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試合中のキーパーに撃ち込まれた弾丸は、どこから?/南山宏・ちょっと不思議な話
「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2015年4月号、第372回目の内容です。
文=南山宏
パラレルワールド実在説
架空戦記、歴史改変、タイムスリップ、タイムループ……SFではパラレルワールドが、定番の空想アイテムとしてよく使われる。
だが、2014年10月30日、米物理学会の新機関誌〈フィジカル・レビューX〉に発表された急進的な最新量子力学理論によれば、コスモス(大宇宙)にはパラレルワールドが無数に実在する。それだけでなく、距離が近い世界ほど相互作用が働いているという。
発表者はグリフィス量子力学センターのハワード・ワイズマン教授とマイケル・ホール博士に、カリフォルニア大物理学部のダーク=アンドレ・デッカート博士。
彼らの主張によると、量子理論は顕微鏡レベルのミクロ宇宙に起こる現象の説明に必要な理論で、あらゆる問題に適用可能である。
だが、量子世界は手がつけられないほど奥行きが深くて探求が難かしく、因果律に反するように見える薄気味悪い諸現象を起こす。
著名な米ノーベル賞物理学者リチャード・ファインマン博士が、半世紀前にこう嘆いたように――
「私の思うに、量子力学を真に理解できる人間など、誰ひとりいないといってもおかしくあるまい」
ワイズマン教授たちは、この最新理論を以下のように要約する。
「われわれが経験する世界は、途方もなく多数のパラレルワールドのひとつにすぎない。最寄りの世界はわれわれの世界とほとんどそっくりだが、距離が大きくなるほど異なる世界ばかりになる。
こうした世界はすべて等しくリアルであり、時間的に継続して存在している。また、明確に定義された固有の事象を保有している。
あらゆる量子現象は〝隣り合わせた〟(すなわち、たがいに相似的な)世界間に働く普遍的反発力から生起する。この反発力は、世界同士の相似性をより強く減殺(げんさい)するように働く傾向がある――」
パラレルワールド同士間にそんな相互作用が存在するなら、人がある世界から別の世界に転生したというごくまれに報告されるケースも、ひょっとしたらこの最新理論で説明がつくかもしれない。
ガソリンがぶ飲み男
英ノースヨークシャー州東クリーヴランドのブライアン・テイラー氏(46歳)は、いつもガソリンを飲まずにはいられない中毒者。
たとえば自宅のあるクリーヴランドやレッドカー一帯のコンビニ併設の給油所にこっそり忍び込んでは、無鉛ガソリンをがぶ飲みして、ほろ酔い気分で踊り出す。
この10年間、ガソリンスタンドの給油スタッフや顧客たちを怖がらせ、ときには燃料パイプを切断したり、それを止めようとする人々を脅し上げたりしてきた。
当然、警察には何度も逮捕され、今では自宅付近のほとんどすべてのガソリンスタンドから閉め出されて、立ち入り禁止状態だ。
そしてこの次同じような不当行為を犯したら、今度こそ刑務所行きになるぞと警告されている。
弾丸シュート
ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエヴォ郊外で、2013年6月中旬、アマチュアサッカー試合の最中、ゴールキーパーのドスコ・クルタリッツァさん(51歳)は、ふと後頭部に痛みを覚えた。
だが、ドスコはついさっきシュートを防いだときにゴールポストに頭をぶつけたせいだろうと、さして気にもとめずにそのまま試合終了まで約90分間、相手チームの得点を1点だけに封じて、無事にゴールを守りきった。
ところが、その頃からドスコは片方の腕が強張ってよく使えなくなり、舌がもつれてろれつが回らなくなってきた。
驚いたチームメートが近くの病院に緊急搬送し、医師たちが頭痛を訴えるドスコの頭をエックス線検査にかけてびっくり仰天した。
なんと小火器用の9ミリ弾が、後頭部に食い込んでいたのだ!
ドスコはただちに神経外科手術で銃弾を摘出された。身体の悪い症状は消え、脳の働きにも異常がなくてすんだのは幸いだった。
しかし、試合中のゴールキーパーを直撃した弾丸の出所は?
警察がサッカー場周辺をローラー捜査した結果、当日の当時刻頃に挙げられていた野外結婚式で、浮かれ気分でピストルを空中に乱射した42歳の男が逮捕された。
男が撃った13発中の1発が、不運にもドスコに命中したのだ。
麻薬王の遺産
歴史上もっとも裕福な犯罪者といわれたコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルが、1993年に警察部隊に急襲され射殺されたあと、遺産の一部として広大な牧場の一郭に動物園が残されていた。
動物たちの大半はよそへ移されたが、雌雄4頭のカバだけは貰い手がなく、牧場内に放置された。
以後22年、カバは大繁殖して、今では約60頭にまで増えた。彼らは付近一帯を徘徊して、近隣の牧場や農場に侵入し、農作物を食い荒らすなど大被害を与えている。
野生化したカバは凶暴で、国内のどこの動物園も引き受け手がなく、さりとて全頭を原産地アフリカに返すには莫大な費用がいる。
とくに直接被害の大きい農業経営者の間では、カバの肉はポークに似て美味だから、みんなバーベキューにしてしまえ、という乱暴な退治方法まで提案されている。
利発な言い訳
去年2月12日の寒い朝、ノルウエーはドッカのトビアス・クリストフェルセン(仮名、10歳)坊やは、親に無断で1歳半の妹を自家用車の助手席に乗せ、64キロ離れたヴァルドレスに住んでいる祖父母の家に向かって出発した。
だが、途中でハンドルを切り損ねて、車を雪に埋もれた側溝に突っ込んで動けなくなった。
坊やは救出に駆けつけてくれた人に、自分は子供ではなく"小人"で、うっかり運転免許証を自宅に置き忘れてきたと言い訳した。
1週間かそこらあと、トビアス坊やは家族といっしょに、近くの親戚の家を訪問した。
両親が目を離した隙に、坊やは親戚の自家用車に乗り込むと、また祖父母の家めざして出発した。
今度は運転ミスはしなかったものの、30キロほど行ったところで警官に見つかってしまった。
前回同様に、自分は"小人"だという言い訳は通らなかった。
(月刊ムー2015年4月号掲載)
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