和歌山県プログラミング教育への提言 その3 教材採択の闇
アーティックロボの問題点
1億円の予算を投じて各学校に配布された教材「アーティックロボ」。T・Tとして5年生を対象に授業で使用したところ、予想通り問題点が浮き彫りになりました。
この教材はブロック構造で、一つ一つのパーツが簡素化されています。これにより組み立てが容易になるという利点がありますが、プログラムを受け付ける基盤ブロックに大きな問題があります。この基盤のコード接続部分が非常に脆弱で、特にパソコンのUSBジャックから基盤への接続が何度も抜き差しされると、接続が不安定になります。特にminiType-B接続では、上下の向きがあるため、子どもたちが誤って無理に押し込むことがよくあります。Type-Cやライトニング接続であれば、こうした問題は少ないでしょうが、アーティックロボはminiType-Bを使用しているため、接続不良が発生し、パソコンが基盤を認識できない状態になることがありました。子どもが扱う教材であるため、荒い扱いにも耐えるような設計が求められますが、このデリケートな接続部品では、半年も経たないうちに使用不能になるという苦情が多数寄せられることが予想されます。結果として、基盤のついたブロックや接続コードの交換が必要となるでしょう。
実際に使用してみて分かったことですが、先日も書いたように、前年度に先進校で実証実験を行うべきだったのです。
1年間の無償サポートを受けると指導主事は発言しましたが、初めての1年間は何も手を打たずに和歌山県では時間が過ぎていったように感じます。翌年、保証期間が過ぎた後にプログラミング教育が始まり、故障が発生していたのではないでしょうか。私が指摘しても無視されていた現場と行政のタイムラグが、この問題を引き起こしたのです。
アーティックロボについては、年々改善していると思いますが、今ではより良い教材が、その会社から販売されています。
早く取り組むためには、ものより人への投資を行い、熟成された教材へと移行するのが最善だと思っていました。
雑感ですが、15年前、エデュケーションエキスポでお世話になった内田洋行株式会社が、プログラミング教材を提供していないのは残念です。信頼できる会社だからこそ、是非とも教材を提供してほしかったです。もし共同開発の機会があれば、私が校長なら真っ先に手を挙げるでしょう。当地方で教材を扱っている代理店の職員も内田洋行が好きなので、一緒に取り組む機会があれば良いと感じていました。
これが、一人一台のGIGAスクール構想の前に行われたプログラミング教育に対する私の感想です。和歌山県は1億円以上を投じ、その上で6000万円をパソコン指導補助として人材会社に支払い、5人を確保しました。この派遣事業を数年間続けた結果、数億円が費やされました。
それより、効果的なお金の使い方はあったと思います。
先日書いた、現場の職員が必ず取り組まざる得ないような、資金提供や、先進校での実験的な使用のための投資です。
でも、この予算で学力向上のためのシステム作りをしていけばもっと有意義だと感じています。
私は、この資金をデータ処理に使った方が和歌山県の学力向上に役立つと考えます。担任の職員番号と学力調査の点数を紐付けるシステムを構築すれば、どの先生が学力向上に寄与しているかをデータとして明確に把握できます。そうした先生方を集めて話し合うことで、県全体として学力向上に必要なことが見えてくるでしょう。このようなデータ処理に資金を投じるべきだと私は常々考えていました。
管理職として、この挑戦を実現できなかったことが残念です…。