見出し画像

本当に組体操は危険?事故は人災では・・・

前回は職員の年齢構成による問題について書きました。急激な若い教員の増加により伝達すべき立場の教員が全ての学校に存在できない状態で過ぎていった。

今回はその典型的な例として、組体操の問題を取り上げたいと思います。

組体操問題への私の感想

2014年の報道で組体操に関する問題が提起され、翌年、文科省が方針を出しました。それ以降、当地方でも組体操を見かけることは少なくなりました。しかし、私自身の感覚としては、それまで組体操で重大な事故が起こったという話をほとんど聞いたことがなく、私自身にも組体操が危険であるという感覚がありませんでした。確かに子どもたちにリスクはあるにせよ、なぜ未然に防げなかったのかが不思議でなりませんでした。

当たり前が継承されていない時代だからこその事故

少し話がそれますが、経緯をお話しさせてください。2011年、Education Expoで実践報告として話をする機会がありました。そこで、年齢構成の問題とICT活用の重要性について触れようとしたところ、放送大学の教授に「これは余計です」と注意されました。管理職試験の面接でもこの問題に触れ、「ぜひ関わっていきたい」と話した際には、面接官に鼻で笑われ、不合格となりました。現場の肌感覚と行政の感覚の違いというか、むしろ場にそぐわない話題だったのでしょう。

当時、県内の教師の年齢別分布では、50代が52%を占めていました。これは非常に高齢化した学校の現状を示しています。年齢が下がるにつれて教員の数が減っている状況で、学校全体の動きが鈍くなる一方で、安定的な学級経営が可能になるという利点もあります。当時、私も50歳手前でしたが、勤務していた学校では最年少という年齢構成でした。体育も情報教育も研究も大変でした。

その後、別の学校に転勤した際には、私は最高年齢の職員となりました。その学校で若い職員への知識や経験の伝承があまり感じられず、結果として伝承の機会が失われつつあることを実感しました。

一方で、大都市の学校では年齢構成が「砂時計型」となっており、50代と20代が多く、30代や40代が少ないという状況でした。これにより、学級経営や学校経営で問題が増えてきたことも報告されています。実際、大阪での学力問題が話題になっていたのですが、10年度には聞かなくなっていきます。当県でも同様の問題が起こることは明白でしたが、私が研修などで話をするたびに無視され続けました。やはり、場にそぐわない話題だったのでしょう。

組体操の事故とその違和感

さて、本題の組体操の話に戻ります。あるとき、本校に大阪から若い先生が転任してきました。その先生に組体操の事故について尋ねたところ、驚くべき答えが返ってきました。

「大阪では、組体操の事故がそんなに多いのですか?」

「毎年、どこかで起きていますよ。僕がいた前の学校でも、目の前で事故が起きて、どうしようかと思いましたよ。」

「どんな事故ですか?」

「毎年、タワーを作り、上にいる子が倒れて下でみんなが受け止めるということをしていました。しかし、倒れた瞬間、受け止める側の子どもたちが怖くなって手を引っ込めてしまい、その結果、倒れた子が地面に落ちたのです。その子を見たときは足がすくんで何もできませんでした。慌てて救急車を呼んだのですが、幸いにも子どもに大きな怪我はありませんでした。」

この話を聞いて私は呆れてしまいました。子どもたちが説明だけで適切に受け止められるはずがないのに、それを見過ごしてしまうとは。大阪の学校では、指導のポイントがしっかりと継承されていないのだと感じました。大規模なピラミッドも、適切な指導が行われていないために崩れるのではないかと思います。

私が組体操を指導していたとき、一番苦労したのは全員に倒立ができるようにすることでした。倒立には肩入れと呼ばれる、肘と肩をロックする感覚を体得させる必要があります。この方法は、森末慎二が原作の漫画『ガンバ!Fly high』にしっかりと描かれています。

この基本的な技術を習得させないと、腕だけで支えようとしてすぐに崩れてしまいます。これがピラミッド崩壊の主な原因だと考えます。しかし、今ではこうした基礎技術の伝承機会が減少し、逆立ちさせること自体が危険とされ、避けられているのかもしれません。

安全面でも、大技を行う際には先生が周囲で補助するのが当たり前だと思っていましたが、大阪から来た先生によると、彼らは全体を見ているだけで、個別の補助ができていないとのことでした。これでは、危険が生じたときに適切な対応ができません。

結論として、組体操問題は、組体操そのものに問題があるのではなく、適切に指導できる先生が不足しているという、制度上の問題だと考えています。そして、大事なことが伝承されていかなったことも問題です。

これを県がしている一斉の研修などでカバーするのは難しいでしょう。



私は県の研修を受けるたび、A4で数枚のレポートとして感想を出していました。これ、批判だと思われて管理職試験に落とされていたのでしょう。

抹殺されたと思っていた私のアイディアですが、今年、中堅と若手を組み合わせるという研修が始まりました。6年前に提出していたレポートのアイディアですね。誰もが思うことにようやく始めたのでしょう。

次回、そのレポートを掲載します。


いいなと思ったら応援しよう!