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黒い眼窩のドクロ仮面/あなたのミステリー体験
座敷童子は、主に東北地方に伝わる、いわずと知れたいたずら者の精霊だ。
いたずらが過ぎて邪険にされることもあるが、幸運をもたらす「小さき者」である。
イラストレーション=不二本蒼生
群馬の旅館の座敷童子
◆Tさん(35歳)/栃木県
これは友人Sの体験です。
過日、彼が仕事の出張で群馬に出かけ、ある小さな旅館に泊まったときのことです。
もともと霊感が強かった彼は、案内された部屋に入るなり、何ともいえないイヤな雰囲気を感じとりました。体の熱がスーッと奪われるような感じだったそうです。
夕食と入浴をすませた彼は、こういうときには酒でも飲んでさっさと眠ってしまうのが一番と思い、旅館内の自販機で缶ビールを買い、部屋に戻りました。
そしてその缶ビールを一気に飲み干すと、すでに敷かれていた布団に潜りこんだそうです。
その途端、何やら妙な気配がジンワリと部屋の中に満ちてきました。しかも、どういうわけかいきなり体がズンッと鉛のように重くなったといいます。
次の瞬間です。突然、枕元の襖がガタガタガタ……と、音を立てはじめました。
びっくりして頭だけ動かして襖のほうを見ると――音はピタリと止みました。ところが、今のは何だったのだろうと思いながら首を戻して目を閉じると、また襖がガタガタガタと音を立てます。
そのくせ襖のほうに目を向けると、やはりピタリと音が止まります。もちろん地震が発生したわけでもなく、風のせいでもありません。
そんなことを何度か繰りかえしているうちに、やがて襖の鳴る音は止みました。
わけがわからないながら安心した彼は目を閉じました。
ところがそのうち――今度はパタパタパタと畳の上を走りまわるような音が聞こえはじめたのです。
ーーえっ!?
首をめぐらせて音のするほうを見まわしましたが、何も見えません。
それは小さな子供が裸足で畳の上を走っているような、軽い感じの足音だったそうです。しかし、何度、その音のするほうを見ても、子供の姿などどこにも見当たりません。
そのうち、足音がだんだんと自分が横になっている布団のほうに近づいてきているような気がしてきました。しかも、どうやら足音の主はひとりではなく、複数になったように思えます。
自分のまわりでパタパタパタ、パタパタパタと動きまわる無数の足音。うるさくてたまりません。
そんなときでした。いきなり彼の耳元で、
「クククッ……クククッ……」
という、噛みころしたような子供の笑い声が聞こえました。
さすがのSも、これには堪こらえきれなかったそうです。ガバッと身を起こすと、部屋の中を見まわしながら、大声で、「頼むから、いいかげんにあっちに行ってくれーっ! !」と、怒鳴ったそうです。
その途端、ピタリと足音が止みました。
しばらく身を起こしたまま周囲を見まわし、気配を窺うかがいましたが、あたりはシーンと静まりかえり、何の物音も気配も感じられません。彼はようやく安心して、翌朝までグッスリ眠ったそうです。
「あれって、もしかしたら座敷童子の仕業だったのかも……」
と、Sは真剣な顔で私にいっていました。
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瀕死の私を救うもの
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