ドリンクワイン氏の飲酒運転事件など/南山宏・ちょっと不思議な話
「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2013年7月号、第351回目の内容です。
文=南山宏
地球外生物化石
「正真正銘の地球外生物化石が、ついに隕石中に発見された!」
体制科学界はこれまで地球外生物の直接証拠は未発見としてきたが、今年初めイギリスの宇宙生物学チームが高らかに宣言した。
問題の隕石は昨年12月29日、スリランカのアラガンウィラ村上空で爆発し、散乱した破片という。
地元警察と学者が協力して、即日破片を収集し、同国保健省のコロンボ医療研究所に届け、所長自らが空路イギリスに運んで、サンプルを最新設備で分析にかけた結果、現在は絶滅した太古種の海生珪藻に似た構造物が発見されて、地球外起源と断定されたのだ。
チームメンバーは、バッキンガム宇宙生物学センター長のチャンドラ・ウィックラマシンジ教授、スリランカ保健省医療研究所のアニル・サマランアヤキ所長ら、錚錚たる生物学者ばかりが4人。
このほど「宇宙論ジャーナル」誌21巻37号(本年1月発行)に、4人連名の共同論文を発表した。
発表責任者のウィックラマシンジ教授は、半世紀前からパンスペルミア(生命宇宙播種)理論の大御所として有名な専門学者で、論文や著作が数えきれないほどある。
教授の話では、隕石落下からサンプルの採取・保管・運搬・分析まで、地球起源の生物汚染の防止に万全の措置が講じられ、最短時日で分析作業を完了したという。
また分析には、最新のX線回折装置、三酸素同位体組成分析器、走査型電子顕微鏡が駆使された。
「われわれは宇宙で孤独ではないという、長年待望されてきた決定的証拠がついに初めて得られた」
と4人の科学者は自信満々だ。
もっともUFO肯定論者からすれば、「証拠などいくらでもあるのに、何を今さら?」だろうが。
名前が悪い
米マサチューセッツ州チコピー在住の53歳の男は、2011年1月2日、隣町のホリーオークで5度目の酔っぱらい運転事故を起こし、現行犯逮捕された。
それも道理(?)、男の名はウィリアム・ドリンクワインという。
肉食性バナナ
「南アフリカ共和国クワズルナタール州産のバナナは、壊死(えし)性筋肉炎のバイ菌に汚染されているので決して食べてはいけません!」
という根も葉もないインチキな内容のEメールやテキストメッセージが、2011年11月、隣国モザンビークのインターネットや携帯電話ユーザーの間を駆け巡り、一時はパニック状態になった。
同国は南アフリカからバナナを輸入していないのに、首都マプトではバナナの売り上げが激減し、保健衛生局が全面否定するまで、パニックは鎮まらなかった。
恐怖の孵化
2012年12月20日付AP電によれば、オーストラリアはクィーンズランド州タウンズヴィルのカイル・カミング坊や(3歳)は、自宅の裏庭で見つけた数個のきれいなタマゴを、枯れ草の巣ごと母屋に持ち帰って、自分の寝室に置いたまま忘れてしまった。
数週間たった12月17日、母親のドンナさんがカイルの寝室の衣装戸棚を開けたところ、蓋付きのテイクアウト用容器を見つけ、不審に思って蓋を取ると、中で7匹のヘビの子どもが孵(かえ)っていた。
後日判明したが、このヘビの子たちは英名をイースタンブラウンスネーク、学名をプセウドナヤ・テクスティリスといい、同じオーストラリア原産のコブラ種、ナイリクタイパンに次ぐ〝世界第2の猛毒ヘビ〟だった。
小さすぎて蓋を押し上げる力がなかったのが幸いだったそうだ。
夢屋敷の終わり
マフィアのボス、ニコライ・ペトロヴィッチ・スチャーギンにとって、ロシア・アルハンゲルスク州の同名州都に自分の好みのままに建てた木造″13階建て″の大邸宅は、まさに″世界第8の驚異″に等しい建造物だった。
1992年に着手した当初は、平凡な2回建てですますつもりだったが、日本やノルウェーの木造家屋を見てから、屋根上の空間をもっと活用すべきだと考えて、なおも建て増し続けることにした。
「まず3回分を上に載せたら、キノコみたいに不格好な家になったんで、さらに階を上へ上へ積み足していったら、ますます奇想天外な形の大豪邸になっちまったよ」
木材と板を複雑な非対称形に組み上げ、その上に大きな尖塔を立てて高さがなんと44メートルに達したスチャーギン邸。正式の設計図も建築許可もないとはいえ、おそらく世界一ノッポの堂々たる巨大木造建築物となったのだ。
遠目には日本の寺院に五重塔を建てたような姿だが、近寄るとあたかもお伽話に出てくる悪漢が棲む根城(ねじろ)か要塞のようにも見えた。
1998年、スチャーギンは恐喝容疑で4年の実刑を受けてしまう。敵対組織にハメられたという主張は通らず、人生3度目の獄に下った。
入獄中にスチャーギンの無人屋敷は、抗争相手の組織に壊されて隠し金も盗まれ、5台もあった高級車も近くの川底に沈められた。
それでも出所5年後の2007年、妻子のいない60歳のスチャーギンは、廃墟同然になった大邸宅の、暖房設備もろくに働かない1階の4室を使い、手下も遠ざけてひとり頑固に暮らし続けた。
翌2008年、スチャーギン邸は市の消防局から″火災危険物(ファイアハザード)″に指定され、さらに裁判所からも「2回以上の木造建築は違法だから、2009年2月1日までに取り壊すように」と命令された。
スチャーギンは2回と3回の間に屋根らしき覆いを取り付けて、「そこから上はすべて装飾物だ」
とずる賢く抵抗したものの、結局、2008年の暮れも押し詰まった12月26日、スチャーギンの幻想的な″夢屋敷″は、解体作業の強制執行を受けることになる。
まず尖塔部分が手作業で引き倒され、残った巨大な廃屋の中段構造の部分も、さらに数か月がかりで少しずつ解体された。
それでもまだ、4階以下の残存構造物が無惨な廃墟のまま野ざらしにされていたが、それもとうとう2012年5月6日、スチャーギンが広大な中庭に別邸代わりに構えていた5階建ての大浴場施設が火事になったとき、巻き添えで延焼して跡形なく燃えつきた。
(月刊ムー2013年7月号掲載)
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