『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者/うしろに立つ少女』 少年探偵が暴く闇は呪いか? 哀しみか?/卯月鮎・ゲームー案内
書評家・ゲームコラムニストの卯月鮎がオカルト、超常現象、不思議が詰まった話題のゲームをムー的に紹介。このゲーム、ほかとはひと味違う!
文=卯月鮎 #ゲームー
『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者/うしろに立つ少女』
フルボイスで待望のリメイク!
1980年代後半にファミコンのディスクシステムで発売された探偵アドベンチャーの名作が待望のリメイク。絵柄が一新され、フルボイスとなって5月14日に登場しました。
1作目の『消えた後継者』(1988年)は資産家一族にまつわる死人甦り伝説、2作目の『うしろに立つ少女』(1989年)は女子生徒の死とつながる学校の噂話が事件のカギ。ファミコンでありながら、おどろおどろしいホラーテイストが衝撃的で世のファミっ子たちを震え上がらせました。
今回はその『ファミコン探偵倶楽部』から連想されるムー的キーワード3つを挙げたいと思います。
墓からの甦り
戦国時代の領主だった綾城家での事件を調査する『消えた後継者』。
『消えた後継者』は、「死者が甦り、綾城家に仇なすものを殺す」という戦国時代からの伝説が残る明神村が舞台です。
こうした死者の甦りは、死亡判定が不確実だった時代には、実はそれほど珍しい例ではなかったようです。埋葬後に再び棺を掘り起こしたところ、棺の裏に爪でひっかいたような跡があった……という報告は世界中にあり、吸血鬼伝説のルーツになったとも言われています。
英語には「Premature Burial」(早すぎる埋葬)という概念が存在し、アメリカの作家エドガー・アラン・ポーは、さまざまな事例を挙げながら生きたまま埋葬されることを恐れる男を主人公にした同名の短編を書きました。
また、19世紀ベルギーの画家アントワーヌ・ヴィールツは、「早すぎた埋葬」(ヴィールツ美術館蔵)という絵で、棺の中で必死にもがいて腕を突き出している人物を描いています。死人の甦りは単なる絵空事ではなかったようです。
学校の怖い話
『うしろに立つ少女』で主人公のパートナーとなる女子高生・橘あゆみ。
『うしろに立つ少女』では、「ひとりで教室にいると、うしろから誰かが呼ぶ声がする。振り返るとそこに、血染めの少女が立っている……」という噂が私立丑美津高校に広まっています。
学校の怖い話といえば、その代表例は「トイレの花子さん」でしょう。「トイレの花子さん」のルーツとされている「三番目の花子さん」という怪談は、古いものでは昭和23年頃の岩手県の話が、児童文学作家・松谷みよ子さんの『現代民話考7 学校ほか』に収集されています。
小学校の体育館裏にある便所。奥から三番目の個室に入ると、「三番目の花子さん」と呼びかけられ、穴から白い大きな手がヌーッと出てくる……というもの。昔は自分が花子さんだったようです。
少年探偵
『ファミコン探偵倶楽部』でプレイヤーの分身となる主人公の少年探偵。
『ファミコン探偵倶楽部』シリーズ第1・2作の主人公は、私立探偵・空木俊介の助手を務める少年。いわゆる「少年探偵」です。
少年探偵というと、『シャーロック・ホームズ』でホームズに協力する少年グループ「ベイカー街遊撃隊」が思い浮かびます。
それより以前の日本となると、探偵よりはスパイに近いですが、鎌倉時代の『平家物語』に「禿(かぶろ)」という、平清盛が使っていた子どもたちが登場しています。
「十四、五六の童を三百人集めて、髪を禿(おかっぱ)に切り、赤い直垂を着せて召し使った」。
彼らは京の市中を行き来し、平家の悪口を言う者があれば、その者を捕らえて六波羅へ連れていったといいます。人数が集めやすく、子どもだから機動力もある。現在の天才的な少年探偵の姿ではないものの、禿のなかには調査能力に優れた少年がいたかもしれません。
ここから先は
ウェブマガジン ムーCLUB
ムー本誌の特集記事のほか、ここだけの特別企画やインタビュー記事、占いなどを限定公開。オカルト業界の最奥部で活動する執筆陣によるコラムマガジ…
ネットの海からあなたの端末へ「ムー」をお届け。フォローやマガジン購読、サポートで、より深い”ムー民”体験を!