聴くと元気が出る最高のポンコツV系 Maria's†Despair『残酷故優シサ…優シサ故残酷…』
はじめに
J-POPとかで、聴くと元気が貰える曲ってありますよね。
ヴィジュアル系の楽曲だと、元気を出すというよりは辛い気持ちを代弁してくれたり、悲しい気持ちに寄り添ってくれたりするような楽曲が多く、陰キャの僕は陽気な楽曲よりもそういった陰鬱なものの方が聴いてて心地よいわけです。
ただ、今回はそんなヴィジュアル系の中でも、元気が貰える音源をご紹介したいと思います。
元気が貰えると言っても、別ベクトルで、ですけど。
Maria's†Despair『残酷故優シサ…優シサ故残酷…』
Maria's†Despair〜儚キ葬リト優雅ナ想イ出…〜
殺戮ノ森
朱イ月 蒼イ月
2002年から2005年にかけて活動していたバンド「Maria's†Despair(マリアズ†ディスペア)」の2004年発売のマキシシングルです。
世界観からして、Deshabillzからの影響を強く感じますし、ボーカルの名前も「SHUN」ですが、Deshabillzとの直接の関係はなさそうです。
バンド名は、黒夢の前身バンドGarnetのデモテープ『EINS』に収録されている同名の楽曲に、「†」みたいなかっこいい記号を入れたものなのでしょう。
余談ですが、「†」は短剣符、ダガー、オベリスクと呼ばれ、学術書で脚注があることを示したり、人名につけて故人であることを示したり、生物学において絶滅種であることを示したりする際などで用いられる記号です。
決してヴィジュアル系のバンド名や曲名につけてかっこよくするための記号ではありません。
曲の感想
1.Maria's†Despair〜儚キ葬リト優雅ナ想イ出…〜
イントロのカッケエギターのフレーズをバックに、「移り行くゥ〜季節の中でェ〜貴女と出会ったァ〜最初の夜ゥ〜想い出はァ冷血に残ったままァ〜貴女はァ〜離れていく…」
と、気が抜ける語りが挟まったかと思うと、
モタモタ…モタモタ…としたドラムがドタドタと疾走します。
ボーカルは、今までで聴いたことがないレベルの音痴素晴らしさです。
恐らく、初めて聴いた時は衝撃を受けるのではないでしょうか。
外しまくったアレンジが効いたメロディライン、滑舌の悪さ、歌詞を詰め込みすぎたあまり、めちゃくちゃ早口のオタクみたいなことになっている歌唱、何もかもが斜め下方向に振り切れているクオリティで、最高。
声色もかなりDeshabillzに寄せているように思えますが、ただでさえDeshabillzのボーカルもかなりの音痴神なのに、それを風邪引いた状態で酒をがぶ飲みさせてボコボコにしてからレコーディングしたみたいな味わいがあります。
ハモリも不協和音すぎて神。ボーカルは考えうる限りの最低ラインをぶっちぎってブラジルまで突き抜けています。
一方で、ギターのフレーズは終始メロディアスで、かっこいいんですよ。それが超絶スーパーポンコツボーカルとそれに負けず劣らずポンコツのモタモタドラムに乗っているので、マジで訳がわかりません。
ギターによって辛うじてギリギリ聴くに堪えないレベルにまで楽曲が昇華されています。
全人類必聴の一曲。
2.殺戮ノ森
90年代初頭のV系を思わせるようなハードロックナンバーですが、ヘナチョコボーカルががなり立てており、この曲が一番Deshabillzっぽいかも。Deshabillzのアルバムに入ってるネタにもしづらいレベルのアルバム曲をカラオケで歌ったみたいな感じです。
咳き込んで呻いている声が、このCDの中で一番迫真でクオリティが高いです。
新歓の時期の高田馬場のロータリーでゲロ吐いている大学生の声をレコーディングしたんだと思います。
3.朱イ月 蒼イ月
あれ?
3曲目を再生したはずが、1曲目の「Maria's†Despair〜儚キ葬リト優雅ナ想イ出…〜」が始まったぞ?
間違ってCDを最初に戻しちゃったかな?
いや、待て。1曲目と歌詞が違う。
ウソでしょ?
歌詞が違うだけで全く同じ曲だこれ!!!!!!!!!!!
3曲しか入ってないのにそんなことする!?!?!?!?!?!?!?
ミニアルバムとかで曲数稼ぎのためのしょうもないSEを入れるのはポンコツV系ではあるあるですし、一般的なアーティストでもシングルにアレンジバージョンとかカラオケバージョンを入れるのは普通だと思いますが、歌詞を変えただけの全く同じ曲をタイトル変えて別の曲として入れてくるとは思いませんでした。
そんなことしていいんだ。
ちなみに歌詞カードには、
としか書いてません。
マジで何?
なので、曲としての感想は1曲目と全く同じです。
ハモリがなかったり、全体的にアレンジとして控えめぐらいの違いしかありません。
ただ、情報量だけがすごい。
おわりに
冒頭でも述べましたが、このCDを聴くと元気がでます。
あまりにもポンコツな楽曲クオリティは再生するとマジで笑顔になりますし、なにより、
あ、このレベルで世に出してもいいんだ。
って勇気が貰えます。
音楽に限らず、あらゆる創作の分野で世に発表することというのは緊張するものです。
しかしながら、このCDを聴くと、ポンコツクオリティだとしても、最後まで作り上げること、それを世に出すことの大事さ、そしてクリエイティブという世界の裾野の広さ、懐の深さを思い知らされるわけです。
そうすると、少しだけ気分が楽になりました。
このCDに励まされたわけです。
これって、凄いことだと思いませんか?
どういった形であれ、その人のクリエイティブによって一人の人間に影響を与えられるって素晴らしいことだと思います。
というわけで、この作品は最高でした。全然流通してないので手に入れるのが大変ですが、見つけた際はぜひお手に取ってみてください。
この記事を読んで、聴いてみたいなと思っていただければ嬉しいです。
もしそう思っていただいた方がいらっしゃれば、
詐欺とかうまい話に騙されないように気をつけてください。
それでは、さようなら。
【おすすめ楽曲】
Maria's†Despair〜儚キ葬リト優雅ナ想イ出…〜
これを聴き終えたらぜひ3曲目も併せて聴いてみてください。