見出し画像

亡父が夢で警告した真意/あなたの怪奇ミステリー体験

亡くなった父親が、ある夜、母親の夢に出現。翌日、夢の中での父のお告げが現実となり、近親者が急死……。
思いは報われなかったが、身内を案じる父の愛は、今も、これからも。

イラストレーション=不二本蒼生

原稿募集
★身のまわりで起こったり、身近な人から聞いた不思議な体験や出来事を誌上で公開してみませんか。どしどしご応募ください。なお、投稿の内容に関する写真や資料、または小林世征さんへの相談ごとがございましたら、ぜひ一緒にお送り下さい。投稿は編集部で確認後、3か月で処分します。
●送り先〒110-0005 東京都台東区上野3-24-6 上野フロンティアタワー14階
(株)ワン・パブリッシング ムー編集部
「あなたの怪奇ミステリー体験」係
★必ず住所・氏名(仮名希望者はその旨も)年齢・職業・電話番号を明記。
★採用分には、作品に応じて謝礼を進呈。
★なお、投稿は紙版、電子版およびムー公式ウェブ(https://muplus.jp/)で掲載いたします。掲載作品のすべての権利・著作権はワン・パブリッシングに帰属します。
●FAXまたはEメールでも募集中。[FAX] 03-6854-3069(24時間受け付け)
[Eメール] mu@one-publishing.co.jp

亡父が夢で伝えたこと

須藤奈緒子/秋田市(56歳)

 今から数年前の出来事です。父が亡くなって2年ほどがたったある夜のこと。母からこんな電話がありました。

「実は今朝、ちょっと気になる夢を見たのよ。お父さんが私の前にきちんと正座して、“久美子には重大な病気がある。このままでは大変なことになるから、すぐにでも病院に行かせなさい”といった後、フッと消えていったの」

 久美子さんというのは、父の甥博さんの奥さんでした。
 亡くなった父がきちんと正座して母に告げたというそんな夢の内容を聞いて、私も母と同じように、何やら妙に引っかかるものを感じたことは確かでした。
「ちょうど明日の午前中、博さんと久美子さん夫婦がうちに来る約束になっているから、そのときこの夢のことを話してみるわ」といって、母は私との電話を切りました。

 翌日の午前中、久美子さんは夫の博さんとともに母の元を訪ねてきました。そこで母が、前日見た夢について話すと、「心配してくれてありがとう。今はべつに体調は悪くないけど、何か少しでも異変を感じたら、すぐに病院に行きますから」といい残して、昼ごろ帰っていったそうです。

 ところが――その日の午後遅くのことでした。何やら慌てた母からの電話の声に、私は思わず自分の耳を疑いました。
 何と博さんが自宅で倒れ、救急車で近くの病院に運ばれたという連絡が久美子さんからあった、とのことでした。

 病院に駆けつけると、危篤きとく状態の博さんが変わりはてた姿でベッドに横たわっています。
 病名は脳内出血。意識が回復することは難しいと担当医から宣告されたそうです。
 そして翌日、博さんは一度も目を覚ますことなく息を引きとりました。母が見た夢からわずか2日後の出来事です。本当に信じられない思いでした。

 私たちには、これが決して単なる偶然とは考えられませんでした。
 父はあの夢で、甥の博さんの妻である久美子さんの身に迫っている危機を母に告げました。ところが、現実に倒れたのは嫁の久美子さんではなく博さんのほうでした。

 私は、昏睡状態の博さんを茫然ぼうぜんと見つめているときに、ふとひとつの考えが浮かんできました。そして、そのとき、その考えにずっと囚われていたことを今でもハッキリと覚えています。

 もしかしたら……博さんは、自分が盾になって災いを受けとめ、愛する久美子さんの命を救ったのではないかと。

 何しろふたりはとても仲のよい夫婦でした。親戚中のだれもが、あのふたりは、まさにおしどり夫婦だと認めていたほどでした。
 あるいは、母から夢の話を聞いた博さんの、愛妻に対する強い想いが、現実に起こるはずだったことを変えてしまったのかもしれません。

 当然ながら、突然の夫の死に大きなショックを受けていた久美子さん。しかし今は立ちなおって元気になりました。きっと天国から博さんが微笑みながら、そんな愛妻を見守っていることでしょう。

脳裏の声と偶然の出会い

ここから先は

4,177字 / 3画像

¥ 200

ネットの海からあなたの端末へ「ムー」をお届け。フォローやマガジン購読、サポートで、より深い”ムー民”体験を!