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不死になるタトゥーの話など/南山宏・ちょっと不思議な話
「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2013年10月号、第354回目の内容です。
文=南山宏
ワイルドスピード
フランスはポンドメスのフランク・ルセルフさん(36歳)は今年2月13日、愛車のルノーラグナⅢで地元のスーパーに出かけた。
ところが、ピカルディで分離帯付き高速道路A16号線に入ったとたん、障害者用運転補助装置の速度計の目盛りが時速96キロで引っかかったきり動かなくなった。
ブレーキをかけようとするたびに、車はスピードを落とすどころかどんどん加速して、ついには時速200キロの最高速に達した。
周りの車がクラクションをけたたましく鳴らし、前方の車は突進するルノーを慌ててかわした。
フランクはどうにか救急サービスに助けを求めた。パトカーが数台追いすがったが、このまま燃料切れになるまで走るしかないとわかると、200キロの猛スピードで疾走するフランクの車をとり囲むように、護送隊形をとった。
フランクのルノーと護送パトカー隊は、フランスの沿岸高速幹線道路を激走しながら、カレーを通り、ダンケルクを過ぎ、とうとうベルギーとの国境線を越えた。
途中3か所の料金所は、フランクの車を通すためにやむなく遮断機を上げなければならなかった。
1時間にも及んだこの手に汗握るリアル版『ワイルドスピード』は、ベルギーのアルフェリンゲム市内に入ってまもなく、ようやくガス欠になり、道からそれて排水溝に突っ込んだところで終わった。
「これまでの人生が走馬灯のように頭の中を駆け巡って、止めたいのに止まらなかった」
フランクさんは「ルクーリエ・ピカール」紙の記者に語った。
「怖くて怖くて、麻痺の発作が2度も起きかけたよ」
じつはフランクの車は数年前も同じような故障を起こし、ルノー社が修理した前歴があるという。
フランク側の弁護士は、「人命を無用な危険に曝(さら)したルノー社に対して、損害賠償請求に踏み切るつもりだ」とその後公表した。
不死身のタトゥー
”不死身になるタトゥー”を入れたと思い込んだ少年たちの刃傷事件が連続した昨年10月、タイはカラシン市の警察が、自称”魔法使い”の刺青師(タトゥーイスト)タナワット・チャレンクル(仮名)を緊急逮捕した。
警察の記者発表では、少年たちはタトゥーの”効き目”が本当にあるのか試そうと、ナイフや棒をふるって喧嘩していたという。
「怪我人は出たのか?」という記者の質問に、警察の報道担当はニヤリとして、「ひとり残らずね」。
ハイエナジー
南アフリカ共和国ヨハネスブルクのさる動物園が、2011年11月2日、不意の停電に見舞われたとき、2匹のハイエナがそれを知ってか知らずにか、電流の途絶えた電気柵を囓(ちぎ)り破って脱走した。
指食い魚
去年の9月11日、漁師のノーラン・キャルヴィンさんが、米アイダホ州のプリースト湖で釣ったマスのはらわたを取ろうとすると、中から人間の指が出てきた。
ノーランは急いでそれを氷漬けにして、近くのボナー郡保安官事務所に届けでた。指は比較的新しく、なんとか指紋が採れた。
それが手がかりとなって2週間後、指の持ち主が、北隣りのワシントン州コルバートに住むハーンズ・ガラッシー青年と判明した。
ハーンズは7月4日に同じプリースト湖で、流行のウェイクボード遊びの最中、誤って牽引ワイヤーに左手を巻きとられ、親指以外の4本を失う事故に遭っていた。
事故の現場は、マスが釣られた場所から10キロ前後の距離だったが、ほかの3本の指の行方は、おそらく神のみぞ知るだろう。
量子霊魂理論(クォンタム・ソウル・セオリー)
「意識の存在も霊魂の実在も、量子効果の働きで証明できる!」
英オクスフォード大の数理物理学者ロジャー・ペンローズ卿と米アリゾナ大の臨床心理学者ステュアート・ハメロフ博士は、長年の共同研究の成果に自信を深める。
脳は1000~2000億個の神経細胞(ニューロン)で構成される”生物学的量子コンピューター”で、細胞同士の神経突起の興奮や連接部(シナプス)のスイッチ入り切りによって計算する情報処理ネットワークという。
いちばん重要なのが脳細胞中のマイクロチューブル(微小管)というナノサイズの管状構造物で、その内部に”量子重力効果(クォンタム・グラヴィティ・エフェクト)”なる現象が生む量子状態から”意識”がつくりだされるという理屈だ。
両学者の説明によれば、人間が死ぬとマイクロチューブルの量子状態は消滅するが、量子情報は破壊されずに宇宙へと還元される。
まれにマイクロチューブルの量子状態が何らかの原因で回復すると、量子情報が宇宙から戻される。これが”臨死体験”・だという。
量子宇宙論上、真空は何もない空間ではなく、無限量のエネルギーと物質を含む無限小の時空に満たされた”力学的真空(ダイナミック・ヴァキューム)”で、量子情報もそこに永遠に保存される。
「この量子情報が意識とか霊魂と呼ばれ、肉体が滅んでも存続する。この概念は、仏教やヒンズー教が意識を宇宙の属性、というより全存在と信じるのと同じで、西洋哲学でいうイデア論とも似ている」
近年、科学界でとみに注目される量子霊魂理論だが、むろん「空理空論すぎる」との反論も多い。
しかし一方では、動物の嗅覚、植物の光合成、渡り鳥の飛行など、さまざまの重要な生物学的プロセスを、量子効果の働きによるものと量子物理学的に立証する研究が相次いでいるのも、事実なのだ。
奇跡のクローバー
英ノーサンバランド州クラムリントン在住のレイモンド・カリー君(20歳)は、仕事に出かける途中、車が横転して放りだされた。
体は斜面を転がるように落ち、低地を囲むフェンスに激突して、長さ1.8メートルの木の杭に、胸の真ん中を串刺しにされた。
レイモンドは杭に刺された状態のまま病院に空輸されたが、幸運にもあらゆる急所を外していたので、命には別状なくてすんだ。
「インディペンデント」紙2010年6月25日付けによれば、それも道理、串刺しの青年を運ぶ途中で、救急救命士たちは気がついたのだ――レイモンドの背中には、幸運の4つ葉のクローバが1枚、ぺたりと張りついていた。
(月刊ムー2013年10月号掲載)
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