宮沢賢治も愛した虹色の【オパール】/パワーストーン事典
パワーストーンの力を得たいなら、その石について知ることが一番の近道です。その石はどんな鉱物で、どんな歴史や伝説を持っていて、どんなふうに愛用されてきたのか――。石のパワーの秘密を知ることで、その効果をより実感してみてください。
文=高橋桐矢
清澄な虹の輝きを放って喜びと幸運をもたらす石
オパール 蛋白石/Opal
【テーマ】魅了・童心・希望
【基本データ】主な原産国:メキシコ・オーストラリア・ブラジル/硬度:6/比重:2.1/結晶系:非晶質
内部から神聖さと優雅さがほとばしりでて、全ての人を魅了する石。持ち主に喜びと幸運をもたらすとされる、オーストリア、ハンガリー、オーストラリアの国石です。宝石言葉は、虹の輝きから「希望」。
【色と形によるパワーの違い】
遊色が赤系のものは積極的な火のパワーを、青系のものは鎮静作用の水のパワーと持つとされます。
【選ぶときのポイント】
透明度が高く、遊色があざやかで、うかびあがる色が多いほど良品です。
【使い方のヒント】
◎生きる喜びを得たい ◎才能を伸ばしたい ○恋心を伝えたい ×心の傷を癒したい
【取り扱い上の注意】
熱や乾燥に弱く、乾燥すると割れやすく、注意が必要です。また、酸やアルカリにも弱く、超音波洗浄は避けます。鉱物標本は水に入れたまま保管する場合もあります。
【おすすめの組み合わせ】
+パール=気品
来歴と伝説
古来、独特のイリデッセンス(虹色)で人を惹きつけてきた希有な宝石です。虹色に遊ぶように動く光の効果をプレー・オブ・カラー(遊色)と言います。
オパールの語源はサンスクリット語で、宝石を意味するウパラ。紀元1世紀に書かれた博物誌で、プリニウスはオパールを他の石と別格扱いで、ルビーより赤く、アメシストの紫とエメラルドの緑と燃える硫黄、油を注いだ炎のすべてを含む不思議なあざやかな光を発し、清澄さにおいてこれに匹敵する宝石はないと絶讃しています。
たくさんの色を含んで楽しげに輝くオパールが、まるで誰からも愛される子どものようということで、パエデロス(愛すべき子ども)という別名があり、またキューピッドとも呼ばれました。まぶしく輝く美しさから、眼の石として全ての眼の病を癒し、よく見えるようにするとされています。
オパールが最も愛された17世紀ヨーロッパでは、内部から神聖さと優雅さがほとばしりでて、見る人に色々な性質を与え、魂を貫き、全ての人を魅了する石、と最大級の賛辞が捧げられています。上質な美しいオパールは、持ち主に喜びと幸運をもたらすと信じられていました。
ところが19世紀になるとオパールは涙の石という説が広まりました。そのきっかけはスコットが1839年に書いた「ガイエルスタインのアン」という小説で、不思議な魔力を持つ石としてオパールがとりあげられたからとされています。その背景には、水分が多いオパールが色を変えやすく、もろく砕けやすい点、さらに古来、眼の石とされてきた点が邪眼と結びつけられたなどの背景がありました。そんな中、パリ生まれの大女優サラ・ベルナールが守護石として終生オパールを愛したのは有名な話です。その後ヨーロッパに広まった不幸の石伝説を無視して、美しいこの石を再評価し、積極的につけはじめたのはアメリカの女性達でした。
以来、オパールは世界中で愛され、20世紀に10月の誕生石となりました。
非晶質のやわらかな輝きは特に日本人のウェットな心証にあっていたようで好まれました。宮沢賢治は童話「貝の火」でオパールと思われる宝玉を、赤や緑や様々な火が激しく戦争したり、いなずまがひらめいたり、光の血が流れたり、そうかと思うとひなげしの花や黄色のチューリップ、薔薇やほたるかずらが風にゆらいだりしているように見える、とオパールの魅力を目に見えるままに表現しています。
鉱物としての特徴
オパールは他の鉱物と違って、結晶ではなく、球状の微細なシリカ(珪酸)が低温でゆっくりと沈殿してできた集合体、いわば、シリカのジェリーです。4~9%の水分を含み、ほとんどは不透明なミルク色ですが、規則正しく集まったものだけが、美しい虹色を発するプレシャスオパールとなります。
オパールは有史以前の昔から宝石として珍重されてきましたが発掘されて見つかることはありません。なぜなら、このたぐいまれな美しさは、何百年も持たないからです。とても高価な宝石ですが、子々孫々と受け継ぐことはできません。しかし、適度な湿度と温度を必要とするオパールは、肌につけておくのが最も望ましく、金庫にしまっておく石ではありません。人の寿命に近く、人肌で鮮やかに輝くオパールは、永遠孤高の宝石たちのなかでは異色の存在と言えるでしょう。
模造品もあり、着色されたり他の石と貼り合わせ加工されている品もあります。
(『実践!パワーストーン効果大事典』より抜粋)