ダークマターと恐竜絶滅の謎 最新宇宙論が語る地球大激変の真実/水野寛之
地球に生命が誕生してから約38億年、数多くの生物種が出現したが、短期間のうちに大多数の種が姿を消す「大量絶滅」が何度も発生している。
これまでは、天体の衝突による地球環境の変化が大量絶滅を引き起こしたと考えられてきたが、最新の研究で、さらに宇宙規模の原因があったとする新たな仮説が登場した!
文=水野寛之 イラストレーション=久保田晃司
恐竜はなぜ突然姿を消したのか?
スティーブン・スピルバーグ監督の映画『ジュラシック・パーク』は、南海の孤島に絶滅したはずの恐竜を甦らせたことから始まるパニックムービーである。1993年制作の映画だが、CGで描かれた恐竜たちは、今観ても
本当に生きているように感じられる出来映えだ。
作品は世界中で大ヒットし、続編も作られている。大ヒットの理由は、スピルバーグの演出やストーリーの面白さがあるからだが、それだけでなく、絶滅し、姿を消してしまった巨大生物=恐竜という存在自体が非常に興味深いものだからだろう。そして、われわれは思うのだ。恐竜はなぜ絶滅してしまったのだろう──と。
恐竜は、約2億5000万年前の三畳紀に登場し、ジュラ紀、白亜紀にかけて進化を遂げ、大型化した生物である。彼らは地上をわが物顔で闊歩し、食物連鎖の頂点に君臨していた。
ところが、今から約6550万年前の白亜紀末(約6600万年前とする意見もある)、彼らは突然姿を消してしまう。この恐竜の絶滅は、地球史上の一大ミステリーといっていいだろう。また同時期には、他の陸上生物やアンモナイトに代表される海中生物など、恐竜以外の生物も大量に絶滅している。
地球の年輪ともいえる地層を調べると、この恐竜の絶滅以前にも、ある時期を境にして、それまで繁栄していた生物(の化石)が消え去り、別の生物(の化石)が登場していたことがわかっている。地質学的調査や放射線による年代測定などによって、それらの大まかな発生時期もほぼ明らかになっているのだ。
つまり、それまで栄えていた生物が短期間で絶滅し、新しい生物が取って代わるというイベント(事件)が、地球の歴史の中で何度も起きているのである。
生物の大量絶滅に関する新たな仮説とは?
なぜ短期間に大量の生物がいっせいに絶滅してしまうのか?
この大きな謎に包まれたイベントを、地質学では「大量絶滅」(あるいは「大絶滅」「生物の大量絶滅」)と呼んでおり、その原因や絶滅に至るプロセスを明らかにしようと、多くの科学者が調査・研究を続けている。
そんな中、2020年12月に興味深い論文が公開された。ニューヨーク大学の生物学・環境学の教授で、地質学者のマイケル・R・ランピーノ博士らの研究チームによる論文「A 27.5-My underlying periodicity detected in extinction episodes of non-marine tetrapods( 海生生物ではない四肢生物の絶滅エピソードに見られる2750万年の周期性)」である。
ランピーノ博士は、さまざまなタイムスケールにおける気候変動や、大量絶滅と関連する火山噴火の地球環境への影響、大規模な火山活動、小惑星や彗星の地球衝突などを中心に研究している。
今回発表された論文の中で、博士は陸域で発生した陸生生物の大量絶滅に着目し、過去3億年間の記録を調査した。以前から、海洋生物の大量絶滅に関しては、その発生時期に周期的な法則があるということは知られていたが、今回の研究で、少なくとも10 回は発生していた陸上での大量絶滅でも、約2750万年という周期があることが見つかったというのだ。
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