アラモの立入禁止区域で目撃したUFOと追跡車の恐怖/保江邦夫・エリア51探検記(3)
湯川秀樹博士の最後の弟子にして武道家、そして伯家神道の祝之神事(はふりのしんじ)を授かったという異能の物理学者・保江邦夫氏は、もうひとつ「UFO研究家」の顔を持つ。それも、なんと1990年代にアメリカでUFO調査を行っていたというのだ。
そこで、かつて材質に関する研究報告の専門誌「バウンダリー」(コンパス社)に連載されていた「UFO調査」を、ここに復活させよう。20余年以上前、「竹久おさむ」名で綴られたレポートには、何が記されていたのか?
文=保江邦夫
前回までのあらすじ
1994年4月アリゾナ州セドナで開かれた量子重力と量子宇宙論に関する国際会議に助手のマリーと出席した私は、そこで知り合ったカナダ人のスコットと共に、ペンローズ博士やジョセフソン博士に誘われるまま、セドナ・ヴォルテックスと呼ばれるアメリカインディアンの聖地を訪れました。ガイドの話では、セドナからカリフォルニアに帰る途中にも、ブルー・ダイヤモンド・ヴォルテックスというものがあるとのこと。是非寄るようにと勧められた私は、スコットとマリーを誘って、ネバダ州ラスベガスの近くにあるブルー・ダイヤモンドの村に行き、そこで保安官の奥さんがそれとなく教えてくれた山向こうの異常な警備体制がブルー・ダイヤモンド・ヴォルテックスがらみかと誤解してしまったのです。
そして、偶然に見つけた切り立った谷底づたいに入り込んでいった私達の目に留まったものは、遥か向こうの山腹に開けられた正体不明の巨大な2つのトンネルでした。水も食料も持たずに砂漠の炎天下に灼かれていた私達は、装備を整えて出直すために一旦車に引き返したのですが、そこで見張っていた保安官らしき人物に追い払われるようにして、村を後にせざるを得ませんでした。もちろんあまり気分のいいものではありません。そこで、少しでも食い下がってみようと思った私は、スコットやマリーを連れて、保安官が最後に吐き捨てた台詞にあったアラモという村に行くことにしたのです。
アラモで聞いた秘密
ラスベガスから東北に向かうフリーウェイ15号線の両側には、NELIS(ネリス)空軍基地が広がり、エプロンに戦闘機や攻撃機が並んでいるのが大っぴらに見えています。これなら、何も山の中にある施設だからといって、格別に侵入者を追い払ったりするまでもないのにと、3人とも訝しげに基地の様子を眺めながら車をフリーウェイの流れに委ねました。
地図を見ていたスコットの指示で、私はウインカーを出してフリーウェイから降り、今度は真っ直ぐに北に延びるハイウェイ93号線に乗り換えました。夕日が左に連なる山々のシルエットをどす黒く印象づける中、私達は砂漠の中を延々と続くガラ空きの田舎道を猛スピードで突き進み、何とか夕明かりが消える前にアラモの村にたどり着くことができたのです。
炎天下を水なしで4時間近く山歩きした疲れは既に癒され、むしろ死ぬほどの空腹を感じていた私達は、すぐにでもどこか食事のできる店に入りたかったのですが、村とすら呼ぶことに抵抗感のあるアラモの閑散とした佇まいを見た途端、まずは泊まる所を確保するのが先だと思いました。
ちょうど2人連れの少年が歩いていたので、この村にモーテルがあるかどうか聞いてみたところ、ハイウェイの向こうとこちらに1軒ずつあるとのこと。「ハイウェイ?」そんなものが一体どこにあるんだ、とばかりの訝しげな私達の顔を見た少年は、さっきまで延々と走り続けてきた田舎道を指差したのです。「オーケイ、サンクス」納得するより他にない私達は、再び車の1台も走っていない”ハイウェイ”へと、戻っていくことにしました。
1軒目のモーテルは広い駐車場にトラックばかりが止めてあり、明らかに常連のトラッカーのための宿という雰囲気でした。ますますくじけそうになった私達が、今にも消えそうな灯火のごとき最後の望みを抱きながら村はずれに差し掛かったとき、警察やマフィアから追われる羽目になった主人公が身を隠す映画のシーンに必ず出てくるような、田舎の古いモーテルが見えたのです。ブロックを積み上げただけのL字型の平屋のモーテルの前には全く車がなく、客は1人としていないようでした。
「ノー、アザー、オプション!」
そう叫んだスコットは、私とマリーを追い立てるように事務所らしき部屋に入っていきました。中には小さなカウンターがあるだけで、スコットは何度も奧に向かって人を呼んだのですが、全く反応なし。3人互いに顔を見合わせて、それでももうここに泊まるしかないんだという信念の表情を再確認したそのとき、背後の入り口が不意に開いたかと思うと、小太りの老人が無言で入ってきて、そのまま奧に行こうとしたのです。
「ヘイ、イクスキューズアス!」
スコットは慌てて老人の背中に声を掛けました。無表情で振り返った男は、黙って私達を眺めていましたが、スコットの「部屋はあるかい?」という言葉に、やっと重い口を開いたのです。
「今夜は空いているが、幾ついるんだ?」
これで、とにかく休むことができる。ホッとした私は、「これで3つ欲しいんだが」と答え、クレジットカードを差し出しました。老人がカードを処理し、私が宿帳に記入している間、事務所の壁に貼ってあった付近の地図を眺めていたスコットが、不意に声を上げました。
「ワーオ、この村の西の山奥には高放射能レベルで立入禁止のマークがでかでかと記されているじゃないか。いったい何があるんだ?」
3つの部屋のキーを渡しながら老人は、やはり無表情のまま答えたのです。
「政府が核爆弾の実験をやっているから、一般人は入れない地区になっているだけだ」
アメリカが地下核実験を中止していることを知っていたスコットは、「それは変だね 、もう政府はだいぶ前から核実験をやっていないはずなんだが。立入禁止にする理由はないのに」と食い下がりました。
私達の顔をチラリと見やった男は、初めて表情にわずかの躊躇の色を見せながら、小さな声でこう言ったのです。
「あの山の向こうで政府が何をやっているかなんて、詮索しない方がいい。そりゃあ、この村から毎日電気関係の仕事でそこに通っているダチもいるし、おいらだって本当は誰かにぶちまけたくてウズウズしているんだがね。だが、そんなことをしたら最後さ。何せ、おいらを含めて村の者は、もし山向こうのことを口外したら裁判で弁護士を付ける権利を放棄するって契約書にサインさせられているんだ」
「じゃあ、あんたはあそこに何があるかは知っているんだね?」という私の質問には答えず、男はカウンターの上のしわくちゃになった注意書きをボールペンでコツコツ叩きながら、「さあね。まあ早めに飯でも喰って、明日はさっさと出発することだね。こんなとこに長居は無用だろう」と再び無表情に戻って言い放ったのです。
3人が注意書きを覗き込むと、そこには古いタイプライターで打たれた警告がありました。
「このモーテル内の通話は全て記録されていることをご了承下さい」
読み終わったスコットは、声を出さずに「ワーオ!」と叫び、わざとらしい大声で私とマリーに呼びかけました。
「確かに、腹ペコで死にそうだ。うまいものでも食いに行くとするか」
深夜の飛行物体と”基地の連中”
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