ロジカル・シンキング・ポケカ#3〜不文律との邂逅〜
こんにちは、やさいです!
第2回の後にたくさんの方からリアクションいただきました。とりわけ、お子さんをお持ちのプレイヤーの方々にたくさん興味を持っていただけたのは個人的に嬉しい限りです。いつかは学校の特別講義で「ポケカから学ぶロジカルシンキング」とかしちゃったりみたいな妄想を繰り広げておりました(図に乗るな)。
さて、第1回、第2回でテキストをよく読む、具体的にあてはめることを強調してきました。概ねこれで問題は解決します。
本当は、バリコオルのバリアフリーでオルタージェネシスは防げないみたいな世間の言説に物申したいのですが、その気持ちをぐっと堪えて、第3回ではテキストをよく読む編のまとめとしてポケカ界の不文律を扱います。
第1 今回の質問
Q「やさいさん、こないだオーロラパーフェクションと当たったんですけど、フシギバナ&ツタージャってオーロラエネルギーでもかがやくつる使えるんですね。てかあれ、おかしくないですか?」
もはや愚痴なのか。笑
とはいえ、聞かれたことには真摯に向き合わなければなりません。今回はこの何かがおかしい感じを突き詰めて考えていくことにしましょう。
ここで大変申し訳ないのですが、説明の便宜上、一旦はオーロラエネルギーをレインボーエネルギーと置き換えて説明させてください。最終的にオーロラエネルギーの話にも行きつきますのでお付き合い下さい。
初めて出たときはキラキラだったんじゃよ…
第2 テキストを読む
御多分に漏れず、まずはそれぞれのテキストを正確に読み解いていきます。
フシギバナ&ツタージャのかがやくつるはこうです。
自分の番に、このポケモンがバトル場にいるなら、自分の手札から草エネルギーをこのポケモンにつけるたび、1回使える。相手のベンチポケモンを1匹選び、バトルポケモンと入れ替える。
書いてあることはすんなり入ってきますが、「草エネルギー」って何ですかね?いや、僕の言いたいことはそうじゃなくて(笑)、ここでいう草エネルギーって、基本草エネルギーのことだけを指している=効果により草エネルギーとして働く特殊エネルギーを排除している可能性ってないでしょうか。
だって草エネルギーって書いてあったら1番最初に思い浮かぶのはこれですよね?
しかし、このテキストだけでは判断できなさそうです。ここで、みんな大好きマニューラ先生にご登場いただきます。
シャドーコネクション
自分の番に何回でも使える。自分の場のポケモンについている基本悪エネルギーを1個、自分の別のポケモンにつけ替える。
かがやくつるとシャドーコネクションの「エネルギー」の表記を比べてみると、シャドーコネクションのテキストには明確に「基本」悪エネルギーと記載されています。一方、確認した通り、かがやくつるには単に草エネルギーとしかなく、「基本」とはありません。
この使い分けは明確な意図をもってされていると考えられます。ポケモンカードのテキストに記載されるエネルギーは以下のように整理されることが推測されます。
「基本◯エネルギー」→基本◯エネルギー(カード左上にその記載があるエネルギー)
「◯エネルギー」→基本◯エネルギー&その効果により◯エネルギーとして働く特殊エネルギー
念のためシャドーコネクションのQ&Aを確認しましたが、やはり、この基本悪エネルギーには、特殊エネルギーであるレインボーエネルギーを含まないことが明言されています。
「◯エネルギー」に、その効果で◯エネルギーとして働く特殊エネルギーが含まれるか否かは、他のポケモンのテキストとの対比でしか明らかにならないことを理解しなければなりません。
これって特殊エネルギーも含むんですか、と聞かれたら「基本エネルギーしかダメなときはちゃんと『基本』ってついてるはずなんですよ〜」とか説明してあげられるとGOODですね。
続いてレインボーエネルギーのテキストです。
このカードを手札からポケモンにつけたとき、そのポケモンにダメカンを1個のせる。このカードは、ポケモンについているかぎり、すべてのタイプのエネルギー1個ぶんとしてはたらく。ポケモンについていないなら、無色エネルギー1個ぶんとしてはたらく。
書いてあることは明快ですが、その意味するところを整理しておきます。
ポケモンについている→全てのタイプのエネルギー
ポケモンについていない→無色エネルギー
全てのタイプのエネルギーとは草炎水雷超闘鋼悪妖竜無色の10タイプを持つエネルギー(上級プレイヤー用ルールブックD-08、45頁)です。そして無色エネルギーであるということは、草炎水超闘雷鋼悪妖竜エネルギーではないということです。
第3 あてはめてみる
ではいつも通り具体的状況にあてはめてみましょう。
かがやくつるを使う直前、特殊エネルギーであるレインボーエネルギーは手札にありますので、ポケモンにはついていません。
(前略)このカードは、ポケモンについているかぎり、すべてのタイプのエネルギー1個ぶんとしてはたらく。ポケモンについていないなら、無色エネルギー1個ぶんとしてはたらく。
↓↓↓
このカードは、(中略)手札にあるならば、無色エネルギー1個分としてはたらく。
手札にあるレインボーエネルギーは無色エネルギーである。
そして今、手札にある無色エネルギーをフシギバナ&ツタージャにつけました。特性かかがやくつるを発動させる条件は、「手札から草エネルギーをつける」ですので、手札から無色エネルギーたけている以上満たしません。したがって、かがやくつるは発動しません。
大上段に構えていた割に、サクッと辿り着けましたね。第3回目のわりにエネルギーの概念さえ理解できれば簡単な質問でしたね〜
したがって、今回の質問に対する答えは
「使えま…」
————————————————
「そんなんできないに決まっとるやん〜」
「せやねんせやねん。でもわからへんねん。」
「何がわからんの〜。テキスト読んでったらできないっていう結論で決まりやん〜」
「でもオカンが言うには、レインボーエネルギーでもかがやくつるは使えるっていうねん。」
……
「ほな、できるやないか。」
第4 不文律を発見する
こんなに僕らは書いてあるテキストに忠実に考えてきたのにもかかわらず、オカンは違うといっています。
しかし、オカンが言うことは絶対。この結論だけを覚えて終わりにしてしまうのもまた良いでしょう。
「このテキストだとかがやくつる使えないですよね?」
「公式サイトにできると書いてあったんでできます。」
時間制約がある公式大会ならそれで良いのかもしれませんが、始めたばかりの人や少し賢くなったお子さんにこんなこと聞かれてこう答えられますか?心の中では、言ってることはあながち違ってないんだよなぁとか思いながら。
せっかくロジカル・シンキングと銘打って執筆しておりますので、ここから先はなぜそのような結論になるかということをしっかり納得したい方向けです。
さて、では話を戻しましょう。とりあえず下記のことは間違いなさそうです。
①手札にあるレインボーエネルギーは無色エネルギーである
②フシギバナ&ツタージャのかがやくつるは手札から草エネルギーをつけるたびに使える
この事実は動かし難いです。この一見すると矛盾する2つを両立させるロジックを頭の体操がてらちょっとだけ考えてみましょう。
…
…
…
はい、シンキングタイム終了
こんなかがやくつるの最後にこんな一文を入れてみるのはどうでしょう。
「なお、手札からつけるエネルギーが草エネルギーか否かを判断する際は、このポケモンについたエネルギーが草エネルギーか否かもって判断する。」
テキストっぽく書くとわかりづらいですが、要するにフシギバナ&ツタージャについた時点で草エネルギーであれば、手札からついたエネルギーも草エネルギーであると考える、ということです。
今まで僕らは手札にある時点でのエネルギーを特定し、特性の使用可否について手札にあるときに草エネルギーorNOTを考えてきました。それはテキストから導き出される自然な思考です。
しかし、かがやくつるを使えるかどうかの判断の時だけ、エネルギーの判定基準のタイミングをポケモンについたタイミングにずらすことで、矛盾なく①と②を両立させられそうです。
と、このロジックを1日かけて考えて思いついた(これはガチ)のですが、翌朝Q&Aで「つけるたび」、対象を全てのカードにして検索しました。かつて同じ文言のカードがあったのであれば、同様の問題が生じている可能性が高く、その際の判断が参考になると考えたからです。
そうすると、この論点のヒント(というかほぼ答え)になる質問が、なんとロジック付きで出ておりました!!
この質問した方はとても賢い方です。この問題の本質は、エネルギーの判断タイミングであることまで認識した上で、その点まで公式に聞いています(青下線部分)。
僕は公式のお問い合わせフォームを使用したことがないですが、経験則上、オカミは聞かれたことにしか答えてくれないです。親切心で聞かれてないことまで答えるとかえってその答えが別の判断と整合性が取れなくなり、かえって自分の首を絞める可能性があるからでしょう。なのでこの方は逃げられない形で質問しています。「逃がさねぇからなぁ!」
一応例示しているロズレイド、ジュカインのテキストは以下の通りです。ちなみにポケパワー、ポケボディーは現代の「特性」です(恒常的に働く特性をポケボディー、宣言が必要な特性をポケパワーと区別する時代がありましたが、複雑ゆえに廃止されたと理解してます)。
エナジーシグナル(ロズレイド)
自分の番に、手札のまたは草エネルギーをこのポケモンに1枚つけるたび、1回使える。相手のバトルポケモンを、草をつけたならこんらんに、超をつけたならどくにする。このパワーは、このポケモンが特殊状態なら使えない。
みどりのこきゅう(ジュカイン)
このポケモンに、手札から草エネルギーをつけるたび、このポケモンのダメージカウンターを2個とる。
特にロズレイドのエナジーシグナルは、効果以外の点で、かかやくつるとほぼ同じテキストをしていますので、かなり参考になりそうです。
自分の番に、このポケモンがバトル場にいるなら、自分の手札から草エネルギーをこのポケモンにつけるたび、1回使える。相手のベンチポケモンを1匹選び、バトルポケモンと入れ替える。
これに対する公式の答えは以下の通りです。
なげぇよ。笑
赤線を引く気すら失せました。時間がある方は一字一句読んでいただければ良いと思います。赤下線部分の質問に対しては、ポケパワー・ポケボディーが使えるとした上で、青下線部分に対しては以下を明言しています。
「ポケモンに手札からエネルギーをつけたとき、つけたエネルギーがどのタイプとしてはたらいているかによって、ポケパワー、ポケボディーの効果がはたらくかどうかが決まります。」
手札からつけたエネルギーとみなすかまでは言及していませんが、特性使用の判断タイミングについては僕と同じ見解であることがわかりました。めでたしめでたし。
いや、こんなんわからんやろ。笑
その意味で個人的に、「つけるたびに」発動できる類いの特性のテキストは最悪だと思います。アナログゲームにおいて、書いてあることが1番の拠り所と前回申し上げました。書いてあることに忠実に依拠してたどり着いた結論が公式と真反対の結論が出る可能性があることは、アナログゲームとして重大な欠陥です。
だって、電波の届かない人里離れた山の中でプレイをしているおばあちゃんたちは、レインボーエネルギーをフシギバナ&ツタージャGXにつけてもかがやくつるは発動しないよねェ…とか言いながらプレイしてるかもしれないんですよ?ヤバくないですか。
とはいえ、文句ばかり言っても仕方がありません。ポケカには一定数の不文律(明言されていない、暗黙の決まり)が存在することを認識しなければならないです。
ポケカには一定数の不文律が存在する(難)
特殊な文言をキーワードに、対象をすべてにして検索してみる
と意外にヒントが出るかもしれない。
ちなみにしれっと、冒頭で触れたエネルギーの話も書かれてますね。
第5 オーロラエネルギーは?
さて、冒頭で後回しにしたオーロラエネルギーについて説明します。オーロラエネルギーのテキストは以下の通りです。
このカードは、手札からポケモンにつけるとき、自分の手札を1枚トラッシュしなければつけられない。このカードは、ポケモンについているかぎり、すべてのタイプのエネルギー1個ぶんとしてはたらく。
レインボーエネルギーとの違いに気が付いたでしょうか。レインボーエネルギーはついていないときは無色と明言されていましたが、オーロラエネルギーは、ついていないときは、何エネルギーであるかはわかりません。特殊エネルギーのカードであることは間違いなさそうですが…
もしかしたら、手札にあるときに無色エネルギーと書いたことで今回のような混乱を招いてしまったという反省から、明記を避けたのかもしれません(だからといって問題が容易に片付くこともないと思うのですが)。どこまでも推測の域を出ませんが。
とにもかくにも、手札にあるときに無色エネルギーであろうが、何者でもないエネルギーであろうが、かがやくつるの使用に際しては、上記の通り、ポケモンについたエネルギーがどのエネルギーで判断することになりますので、レインボーエネルギーとのテキストの違いは問題にならなさそうです。
実は、オーロラエネルギーとかがやくつるの関係は公式サイトに載っていません。なので、「オーロラエネルギーをつけた場合でも、かがやくつるは発動できます。」は、嘘になります(特にジャッジの人は気をつけましょう)。
上記のレインボーエネルギーとかがやくつるの裁定を示して、「レインボーエネルギーで発動できるので、オーロラエネルギーでも発動できます」というのもおかしいです。違うエネルギーである以上、結論が変わりうる可能性があるからです。
オーロラエネルギーでもかがやくつるが使えるのは、上述の通り、ポケモンに手札からエネルギーをつけたとき、つけたエネルギーがどのタイプとしてはたらいているかによって、特性の効果がはたらくかどうかが決まるからです。
いきなりオーロラエネルギーとの関係を語り出すと序盤で説明が困難になるのでレインボーエネルギーの話から始めたというわけです。
第6 一問一答の功罪
当たり前ですが、株式会社ポケモンが販売しているポケモンカードゲームにおいては、株ポケの判断=ポケモンカード公式サイトに掲載される見解が絶対です。
この連載を始めるときに「ほとんどの問題はテキストをよく読めばわかる」とお伝えしました。これ自体に間違いはありません。
この「ほとんど」、というのは、今回のような一定数の例外があることを含意しておりました。すなわち、テキストを読んで具体的にあてはめるだけでは辿り着けない裁定があり得る、ということです。
この結論については申し訳ないですが、覚えるしかありません。気になる問題があれば、Q&Aを確認しましょう。
しかし、泣くことなかれ。裏を返せば、論理的に考えて正解を導けるQ&Aは覚える必要がありません。念のためにあってるかの確認までしておくとより丁寧です。
例えば、第2で取り上げたマニューラGXのシャドーコネクションなんて、Q&Aで取り上げるまでもないと個人的に思っています。
Q&Aを知識のごとく、一つ一つ覚えるのはナンセンスです。Q&Aの質問の質は玉石混交ですので、数多ある裁定の中から、ロジカルには導き出しえない質問がどれかを判断する能力が求められています。
現在、ポケモンカード界にはとても優秀な方々が運営するルールや裁定に関する一問一答サイトが存在しています。
間違った裁定がジムバトルや公式大会等で蔓延することを未然に防ぐという点で、一問一答という万人にとっつきやすい形式でのルール・裁定の確認は、それらの周知に繋がりとても有意義です。
しかし、一問一答形式では、その判断の根拠となるプロセスまでは明確にはなっていません。その判断の根拠を挙げないものもたくさん見受けられます。
それゆえに多くのポケカプレイヤーは、その裁定を、論理などないものとして、一つ一つ覚えるようになってしまっているのではないかと考えていました。ひどい例だと、普通に対戦をしてて「この裁定は◯◯のサイト(≠公式)で問題ないと書いてありましたよ」とか言われます(「いやそれ誰なんだよ」と僕は言い返しますが)。
ポケカに限らず、世間の一問一答問題集にすべからくあてはまりうることだとは思います。一問一答で急場はしのげるかもしれませんが、長く続けていきたいポケモンカード。覚えることは少なくしながら、今一度ロジカルな思考を持って対戦を楽しんでもらえればなと思います。
・普段からなるべくテキストに忠実に解決を試みる
・論理的に考えても辿り着けない裁定だけを覚える
最後までお読みいただきありがとうございました!これを機にちゃんとテキストを真面目に読もう、と思ってくださる方が増えたり、読んでくださった方の論理的思考の一助となることを祈っています。
ご質問、ご意見等ございましたらコメント欄やTwitterなどで気軽にお問い合わせください。
ちなみにいいねのリアクションも日々増やしています。笑
ではでは!
やさい
「オランウータンの俺は余裕でわかったから、人間のみんなは当然わかったよね?」
→第4回へ