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今のわたしに必要だったのはこういう時間だった

今度の土曜、朝から1日出かけてきてもいい?
久しぶりに夫にそう宣言し、娘を1日託してお出かけを実行してきた。

夫婦共通の趣味である登山。わたしの登山靴が昨シーズンに壊れてしまっていたので今シーズンの登山に向けていよいよ新しいものをゲットしなければならず、登山靴を買いに行くことにした。というのは半分口実で、本心はそれより何よりわたしはひとりの時間が欲しかった。

夫に宣言してからは、その1日を有意義に過ごすためのリサーチを開始した。
まずは主目的の登山靴を買うために登山系の品揃えがよいアウトドアショップの多い神保町に行くことに決めて、その他にも行きたい書店やランチに食べたいものなどを調査。
以前から一度行ってみたかった喫茶店 穂高も近くにあることに気付き、そこも計画に入れる。しかも朝8時から営業していると知り、朝早く家を出て喫茶店でモーニングを食べながら読書、みたいな素敵なプランを思いつき心が躍る。

さて当日、実際は朝少し出遅れたので喫茶店でモーニングは諦めたものの、10時前には新御茶ノ水に到着し、まずは大型書店をぶらぶら。
11時の開店時間に合わせてアウトドアショップに行き、2店舗目で良い店員さんに接客してもらって満足する買い物をすることができた。

この日のメインミッションは完了。この時点で13時。なかなかいい調子。

お腹が空いてきた。事前に調べていた候補は、神保町といえばのカレー、天丼、以前から行ってみたかった洋食屋。
今食べたいものは?自分のその時の気持ちに従って天麩羅屋さんへ向かう。
5、6人ほど並んでいたので最後尾へ。前に並んでいるおそらくたまたま前後に並んだご夫婦とご婦人が世間話をしている。こういうのって何だかいいよね、と思いつつ後ろに並んでいると、そのご婦人と一緒のタイミングでカウンターの隣の席に通される。並んでいた時、前のご夫婦とお話ししていた流れか、わたしにも「このお店はよくいらっしゃるんですか?」と話しかけてくださった。
普段のわたしはシャイで自分から知らない人に話しかけたりしないタイプではあるものの、話しかけられるのは嬉しい。
ちょこちょこと会話しながら美味しく揚げたての天丼をいただく。
前はもう少し天麩羅が大きかったのよと小声で教えてくれたり、お茶をしているそうで近くの和菓子屋さんも教えてくださった。
ご婦人が先に食べ終わり挨拶して別れ、ほんわり温かな気持ちでいくつか古書店などを覗きながら、迷わず教えてもらった和菓子屋へ向かう。

さゝま

なんと素敵な店構え。思い切って店内に入ると、数種類の生菓子と羊羹、最中。せっかくなので家族へのお土産に生菓子を3つ選ぶ。紫陽花や梅などをモチーフにしたものが並んでいて、どれにしようか迷う。なんて豊かな時間なのだろう。

なんか今日はいい流れだなと思いつつ、朝行けなかった御茶ノ水駅の喫茶店 穂高へ向かう。あとはのんびり本でも読んでから帰路に着こうと。
こちらもとても素敵な店構えに期待が高まる。残念ながらはじめにのぞいた時は満席で入れなかったけれど、向かいの丸善をブラブラして迷っていたエッセイを買い、もう一度のぞいてみると入ることができた。
期待通り落ち着ける山小屋のような雰囲気。この日は暑かったのでアイスコーヒーを注文し、読みかけの本を開く。
そうそう、こういう店でゆっくり本を読む、こういうことがしたかったんだ!と細胞が喜んでいる。
ふと向こうの席で同じように本を読み耽っていた女子が携帯を手に取り画面を見ると微かにでもとても幸せそうに笑ったのが目に入る。あぁ、なんかいいな。そんな風に思える今のわたしはかなり心が解放されているな、と客観的に思う。

こどもがこの春から小学生になり、色んなことのリズムが変わったり、手を焼くことが増えていたり、それに仕事でもモヤモヤしていた。
知らず知らず何かが溜まっていたのだと、この日を過ごしてみたから気付くことができた。
買いたてのエッセイを読みながら電車に揺られ家に帰る。

ただ自分のペースで行きたいところに行き、買いたいものをゆっくり選んで買い、食べたいものを味わって食べて、帰りの時間を気にせず過ごす。
気付けばこの日はほとんどイヤホンをしていなかった。普段は効率よく情報収集したり、学びになるようなことをインプットしようと隙あらば何かを聞いているのだけれど、この日はきちんと自分の心の声を聞こうとしていたのかもしれない。

今のわたしにはこういう時間が必要なのだと心から思えた一日だった。

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