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時事無斎雑話(12) エレバン放送第37日本支局から、新型コロナワクチン接種の体験レポートです(前編)

 今日は。エレバン放送第37日本支局から、時事無斎こと村正(むら ただし)がお送りします。
 相も変わらぬコロナ禍の中、皆様はいかがお過ごしでしょうか。季節が秋から冬に向かう中、感染の再拡大も懸念されるところです。その一方、ネット上ではいわゆるネトウヨ界隈やオカルト・宗教業界を中心に、未だにマスク着用、PCR検査、ワクチン接種といったコロナ対策に嘲笑を浴びせる胡散臭い主張が飛び交っていて、どうかすると大手出版社やマスコミまでがその種の主張を有り難そうにタレ流すケースさえ見受けられます。そういう記事を目にするたびに、編集者はいったい何のために存在しているのかと思わざるを得ません。

問:マスクをしていても新型コロナに感染することはあるのだからマスクを着用する必要などない、という主張をどう考えるべきでしょうか。
答:酒を飲まずに車を運転しても事故に遭うことがあるのだから飲酒運転を禁じる必要はない、というのと同様の主張です。
問:新型コロナウイルスのPCR検査を広く実施すると医療崩壊が起きるという主張は正しいのでしょうか?
答:地震計を設置すると地震が増えるという主張と同程度の正しさです。

 そんな中で私自身は何とか1回目のワクチン接種を済ませることができました。この種の体験は、その時代の人にとってはありふれたことでも少し経つと忘れられてしまい後世に詳細が伝わらない場合があるので、記録を残すことも兼ねて経緯をレポートしておきます。ワクチン接種について巷に飛び交っている荒唐無稽な主張を多少是正するくらいの意味はあるでしょう。
 なお、以下の体験レポートは私が住んでいる北海道の某市の話ですので、自治体によって多少の違いはあるかと思います。

※前日以前

 新型コロナワクチンについて最初の案内が送られてきたのは確か2021年の春ごろで、内容は「接種を実施する予定ですので案内をお待ちください」というものでした。自治体としても立場上、あらかじめ周知しておかなければならないのでしょう。
 それからしばらくして二枚組の「接種券」なるものが届き、これで接種が受けられるのかと思ったところ、添付の文章を読むと「あなたの順番が回ってきたら改めてお知らせするので接種券はその時までなくさないで下さい」という話でした。と言われても、なくす時はなくしてしまうものです。うっかり者の私としては、むしろ順番が回ってきてから送ってもらった方が安心でした。
 実は私自身はたまたま基礎疾患(喘息と腎機能低下)があり、定期的に病院で検査を受けているのですが、接種券が届いたあと、検査時に医師から基礎疾患を持つ人用の申請書をもらって提出したところ「優先順位の上位となる対象グループ」と判断されて接種を受けることができました。なお、医師の話では、喘息よりむしろ腎機能低下の方が症状が悪化するリスクが高いそうです。
 ただ、15人ほどいる職場の人たちは、私の1回目の接種の段階で、60歳を超えている1人と同じく基礎疾患持ちの1人が1回目の接種を受けただけで、あとは私より年上の人も含めて未だに順番が回ってきていない状態でした。職場の上司が「もう少し太れば『肥満』に該当して接種できるかもしれない」と言っていましたが、さすがにそれは本末転倒でしょう。それにしても、確か春先あたりに政府が「2021年7月中にワクチン接種を完了する」とぶち上げ、マスコミがそれを無批判にタレ流しては「これで日本も大丈夫」のようなバカ騒ぎをしていたのはいったい何だったのかと思います。

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、各国はそれぞれの対策を立てた。
中国は感染拡大を阻止するため強権で人の流れを抑え込んだ。
韓国は大規模なPCR検査で感染の拡大状況を把握し、それをもとに対策を立てた。
米国は感染を予防するワクチンの開発に取り組んだ。
ニュージーランドは入国を厳重に管理して国外から病気が入ってこないようにした。
日本はマスコミとネットを総動員して「日本は大丈夫」というキャンペーンを行った。

 接種の少し前、仕事で乗船するにあたって簡易抗体検査キットで検査を行ったところ(注1)「陰性」という結果でした。あとは接種を待つばかりです。

注1:船のような密閉された空間に病気を持ち込んでしまうとそれこそ集団感染を引き起こしかねないため、職場の決まりで乗船前にはあらかじめ自分で検査を行うことになっています。なお、自分で検体採取用の綿棒を鼻の奥深くまで突っ込むのは、プチ切腹でもしている気分でなかなかの苦行でした。

※接種(1回目)当日

 乗船も終わり、いよいよ接種の日です。いわゆる飲み合わせがどういうものか分からなかったため、念のため前々日と前日は他の薬は飲まず、さらに酒のほかお茶などのカフェインも控えて飲み物は水と麦茶だけにしておきます。もっとも、後から言われたところでは別にそこまで神経質になる必要もなかったようです。
 待ち時間が長くなるかもしれないと早めに接種会場に行って受付を済ませたところ、予約した時間より少し早く受けることができました。もともと注射が大の苦手のところに「筋肉注射は痛い」と聞いて緊張していたので、心の準備がまだできていないうちに接種となって多少慌てます。いい年こいてと思われるかもしれませんが、苦手なものは苦手なので仕方ありません。

問:注射針が苦手で良いことは何かあるでしょうか。
答:少なくとも覚醒剤中毒にはならずに済みます。

 ただ、実際には注射そのものの痛みは拍子抜けするほど軽いもので、どうやって注射から気をそらそうかと周囲を見回しているうちに終わってしまいました。おそらく猫にかじられたり引っかかれたりする方がはるかに痛いはずです。にもかかわらず(私のような猫好きだけかもしれませんが)そちらの痛みは割と平気なのはなぜでしょう。

ある研究機関が、これまでのワクチンの概念を覆す画期的な接種方法を開発した。
猫を弱毒化した病原体に感染させ、その猫と遊んで引っかかれたり噛みつかれたりすることで免疫を獲得する。

 ジョークとして書いたものの、理論上も可能なように思えます。実用化されれば「ワクチン猫カフェ」のようなものを作って防疫対策の一環とすることもできるかもしれません。どなたか研究されてみてはいかがでしょう。成功すれば、ノーベル医学・生理学賞は無理でもイグ・ノーベル賞の候補にはほぼ確実にノミネートされるのではないかと思います。
 接種後の行動について受けた注意は以下の通りです。

・当日の入浴は可。ただし長湯はしないこと。接種した場所をこすらないこと。
・水分を多めに取ること。飲酒は控える。お茶などのカフェインは問題ない。
・激しい運動はしないこと。
・食事はきちんと取る。

 そのあと、アナフィラキシーなどの急性症状が出ないかの確認のため、会場の奥で最低15分間腰掛けて待機するよう指示されました。多少警戒して少し長めに待機したものの、30分ほど様子を見て特にこれといった異常もなかったため、そのまま帰宅することにします。
 家に向かって自転車を走らせている間、接種から1時間弱が経過した頃に、接種場所から次第に鈍痛が始まり、最終的に上腕部全体に広がりました。腕を動かせなくなるほどではなく、強めの筋肉痛くらいの痛みです。発生率は84%(注2)ということですので、接種すればだいたい起きるものと考えた方が良いでしょう。ただ、それがワクチンによるものか、単に筋肉に注射針を刺したからなのかは分かりません。11%の確率で起きるという腕の腫れの方は認められませんでした。
 帰宅後、食事はきちんと取り、風呂はシャワーだけにして早めに寝ることとしました。

注2:以下、副反応の発生率は会場で渡された注意書きの数値(写真参照)を引用したものです(小数点以下四捨五入)。

コロナワクチン接種注意書

※2日目

 副反応が出る可能性を考慮して週末に接種を受けたため、この日は休みです。
 上腕部の痛みは良くもならず悪くもならない状態で続いています。さらに、午前中から36.8度の微熱(発生率15%)が出て、ほぼ丸一日続きました。そのほか軽い筋肉痛(発生率38%)の症状もみられました。こちらはおそらく副反応だったのでしょうが、どちらも行動に支障が出るほどのレベルではありません。ほかに軽い下痢(発生率16%)が出ましたが、こちらは、前日にうっかり極辛の担々麺を食べてしまったので、そちらの影響だった可能性があります。その日はおとなしく部屋の片付けなどをして過ごしました。

※3日目 

 熱は下がり、筋肉痛も治まります。上腕部の鈍痛も夜にはほぼ消えていましたが、5日目ごろまでは押すと多少痛い状態が続きました。ともあれ、普通に日常生活が送れる状態にまでは回復したようです。
 ついでに言うと、反ワクチン派の人たちが主張しているような、腕に磁石がくっついたり5G携帯の電波による指示が聞こえてきたりという現象は何一つ起こりませんでした。

 こうして1回目の接種は終わりました。2回目の接種がどうだったかについては終わった後に改めて報告したいと思います。ではここでCMを。

※後編はこちら


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