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人間にも磁気コンパスがあるんじゃないか…という話など/南山宏・ちょっと不思議な話

「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2016年11月号、第391回目の内容です。

文=南山宏

ハウリング

 ポーランドはポドラシエの牧場主が、迷い子の可愛い仔犬を拾ってくると、大喜びで育て始めた。
 ズビグニェフ・ピエチュスキ氏(50歳)としては、ゆくゆくは牧場の羊の群れを狼から護る、忠実な番犬にするつもりだったのだ。
 ところが、仔犬は成長するにつれ、普通の犬らしくないことに、昼間はおとなしく眠りこけているのに、夜になるとひと晩中、遠吠え(ハウリング)をするようになった。
「私はとんでもない間違いをしていた。犬ではなく狼だったんだ」
 ピエチュスキ氏はいずれ折りをみて、この野性的な〝ワン君〟を森の自然に帰すつもりでいる。

たまたま玉タマゴ

 オンラインオークションサイト・イーベイで、珍しい完全球形のタマゴが480ポンド(約6万4000円)で競り落とされた。
 英エセックス州ラチントンのキム・ブロートンさん(44歳)が、庭で放し飼いにしているメンドリの1羽が、昨年2月17日に生み落としたもので、サイト上では〝ピンポン玉〟の愛称がつけられた。
 2015年2月17日は、たまたま復活祭に連動して年ごとに日が変わる、いわゆる移動祝日の〝パンケーキの日〟にあたっていた。
 タマゴはもちろん、そのパンケーキを作るときには欠かせない、主要材料のひとつである。

体内磁気コンパス

 鳥類や昆虫類や一部の哺乳類には、地球の磁場を感知して、渡りや移動の方向を定める特異能力があることがすでに知られている。
 だが、本年6月27日付「サイエンスアラート・ドットコム」によれば、米カリフォルニア工科大(カルテック)の地球物理学者ジョー・カーシュヴィンク博士は、その磁気感知能力つまり〝磁気コンパス〟が、われわれ人間の体内にもあることを、初めて立証できたと発表した。
 何よりすばらしいのは、人間にも磁気コンパスがあることが、いつでも立証可能なことだという。
 従来の実験では、人間にも磁気コンパスがありそう、というところまでで終わっていたからだ。
 磁気感知能力の生物学的プロセスに関しては、有力な仮説がこれまで2通り提起されている。
 一方の学説は、地球の磁場がクリプトクロム(青色光受容体〈レセプター〉タンパク質)と呼ばれる体内物質に、量子反応を引き起こすとする。
 もう一方の学説は、体内には磁鉄鉱(マグネタイト)を含んだ受容体細胞があり、それが地球磁場に反応して自分の方向を決めるのだと想定する。
 とはいえ、いずれの仮説も、磁気コンパスの存在を完全に証明する定説にまでは至っていない。
 従来の実験で問題だったのは、同じプロセスが進行しても同じ結果を再現できなかったことで、これはおそらく外部からの電磁干渉が結果に影響するためとされる。
 そのような不確実性を排除する目的で、カーシュヴィンクはファラデーケージ(外部の電場を遮断する導体空間)をカルテックの地下2階に設置し、電磁的な背景ノイズを閉め出して実験を試みた。
 真っ暗闇のケージ内に坐る被験者たちは、脳波モニターで脳の活動を観察されながら、地球磁場と同じ強さの回転磁場に曝された。
 その結果、磁場が反時計回りに回転するときには、被験者の出すアルファ波ががくんと減少した。
 だがそれだけでなく、神経反応の速度が、はっきり数百ミリ秒は遅くなることも判明したのだ。
 カーシュヴィンクによれば、この神経反応の遅滞現象こそ、脳の能動的反応を示すものだという。
 同じような反応は、磁場が床面にねじ込まれるときにも見られたが、磁場が上方にねじ上げられるか、または時計回りに回転するときには観察されなかった。
 カーシュヴィンクの主張では、この現象はわれわれの体内にある〝磁気コンパス〟の極性を、おそらく反映しているのだという。
 もしこの仮説が正しければ、有史前人類が造った方位性のある遺跡は、必ずしも天文観測を前提にする必要はないかもしれない。
 彼らは体内に備わる天然の〝磁気コンパス〟のおかげで、半ば本能的に方位性のあるピラミッドやマウンドや神殿を建造できた可能性が出てくるからである。

蛇口は災いの元

 去年の4月半ば、米フロリダ州ウィモーマ付近の川で泳いでいたオースティン・ハットフィールド君(18歳)は、体長約1.2メートルのヌママムシを捕まえた。
 日本名からわかるように、猛毒ヘビだが、開けた口の中が綿のように白いので、英語ではコットンマウス(綿の口)と呼ばれる。
 そうとは知らないオースティン君は、ヘビの口にキスしようとして、唇を噛まれてしまった。
 たちまち毒が回って、おバカな少年は病院に急送されたが、幸い手当てが早く、命はとりとめた。

悲鳴の主

「ぶっ殺してやる! 死ね! 死ね! お前なんか死んじまえ!」
 昨年10月中旬の真夜中2時頃、オーストラリアはシドニーの街なかで、家具類がドスン、バタンと放り投げられる物音とともに、カン高い悲鳴が響きわたった。
 驚いた近所の住民の通報で、駆けつけたパトカーの警官たちは、悲鳴をあげたと通報された女を探し回ったものの、見当たらないので、現場にいた男を尋問した。
 男はオドオドと打ち明けた。
「あれはクモだった……ほんとにデカイやつで……家じゅう逃げ回りやがった……悲鳴をあげた女? すいません。そりゃオレです。マジ、クモが大っ嫌いなんで」

赤ちゃんペット

 スウェーデンはゴットランド島在住のバティルダ・グスタフソンさん(仮名)と同居女性は、昨年11月半ば、行政管理当局から、以後のペット飼育を禁止された。
 理由はバティルダが、「猫チャンを胸に抱いて、母乳を飲ませてるの」と正直に打ち明けたため。
 彼女たちはほかにも、飼い猫たちを乳母車に乗せて散歩したり、高椅子に坐らせてスプーンで給餌したり、ダミーおっぱいからミルクを吸わせたりしていた。
 完全に蛇足だが、ゴットランド島はアニメ『魔女の宅急便』の中世風街並みのモデル地とされる。


(月刊ムー2016年11月号掲載)

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