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それから『見た夢』

見た夢

外は雨で、僕は一人ぼっちだ。

昨日、
見た夢はなんか不思議だったなあ。
あんなに廊下に人がいたのに、
君だけは見つけられなかったよ。

雨は続いて、今日も一人ぼっちか。

昨日、
見た夢はなんか嫌な感じだ。
あんな悩ましい君の姿は、
二人でいた頃にもなかったよ。
絵にもならない不満や痛みを
切っては貼って、
ちぎっては貼って、
隙間だらけの日々を埋めてきたんだよ。

雨はあがって、
季節が変わりそうだなあ。
雨はあがって、
君は一人ぼっちかい?


【解説】
山下清の作品に『清の見たゆめ』という貼り絵がある。
これは山下清が見た夢を実際に描いた作品で、
一つ目のバケモノや巨大なヘビや蜘蛛が
海から人間を襲っている絵で、
他の絵に比べてもインパクトがあったので、
かなり小さい頃に見てから
大人になるまでずっと覚えていた。
この前置きがあると
後半で出てくる
「絵にもならない不満や痛みを
切って貼って
ちぎっては貼って
隙間だらけの日々を埋めてきたんだよ」
の意味がよく分かると思う。

この曲は僕の見た夢の話。
大人になってから
高校生の時の夢を見たけど
廊下であの頃に付き合っていた
彼女が見つけられたなかった夢を見た日、
その彼女と2人で部屋にいて、
初めて突然向こうから
ベッドに誘われた夢を見た日の事を歌詞にした。
夢ではいつも突然、
意図してないタイミングで
別れた彼女がいきなり現れる事がある。
おそらく
多くの人が体験したことはあるだろうし、
だからなんなんだ?って話なんだけど、
朝起きて、
「これは彼女からのSOSなのかもしれない。
今1人で寂しい思いをしてるのかもしれない。」
とスピリチュアルに思う時もあった。
でも所詮夢なので
「そんな訳ないか」
と昼を過ぎた頃には忘れてる。
おそらくだけど、
1人で寂しい思いをしてるのは本当は自分で、
それをただ別れた彼女に
身勝手にも重ね合わせていただけだと思う。

彼女と別れてから
「何を今更夢まで出てきてるんだよ」
と不満に思ったり、
「あの時、ああすれば良かったなあ。」
と心に小さな痛みを感じたり、
そんな気持ちになったとしても
もう今となっては
それを本人に伝えることができない。
別れている以上、その権利がない。
そしてこんな些細な感情の浮き沈みは
山下清の夢のような
芸術性があるものでもないから、
作品として残せるようなものでもない。
でも
そんなやり場のない気持ちを
切って貼ってちぎっては貼って、
僕は日々曲を作ってきた。

個人的な印象だけど、
季節の変わり目には大雨が降る気がして、
いつも大雨が降ると
新しい季節が来る気がしてる。
「新しい季節がやってきたら、
また新しい生活が始まる。
だから今寂しくてきっともう大丈夫だよ。」
と彼女にも自分にも言い聞かせてるような
そんな最後にした。

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