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コンロが直るまでの怪奇体験(ほか4話)/あなたの怪奇ミステリー体験
突如として体調不良に見舞われた私。直後、謎の訪問者3人が玄関から部屋の中へ!!いつしか体は金縛りに。そんな状態にもかかわらずいっこうに気づかない母。あの謎の3人の正体とははたして……。
◉読者投稿ページ イラストレーション=不二本蒼生
コンロが直るまで
◆田辺理恵/千葉市(35歳)
アパートに設置されたガスコンロの調子がよくありません。
これは数年前のある日の出来事です。
以前、母はガス屋さんに勤めていました。そこで母にガスコンロのことを電話で相談すると、すぐにコンロの交換をしたほうがいいといい、その作業を母自身がしてくれることになりました。
実家の母とは電話ではしょっちゅう話をしていましたが、実際に会うのは久しぶりです。そのため、電話ではなく、顔を見て直接あれこれ話せることをとても楽しみにしていたのですが……。
そろそろ母がアパートに到着するかなというときになって、突然、私は全身に激しい寒気を感じ、立ちあがれなくなってしまいました。
到着した母に、仕方なく布団に横になったまま理由を話すと、母は心配しながらも、とにかくガスコンロの交換を始めてくれました。私は布団に横になったまま、そんな母の後ろ姿を眺めていました。
やがて玄関から3人ほどの人が入ってくる足音がしました。
確か母が来たとき、玄関ドアに鍵をかけたはず。それに母は、当然、ひとりで来ているはずなのに……などと考えていると、何とその3人の足音が、一気に私の布団のまわりに集まってきたのです。
驚いて目を上げ、見まわすと、人影は確かに3人。でも、顔はハッキリとは見えません。足首のあたりから上全体が白っぽく見えるだけです。私はわけがわからず、恐怖を感じるというより困惑するばかりでした。
やがて私を取りかこんでいた人影が、何がおかしいのか愉快そうにケラケラと笑いはじめました。その笑い声からして、人影はいずれも若く、男性がひとり、女性がふたりという組み合わせのようでした。
私はもともと“おかしなこと”に遭遇することが多いのですが、この状況にどう対処すればいいのかわかりません。恐怖心も高まってきて、泣きだしそうになりました。
しかし、いつしか体が凍ったようになっていて、指一本すら自由に動かせません。母はすぐそばでガスコンロの交換をしているのに、作業に集中しているようで私の異変にはまったく気づいていないようでした。
そんなとき、ふと私の脳裏に般若心経の文言が浮かびました。
『摩訶般若波羅蜜多心経』
そこしか知りません。そこで私はその文言だけを、自棄になって繰りかえし唱えました。
すると――男と女が左右から私の口に手を伸ばしてきました。同時に、私の声がハウリングするかのように不快なノイズとなって、やがて消しとびました。
「コンロが直ったから、今日はこれで帰るね」ーーという母の声が聞こえたのはそのときでした。私が眠っているものと思ったようです。私がどんなに叫んでも、声は人影たちに消しとばされてしまいます。
母が、さらに何かいって部屋から立ち去って間もなく、突然、私の体に自由が戻りました。私の体は体温を取りもどし、同時に謎の男女の姿は見えなくなっていました。
私は、あまりの恐怖心に泣きながらもすぐに起きあがり、母の携帯に電話をしました。私の話を聞いて驚いた母は、息を切らして大急ぎで戻ってきてくれました。
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