聖地セドナの岩絵「V−V」とホピの祖先が刻んだ大地のヴィジョン/尾崎靖・NANA
世界有数の聖地にしてパワースポットとして知られるセドナ。
その郊外の遺跡に1030以上の事物が描かれた岩絵があり、グレゴリオ暦より正確に、夏至や冬至といった季節の節目を告げるという。
構成・文=尾崎 靖 写真=NANA
絵に差す光と影が精度の高い暦となる
アメリカ、アリゾナ州のセドナは、世界的な聖地、パワースポットとして知られている。見たこともない雄大なスケールの光景を目の当たりにすると、多くの人々が言葉ではいいつくせない感動を覚えるという。
そんなセドナの絶景を撮影するかたわら、現地の大自然を体感できるツアーガイドをしているのが「写心家」のNANA氏だ。セドナに住んで、今年で23年になる。
「セドナに住むようになったのは、初めてセドナの赤い岩山を見たときにわけもなく涙が出てきて、こんな景色は日本で見たことがないのに、なぜ懐かしいんだろう? と思ったのがきっかけです。私だけでなく、セドナを訪れる多くの方が、なんだか懐かしい風景だとおっしゃいます」
セドナに広がる風景は、国や地域を越え、地球自体がひとつの大きな生命体であることを実感させてくれる。私たちは孤立した存在ではなく、マザーアースの一部である――風景を目にした者は、そんな感覚を味わい、母なる存在の懐かしさを嚙みしめる。それは、古来セドナに暮らしてきた先住民の実感でもあるだろう。
じつは、セドナ周辺にはたくさんの遺跡と、現在も調査・研究が進行中の岩絵が存在する。
「私が大自然だけでなく、このあたりに残る遺跡や岩絵に惹かれるのは、人間がマザーアースに畏怖の念を持って生きていた証を感じられるからです」
文字を持たない先住民にとって、岩絵は彼らの文化を伝えるものだ。
セドナ郊外には「V−V(ヴィ・バー・ヴィ)」と呼ばれる有名な岩絵があり、そこには暦が描かれている。暦といっても、私たちが見慣れたカレンダーではない。岩絵の上方に突きだしたふたつの岩が、春分や夏至をはじめとする特別な日に、特定の絵に光や影を落とすのだ。これによって人々は、種まきの時期や収穫期といった季節の節目を知る。たとえば夏至には、雷の絵のところに岩の影がくる。雷の下には、水たまりを表す渦巻きが描かれている。つまり、夏至の後に雨季がくることを告げているのだ。
影をつくるふたつの岩は、上下に並んでいる。不思議なことに、下の岩の影は太陽の動きに合わせて刻々と動いていくのに、上の岩の影は、15分ほど同じ場所にとどまっている。
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