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学力調査の検討でいつも考えていたこと

全国学力調査をして思うこと
高学年の担任になって以来、私は毎回、全国学力調査の問題をすべて解き、その誤答や傾向を詳細に検討しています。その後、各学力問題についても分析を行っていますが、これらを単元ごとに分けて検討しても、学力問題の本質に迫ることはできません。
この点については、平成19年に全国学力調査が始まった当初から主張してきました。しかし、県への報告となると、どうしても本質的な議論よりも、単元ごとの分析に偏ってしまいます。そのため、提案の際には、単元ごとの分析結果に加え、学力問題の本質に関する考察も含めた文章を添えるよう努めています。それでも、残念ながらこの部分はほとんど無視されてしまうのが現状です。
結局、報告が受け入れられるには、単元ごとの分析が必須であると感じています。
無視されている部分を書きます。
学力調査を採点していると、子どもたちが問題の意味や意図を正確に理解しているのか疑問に感じることが多々あります。単に正誤の達成率だけで学級の弱点を単元別に見るのではなく、回答からその子どもがどのような思考過程をたどり、どのようにして間違いに至ったのかを個別に考える必要があると思います。そこから、どのような取り組みが有効であるかを個別に行うことが、学力向上に向けた真の取り組みになると考えます。しかし、実際の日々の業務を考えると、このようなアプローチは難しいのが現状です。
ただ、子どもたちの誤答を見ると、その原因のほとんどが問題文の読解力の不足に起因していると感じます。そこで、問題を正しく読み取れない原因について考えてみました。

読み取れない原因の分析

  1. 意味が分からない言葉があるため、文章全体の意味が理解できない。

  2. 言葉自体は理解できるが、言葉と動詞の関係性から文章の意図が理解できない。

  3. 言葉の意味は分かるが、長い文章になると途中で最初の部分を忘れてしまい、最後の文章だけで問題の意味を決定してしまう。

  4. 言葉の意味は理解できるが、詳細に読まずに自分なりに問題の意味を解釈してしまう。

  5. 問題全体を読まず、一部の文章だけで自分なりに問題の意図を決めてしまう。

このように考えると、子どもたちが苦手とする読みの認識方法が、次の「リーディングスキルテスト」の観点項目に関連しているのではないかと思います。

  • 係り受け解析: 文節がどこで区切られるかを理解し、主語と述語、修飾語と非修飾語の関係を理解する力。

  • 照応解析: 指示代名詞が何を指しているのかを理解する力。

  • 同義文判定: 2つの異なる文章を比較し、意味が同じであるかどうかを判断する力。

  • 推論: 文章の構造を理解した上で、生活体験や常識などを使って文章の意味を理解する力。

  • イメージ同定: 文章と図形やグラフを比較し、内容が一致しているかを認識する力。

  • 具体例同定: 定義を読んで、それと合致する具体例を認識する力(国語辞典的な定義や数学的な定義などが含まれる)。

                   参照 国立情報学研究所 
今後の取り組み
これらを踏まえ、「語彙を増やす取り組み」や「読解力をつける取り組み」を具体的に進めていくことが重要です。

語彙を増やす取り組み
語彙力を増やすために「読書を推進する」という取組はよく見られますが、具体的な方法が提示されていない場合が多いです。しかし、問題はもっと深く、語彙力が不足しているために読書が進まないという悪循環が起こっているのです。語彙力が不足していると、本の内容が理解できず、結果として本を読む意欲が失われてしまいます。
そこで、読書以前に語彙力をどのように身につけさせるかを考える必要があります。子どもたちがどのように言葉を獲得しているかを考慮しながら、具体的な取り組みを論理的にまとめることが必要です。
一つのアプローチとして、体験を言語化し、その言語を文字として認識させていくプロセスを導入することが考えられます。この言葉の獲得方法を具体化していくことが、今後の研究課題となります。

読解力をつける取り組み
読解力をつけるためには、前述のリーディングスキルの観点項目が有効です。まずは文節に分け、それぞれの文節の意味を考え、主語と述語の関係を明確化するプロセスが必要です。このプロセスが、初歩的な読解力向上の取り組みとなります。
さらに、国語を中心に、あらゆる教科で自分の考えを発表することの重要性を再認識する必要があります。文を読まずに一部の単語から文意を予測し、自分の思いを発表するだけで、意見を言ったと思っている子がいるかもしれません。先生に認められることで満足してしまい、思考を深める学習をできないのです。
だからこそ、子どもたちには、授業の展開をしっかりと把握し、質問と答えを正確に対応させ、その上で関連した意見を出し合う中で内容を深めていくことが大切です。しかし、これを授業で展開していくには、かなりの授業テクニックが必要です。

まとめ
このように、観点項目を一つひとつ見直し、具体化を進めていくことで、より実質的な研究に発展させることができます。ただし、すべての観点項目を一度に取り組むのではなく、学校の課題に合ったものを一つ選んで取り組む方が効果的です。
まだ具体的な答えが出せていない部分もありますが、具体化と共有を目指して研究を進めていくことで、必ず成果が得られると信じています。
 
 
なんとなくふわっとした研究主題にするのではなく、研究として数値化して考察できるように、管理職として進めていきたかったです・・・。


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