥さんを偲ぶ会」

開催概要

2022年度より、日本各地で地域交通に取り組むプレイヤーが西粟倉に集まり、地域の移動について、日本各地の実践者が集い事例共有や議論を交わす、ローカルモビリティ・サミットを開催してきました。

先日、2025年2月1日(土)に、「みんなでつくる中国山地百年会議」と「持続可能な地域社会総合研究所」と共に第3回のローカルモビリティ・サミットを開催しました。

今回の「ローカルモビリティ・サミットin 中国山地」では、地域の新しい移動の在り方を模索しているみんなでつくる中国山地百年会議の仲間の取組み・活動などを共有しました。

今回は、2025年2月1日に開催された第3回「ローカルモビリティサミット㏌中国山地」について各発表の概要をお届けします。


今回は、猪田さんを偲ぶ会も併せて開催し、猪田さんとモビリティみんなでつくる中国山地百年会議の関係者が、中国地方にとどまらずご参加いただき、ZOOMによる参加のみな様を含めて総勢60名以上の方にご参加いただきました。
ご参加いただいた皆様にはこの場をお借りしてお礼申し上げます。

基調講演・事例紹介・パネルディスカッション

基調講演:「ローカルモビリティの地平」(株式会社バイタルリード)

今回のサミットでは株式会社バイタルリード代表取締役 森山様をお迎えし、「ローカルモビリティの地平」と題しまして島根県大田おおだ井田いだ地区で運行している「定額乗り合いタクシー」について基調講演をいただきました。

過疎地域では公共交通サービスの縮小が進み、移動の選択しが限られる課題が深刻化し、島根県大田市井田地区もその例外ではありません。

井田地区では、「過疎型オンデマンド配車システム」を導入し、過疎地域に適した定額乗合タクシーのサービスを開始しました。サービス設計のキーワードは「そこそこ便利」。過度に便利すぎると、既存のバスやタクシーと競合してしまうため、利用者の利便性と地域の交通バランスを考慮しながら運営されているそうです。

また、ドライバーの収入を確保するために定額制を採用し、1台の車を効率的に運用することでコスト削減も実現。

利用者の方々からは、乗合タクシーを利用出来たことで、
「自分の好きなタイミングで外出できるようになった。」
「数年ぶりに同級生と再会(乗合)し、温泉津ゆのつ中心部までおしゃべりしながら移動出来た。」
という喜びの声が寄せられているそうです。

このような地域交通の持続には、「事業者」「利用者」「社会」それぞれにとって良い形を作る”三方よし”の考えが重要だと森山様は言います。

「これからの交通は、既存の交通を壊さず、きちんと”働く場”として利益を上げていく仕組みを作り、利用者が楽しみの移動ができる環境を作ることが重要であり、そのために、地域にあるものを使って、地域ごとに工夫をしながら作っていくことが必要だ。」
森山様はそう語り、講演を締めくくられました。

【株式会社バイタルリード】
バイタルリードは「交通」をキーワードに、交通計画コンサルティングとシステム開発を主軸に展開する企業です。
https://www.vitallead.co.jp/

企業ホームページより

事例紹介:「みんなのタクシー、乗り放題のサブスクモデル」
(島根県大田市井田地域)

事例紹介では、島根県大田市井田地域でのデマンドタクシー実証実験について鳶川様よりご説明をいただきました。

井田地域では、公共交通が1路線しかなく、高齢化と過疎化が進む中で、地域交通の必要性が高まっていたそうです。2016年はデマンドタクシーの実証実験を実施するも、「不便だ」という声が多く、改めて地域交通の在り方を考える契機となったそうです。

この経験を通じて住民の意識が高まり、地域全体で持続可能なまちづくりに取り組む 「井田いきいきプロジェクト」 が始動。地域交通だけでなく、暮らしを支える仕組みづくりが進められました。

また、地域タクシーの財源確保のため、婦人会が作る焼肉のたれを特産品として販売する事業を立ち上げ、法人も設立。また、空き校舎を活用した地域食堂など、住民同士の交流の場も作られています。

今後は、タクシー利用者を増やしながら、特産品づくりや地域行事の充実を図り、定額乗り合いタクシーを利用しながら持続可能な地域づくりを進めていく予定だそうです。

鳶川様の「住民が地域の課題を共有する」というお言葉が大変印象的な事例共有でした。

井田いきいきプロジェクト
世界遺産石見銀山にほど近い、島根県大田市温泉津町井田地区でまちづくりの一環として実施している「井田いきいきプロジェクト」の活動や地域の情報を発信しています。
井田いきいきプロジェクト インスタグラム

インスタグラムより

事例紹介:「住民で法人立ち上げ、スクールバス&デマンドバス&特産品」
(山口県美祢市美東町赤郷地域)

次に山口県美祢みね美東みとう赤郷あかごう地域でのデマンドバスの運行について藤村様よりお話いただきました。

過疎高齢化が進む美祢市では、公共交通の利便性が低く、高齢者や子どもたちの移動手段が課題となっており、その対策の一環として、デマンドバスの運行が進められています。一般社団法人ドリームレッドでは、地区内の小学校の廃校に伴い、隣接する地区の学校へ通う必要がある小学生のためにスクールバスを運行。また、その車両が使用されていない時間帯を活用し、高齢者向けのデマンドバスを運行することで、多くの高齢者に喜ばれているそうです。

また、特産品開発事業にも注力され地域価値の向上に大変注力されていることが伝わるお話でした。

【一般社団法人ドリームレッド】
地域自らが地域資源を活用した収益事業を行うとともに、地域の問題解決につながる生活サービス事業を複合的に行い、地域に好循環を生み出す持続可能で自立した会社を目指しています。
https://c-able.ne.jp/~n-f10617/custom4.html

発表資料より

事例紹介:「西粟倉のローカルモビリティ進化論」
(一般財団法人むらまるごと研究所)

一般財団法人西粟倉むらまるごと研究所 共同代表理事河野からは、西粟倉村のモビリティにおける取り組みについて説明いたしました。

西粟倉村は岡山県西北に位置する人口約1350人の村です。
地域の交通には、鉄道、福祉バス、福祉有償輸送がありますが、本数が少なく、また担い手が不足しているのが現状です。

西粟倉むらまるごと研究所では、研究員の猪田を中心に地域交通について取組を進めてきました。これまでの調査等を通じて、移動の困り感についてこのようにとらえています。

移動の困り感とは、その人にとって「行きたいところ」と「移動の仕組みや車両」が、うまくかみ合っていない時に生じる。移動の困り感は、あるか/ないかという二択ではない。あることもあるし、ないこともあるということの繰り返しに対応できるサービスの検討が必要。

そこで、移動の困り感を解決し「動くを楽しむ」ことを支援するサービス・インフラ・システムを提供するモビリティセンター を設立し、
・レンタカーサービスの提供
・移住者向け車両シェアリング
・社会福祉協議会との共同利用
などを実施しています。

今後は運転代行や有償輸送などの導入を進め、車両貸出と移動支援を組み合わせた持続可能な地域交通の仕組みを模索していきます。

【一般財団法人西粟倉むらまるごと研究所】
「テクノロジーは地域・人をしあわせにできるのか」を問い続け、
人口約1,300人の小さな村で、村をまるごとフィールドとして最新テクノロジーを用いた研究・実証事業が行われる環境を築き、未来につなぐことを目的にしています。
https://muramaru.tech/

事例紹介:みんなでつくる中国山地紹介
(みんなでつくる中国山地百年会議)

サミット中盤では、今回共同開催をした「みんなでつくる中国山地」について紹介がありました。

「みんなでつくる中国山地」は、中国山地に暮らす人々が自らの地域の現状を記録・発信し、次の100年に向けた社会の在り方を提案する取り組みです。活動の中心として、2020年から100年間、毎年発行を目指す年刊誌『みんなでつくる中国山地』を制作しています。

最新号には、東京を中心とした都市開発に伴い、人や物をいかに早く運ぶかが重視されてきた現状に疑問を投げかけ、「本当に便利で早い移動だけで良いのか?」という問題意識があります。「移動」をキーワードに、これからの暮らしのヒントを多様な寄稿を通じて探求しています。

【みんなでつくる中国山地】
2020年から100年間、毎年発行を目指す『みんなでつくる中国山地』の出版事業を中心に、中国山地の活動をつなげるための各種実践プロジェクトの推進、データベースの充実、学びの提供を目指しています。
https://cs-editors.site/

みんなでつくる中国山地noteより https://note.com/chugoku_sanchi

パネルディスカッション

パネルディスカッションの冒頭、導入として持続可能な地域社会総合研究所所長 上越市創造行政研究所 所長の藤山様よりローカルモビリティの現状と未来についてお話いただきました。

「交通の在り方が分野や拠点の位置、交通体系などでバラバラになっているのではないか」という問題提起がありました。これらをいかに繋ぎ直し、小さな地域、自治体、広域でどのように連携していくか、また拠点の在り方も同時に考える必要があると指摘されました。

この問いかけを受け、以下の4つのテーマでディスカッションが行われました。以下にディスカッションテーマと登壇者の方の回答ワードを提示いたします。(パネリストの皆様のお名前については、ディスカッション中の表記と同形式で敬称略とさせていただきます)

1.ローカルモビリティの現状で一番困っていること、人々は?

井田:「タクシーの利用が少ない、運行範囲が狭い」 
赤郷:「人口減少、高齢化、少子化」
森山:「不便さの進行、交通事業者」
河野:「ニーズとシーズの多様性」 
森田:「車への依存(移動の個人化)」
藤山:「送迎する人」

2.移動が便利で早くなったのに、なぜひとはちゃんと『出会わなくなった』のか?

井田:「地区内の出会いから地区内での出会い」
赤郷:「人口減少、すれ違い、家に閉じこもる」
森山:「出合いの場(キカイ)」
河野:「スピードと個人空間」
森田:「移動と出会いの空洞化。みんなでつくった公共交通が過疎地域から切り離される。地域内で人が出会わなくなってる。個人が便利を追求」
藤山:「広場が無い」

3.ローカルモビリティを進化させる『掛け算』(合わせ技)はこれだ!

井田:「集会の場・行事×利用者」
赤郷:「価値観×楽しいイベント」
森山:「地域の力×経営の力」
河野:「移動する手段×移動する目的」
森田:「里山×自治」
藤山:「待ち時間×一人一芸」

4.中国山地からこんな『ローカルモビリティ』を生み出したい!

井田:「ものづくりの為の利用としての地域交通活性化」
赤郷:「シニアカー、自動運転車、ドアtoドア」
森山:「生命維持装置→潤いのある生活のしくみ」
河野:「人と物と感情を運ぶ車」
森田:「屋台 移動しながらくらす」
藤山:「(少量多品種に対応可能な自動物流)コンテナ」

藤山様に進行いただき各発表者を交えた本パネルディスカッションでは、各地域の皆様がお考えになられている思いを文字化いただき大変興味深く拝見しました。

猪田有弥さんを偲ぶ会

モビリティサミット終了後は会場を西粟倉むらまるごと研究所のむlaboに移動し猪田有弥さんを偲ぶ会を開催しました。
地域のポラリスの会の手製料理などをいただきながら、皆様思い思いの時間をお過ごしになり、いたるところで思い出話が聞こえてきました。

最後に、主催者から記念品を猪田さんの奥様へお渡しし、散会となりました。
長時間にわたる催しでしたが、終始なごやかな雰囲気で進み無事「モビリティサミット㏌中国山地」を開催することができました。

ご参加いただいた皆様及びご協力いただいた皆様、ありがとうございました。

お問合せ
一般財団法人西粟倉むらまるごと研究所
〒707-0504 岡山県英田郡西粟倉村長尾1464
TEL:090-4109-6500
mail:office@muramaru.tech
HP:https://muramaru.tech/


いいなと思ったら応援しよう!