依存症

どこにでもある話。だから僕は誰にも言えないでいる。いまを壊したくないから言えないでいる。口にした瞬間から世界が変わってしまうから。

シングルマザーの家に生まれた。故に貧乏であった。だが普通に生活するのには困らなかった。自分のために頑張ってくれる母を見てなにか自分にできることはないかと小さいながらに考えた。母は自分が好きだった。自分は母の笑顔が好きだった。だから母を笑顔にするため努力を積み重ねた。学校で花丸「よく頑張ったね」苦手な漢字テストで満点「すごいじゃん!」得意の算数で全部満点「さすがうちの子!」小4になって理科と社会が追加された。社会で全て暗記「やっぱ天才だわ~」成績オールファイブ「東大受かるてw」漢字テスト5回連続満点「ふ~ん…」苦手な国語で96点「なんで100じゃないの」二年間成績オールファイブ「良かったね」全教科満点「……」

勉強だけじゃダメと知った。スポーツをやってみるとサッカーにドはまりした。小さなクラブだからすぐレギュラーになれた。大した結果を出せた訳ではなかったが練習の話を笑顔でたくさん聞いてくれた。最初は応援に来てくれたし、お弁当も作ってくれた。いまではにぎらされる500円「今日練習なの?」

心も綺麗だとよりよいと思った。みんなの憧れで尊敬の的になった。学校のだれもが知っている存在になった。最初は周りに得意気で、親バカになった。だがそれもいつしか当たり前になり、その先はもうわかりますよね?生徒会長当選したよ「…そう」

何をしても最初だけ。何をしても笑顔はどこ?どれだけ完璧を求めてもたどり着けない。じゃあ自分はなんのために生きて、なんのために暮らしてるの?わからない。なにもかもがわからない。私の生きてる意味は何?価値は何?そんな時に出会ったネッ友が教えてくれた。自分は母に依存しているのだと。それを知ったところでどうすればいいのだろうか。わからない。

日本一の高校に入学した。みんな東大へ行くような学校だった。いつしか勉強が追い付かなくなり、それと同時に母の更年期が来て、母は精神が不安定になった。家庭状況は荒れた。母は自分に当たるようになった。叩かれるのなんて日常茶飯事。ご飯だって自分で作った。母のためが自分のためになっていたサッカーだけが唯一の救いだった。なにか賞を貰えるわけではなかったが、サッカーをやってる時間だけは全てを忘れられた。

学校の成績は落ちるところまで落ちた。母と学校に呼ばれ、いろんな先生に進級が危ないと言われた。家に帰ると母に平手打ちされた。こんなことは慣れていた。慣れている自分が怖かった。その後に酷い罵声を浴びせられた。ああ、またいつもの事かと思っていた。ただひとつ、ささった言葉があった。
「どうせ何もできない出来損ないのただのゴミだ!大した結果も出せない。そんなのならサッカーなんかやめてしまえ!!」

これできれいさっぱり全部やめるから。全部、ね。今までありがとね、お母さん。


 あとがき
こんにちは、こんばんは。今回の話は大分暗めでした。実はこれ半分ノンフィクションで、私の友人の話を元に書いています。もちろんフィクションなので私の友人は生きてますし、東大に行くような高校にも行ってないです!最終的にこの語り手の子は自ら命をたってしまうんですけど、最期にまでありがとね、と言ってしまうほど母に依存しているんです。だんだん自分を見てくれなくなる母とどうしても大好きな、たったひとりの母の眼中に入りたい子供の話です。どろどろな話ですけどこういう家庭もある、とわかっていただけたらなと思います。それではさよならっ

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