怪談「コトリバコ」とコインロッカーベイビーズ/吉田悠軌・オカルト探偵
オカルト探偵も協力した映画『樹海村』が公開中だ。この映画の重要なキーとして登場するのが、ネット怪談の金字塔たる呪具・コトリバコ。奇しくも同じ年に産声をあげたネット発の恐怖「樹海村」と「コトリバコ」が時を経て今、合体した意味とは――?
文=吉田悠軌 #オカルト探偵
最後の秘境と最恐の呪具「コトリバコ」
映画『樹海村』(東映、清水崇監督)が絶賛公開中だ。エンドロールを見た人なら気づいたかもしれないが、私・吉田も「取材協力」に関わった作品である。関係者の端くれとしてはまず映画本編をご覧いただきたいし、内容についていっさい触れることができない。とはいえ「樹海村」「コトリバコ」というふたつのネット怪談が重要なモチーフとなっていることは、予告映像でも流れていることなので、ネタバレにはならないだろう。
まずは樹海村伝説について。青木ヶ原樹海の奥深く、隠された「謎の集落」が存在するという噂だが、本連載や映画『樹海村』公式パンフレットなどでたびたび私見を述べているため、詳細は割愛する。
ここでは「樹海村」という都市伝説の誕生が、おそらく2005年であることだけを強調しておきたい。この2005年というタイミングが重要なのだ。
同年4月には『樹海の歩き方』(栗原亨、イースト・プレス)が刊行され、青木ヶ原樹海が「最後の秘境」(同書の宣伝文句)として注目を集めていた。これと同じ年に、Googleマップのサービスが開始されたことも見逃せない。
インターネットの普及は「杉沢村」「犬鳴村」といった「謎の集落」にまつわる怪談を日本全国に広めた。しかしその息の根を止めたのもまた、ネットの発展だったのだ。
青森県の片隅に「杉沢村」が、福岡県の峠道に「犬鳴村」が実在するのではないか、日本のどこかにまだ「謎の集落」があるのではないか……というロマンは、航空・衛星写真まで簡単に閲覧できるGoogleマップの登場により、まったくリアリティを失ってしまったのである。
しかし怪談とは、時代に沿って姿形を変えるものだ。Googleマップの登場は逆説的に、深き森に覆われた青木ヶ原樹海ならば、航空・衛星空写真では見えない秘密があるかもしれない……との空想をもたらした。ここから「最後の秘境」に佇むとされる樹海村伝説が流布したのだろう、と私は推察している。
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