青山霊園の消えた「!」標識/吉田悠軌・オカルト探偵
青山霊園にまつわる都市伝説のなかでも、謎の「!」標識の話は有名なもののひとつ。ところが近年、この存在をデマだとする説が巷に広がっている。かつて自らの目で標識を確認していたオカルト探偵は、記憶をたどりつつ伝説の真相に迫った‼
文・写真=吉田悠軌 #オカルト探偵
幻と化した「!」標識
2021年もまた花見をすることなく、すっかり桜が散ってしまった。満開の桜の下での酒宴など、もはや過去の思い出として存在するのみだ。
ためしに記憶をひもといてみると……私も昔は青山霊園にて、よく花見をしていたものだ。墓と墓の間をぬって、ビニールシートと酔っ払い、出店までもが並ぶ光景は、桜の季節の風物詩だったのだ。
そして2010年、青山霊園での花見が完全禁止となり、途方に暮れたことも鮮明に覚えている。
そういえば、あの墓地にあった「『!』マーク道路標識」が撤去されたのも、ちょうどそのタイミングだったのではないか。
「『!』マークの道路標識は『幽霊注意』を示している」
これは有名な都市伝説だ。そしてこの噂が広まる一因になった噂(つまり噂の噂)が、以下のものである。
「青山霊園の敷地内に、『!』マークの道路標識がある」
青山霊園は桜だけでなく怪談の名所でもある。なにしろ日本の公営墓地の草分けであり、タクシー怪談発祥の地とされるなど、心霊スポットとしての歴史も長い。そんな青山霊園の、しかも公道ですらない敷地内に「!」マークの標識が立てられている。となれば幽霊出没を警告するために違いない……という話の流れだ。
ただ、ここ最近は「青山霊園の『!』標識は存在しない」とする見解が主流を占めているようだ。
多くの有名YouTuberたちが青山霊園へ突撃しているが、そこで標識を発見した動画は皆無。
珍スポット業界の大手サイト『東京別視点ガイド』のレポートでも、「【結論】青山霊園に“!マークの標識”は無い」と断定。
怪談作家の川奈まり子さんも、2014年『しらべえ』記事にて、こう記している。
「これは眉唾。私は青山霊園の近くに6年前から住んでいて、何度となく霊園内をくまなく散策してきたが、そんな標識は一度も見たことがない」
有名人がこぞって否定しているため、世間一般でも「青山霊園の『!』標識=デマ」という認識が広まっているようだ。
しかし、私はこうした大勢に逆らい、一石を投じておきたい。
青山霊園に「!」マークの標識はあった。
根拠は「私自身がこの目で何度も見ているから」。
青山霊園は、笄(こうがい)川がつくった急峻な谷戸地形の、高台上にある。崖下を南北にゆくのが外苑西通りで、霊園を東西につっきる都道413号の青山橋(青山陸橋)と立体交差している。
そして青山橋および都道413号(崖上)と高架下(崖下)をつなぐ「北坂」という坂道に、かつて確かに「!」の標識があった。
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