不安定
念願の天鳳九段を達成したので、次の目標を決めあぐねていた所だった。
取り敢えず打つかということで、以降もぼちぼち鳳南を押していた。九段到達後、一気に降段付近まで追い込まれたが、夏休み中に立ち寄った鹿島神宮効果もあってか、そこから意味分からないくらいツキ出してptは555→2820まで伸びた。
この時は十段に結構なれるだろうなと思ったし、次の現実的な目標は十段到達になった。会社の休憩時間はなめとんの昇段シミュレータに甘々に見積もった自身の安定段位をブチ込みシミュレート実行ボタンを連打しまくってふうん50%はあるんだな、と危うい根拠の自信に満ちていた。
十段になったらどんなツイートしようかな?もしかしたら今日昇段しちゃうかもな??ワンチャン天鳳位もあるかな???あーー早く家に帰って打ちたい!!!
今思えば本当に見積もりが甘いのだが、2800pt持っていた日はそんな感じで脳内お花畑だったと思う
そこから4日の月日が流れた。
2000pt溶けた。
これには流石に目を疑った。まだ曜日が一周もしない間に2000pt溶けている。その区間の記録を見ると33戦打って16ラス。(4ー7ー6ー16)
1/4のゲームで1/2ラスだ。ちなみに安定級位は1.8125であった。
適当に字から切ってリーチってボタンを押して気付いたら真っ黒な画面に点数が表示されてる簡単なゲームが全く別のゲームに様変わりしていた。僕が知らない間にメンテ入ったのかな?
そんな冗談はさておき、長く打っている天鳳民ならこれくらいの短期不調はあり得るものだと理解していると思う。あんま無いけど。
正直少し堪えはしたが、九段というのは自分も含め大体のプレイヤーに取って適正以上の段位であることは間違い無く、流石に今までがツキすぎてたんだろうな、まあこういうこともあるよな、とぐっと悔しさを飲み込んだ。
丁度時を同じくして、リーグ戦があった。
全20半荘で、最初の4半荘で▲123.0も負けてしまい、成績表の最下層に名前が載っている、既に結構追い込まれてる状態。
麻雀としては開局からいきなりドラドラの好配牌を貰うも、なんか気づいたら満貫の親被りを食らっており、その後も何回親被りを食らったか分からない苦しい展開が続くが、一方でバラバラの仕掛けが実ったりリーチも良く打てたりして、最初の3半荘を412の約+20とまずまずの成績で終えた。
そして4半荘目。ここでトップを取れば降級圏脱出もあり得る。個人的には比較的苦しい展開の一日をよくプラスで耐えてきている。最後の半荘も気を抜かず頑張ろう!とポジティブな気持ちに満ち溢れていた。
東1局南家、あんまり覚えてないが、中中4456m33s88pXXX、みたいな役牌とタンヤオとチートイの天秤みたいな配牌が来た。当然1000点和了をする気は無いので、中をスルー。
結局445566m33s88pXXXみたいなタンヤオ一盃口のシャンポンテンパイに育ち、リーチツモにゃして満貫和了。
行ける。
その後はあんまり手が入らず、みんなで親番を躱したり躱されたりしながら34000点くらいの微トップ目で南発を迎えた。この時事件が起きた。
ラス目の上家親が1枚目の1pを両面チー、とても怪しすぎるチーが入った。それまでアガリまくって紅潮していた対面の表情も、まるで食べ物に当たったかような青ざめた表情に一変していた。
(気がする)
チー打字、その後に5p手出しが入り、親の河は字字1⑤みたいな感じ。この4枚から何かを正確に読むのは超能力者でも無い限り不可能だが、自分はそんなに戦えなくも無い手だったので、一旦自分の手を優先して素直に8pを打った瞬間
「ロン」
あーやっちまった。開かれた手は役ドラドラチャンタみたいな手、12000の放銃。
さてこんなものは麻雀やってる限り日常的に起きる事象なので事件ではない。問題はこの後である。トップ目から一気に単独ラス目に転落したため、残り4局(+α)で何とか取り返さないといけない。そしてそのプランをどう立てていくか。
そんなことを考えながらツモ山に手を伸ばし牌を持ってくると、既に対面がポンの発声と晒し行為を完了させていた。
「あ…」
まず断って置きたいのだが、発声も自分含め全員に聞こえており、副露タイミングも適切に行われていた。なのでこの1件に関しては完全に100%自分の過失である。最近の炎上ブームは怖すぎるから、これだけはハッキリ明言させて欲しい。もう一度言う、完全に自分の過失だ。
では何故聞こえていたのにツモっていたのか、よく分からない。覚えてない。
微かに覚えているのは、良い流れで来ていた所からの12000放銃で一瞬でも頭が真っ白になった。そこから周りの音、目の前の風景が全く情報として処理出来なくなる瞬間があり、ただ取り返さないと……ツモって考えないと……って一心で身体が反応してからは、時既に遅かった。
「金村さんは小チョンボ和了り放棄となります。」
この局はアガリ放棄。トータルポイントから▲10(10000点相当)の減算の裁定。
立会人の神原さんの声が冷静に伝えた。神原さんは普段からお世話になっている先輩である。その声はどこか物悲しげだったかのように思える。
心の中で完全に何かが切れた音がした。
結局その半荘は流れるようにラスり、一日トータルで▲30ほどの負け。残り3節で▲150の負債を背負ってしまった。一日単位で見ると大した負けでは無いものの、なんか色々なことが重なりすぎて、対局会場を出る頃にはすっかり無力感に襲われていた。
その後メンブレツイートを危うく仕掛けた、いやしてしまったのだが(削除済)、同期の後藤君から励ましのメッセージを貰った。本当に良い友達を持ったな、と帰りの電車の中で少しウルウルしてしまったのを覚えている。
天鳳もリーグ戦も勝ってる時期というのは確かに存在する。天鳳だって勝ってたのが元に戻っただけだし、リーグ戦も最初の4期の内3期も昇級している。明日も明後日も、勝ったり負けたり、喜んだり悲しんだりしながら、麻雀を続ける限り情緒を揺さぶられる不安定な毎日が続くのだろう。
ただ再びこんな最悪な数日間が訪れたとして、その時まだ麻雀を好きでいられるのだろうか?絶対に安定なんて来ないゲーム性の中で、何をモチベーションに打てば良いんだろう?
その答えは、まだ見つけられていない。