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シャロン・テート殺人事件と悪魔が遺した「9」の暗合/大塚寅彦
1960年代アメリカを震撼させた無気味な殺人事件。
その背景には「9」という数字をめぐる奇妙な符号と、ちりばめられた「暗合」が隠されていた。アメリカ文化が抱えた「光と闇」を考察する――。
文=大塚寅彦
カルトが引きおこした凄惨な女優殺害事件
2019年公開の映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は1969年にハリウッド女優シャロン・テートが、カルト集団チャールズ・マンソンの「ファミリー」に殺害された事件を背景に、ハリウッド映画界を描いた作品だ。クエンティン・タランティーノが監督し、レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピットらが出演している。
これまでにもたびたび映画化されてきた事件ではあるが、改めて探れば探るほどに「暗合」(意味ありげな偶然の一致)ともいえることがらがいろいろ浮きあがってくる事件であり、60年代、ヒッピー文化の負の側面の象徴ともされ、近年ますます「神話化」された感もある。
まず事件の概略をおさらいしておくと、2017年秋に獄中死したチャールズ・マンソンという教祖めいた男のもとに集まった「ファミリー」と称する男女が、1969年の8月9日に、映画監督ロマン・ポランスキーの邸宅に侵入し、身重だった妻で女優のシャロン・テートをめった刺しにして殺害、たまたまホームパーティで訪問していた3人と通りがかりで巻き込まれたひとりも殺害した、という事件だ。
ここで筆者の長年の誤解を書いておくと、この事件はてっきりポランスキーが事件直前に監督した『ローズマリーの赤ちゃん』という有名なオカルト映画に触発された「悪魔教」のカルト集団によるものだと思っていたことだ。
しかし、マンソンは「人違い」でテート事件を起こしており、映画はまったく動機になかった。前にその邸宅に住んでいた音楽プロデューサーのテリー・メルチャーを狙っていたのだ。メルチャーは歌手ドリス・ディの息子だが、ドリス・ディも事件に影を落とすビートルズの曲「ディグ・イット」の歌詞に登場するなど無縁ではないアーティストだ。
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「ファミリー」を率いて異常な集団生活を行なっていたカルト指導者、チャールズ・マンソン。数々の事件により有罪となり、2017年服役中に死亡している。
事件に浮かびあがる「暗合」の数々
無関係にもかかわらず『ローズマリーの赤ちゃん』を観なおすとさまざまな暗合があって慄然とする。
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