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コバ磨き(磨きコバ仕立て)とは〜革職人への道

革製品を製作する上で、まず皆さんが「どうやっているんだろう?」と疑問に思う工程が「コバ磨き」だと思います。
コバ磨きとは、革の切り口(断面)を整えて磨き仕上げする技法です。僕は勝手に「磨きコバ仕立て」と言っていますが、「コバ仕立て」、「切り身仕立て」など色んな総称があります。

革製品の仕立てには大きく分けて2種類があります。

①コバ磨き ※今回説明させて頂く内容です。
革の切り口(断面)を削って凹凸を整えて、磨き剤を用いて磨き仕上げする方法。面が滑らかになるまで削りと磨きを繰り返して仕上げる事により、美しく耐久性のあるコバ面に仕上がります。

②ヘリ返し
製品の完成サイズよりも大きめに革を裁断し、そのヘリを薄く漉き加工を施して内側に織り込んで仕立てていく方法です。薄く仕立てる場合や、革以外の素材を併せて仕立てる場合にコバ磨きを取り入れられない場合などに使用する方法。綺麗に仕立てるにはそれなりの技術が必要です。

コバ磨き

先ずは下の写真をご覧ください。
上のパーツがコバ磨きを終えたもの、下のパーツがコバ磨き前のものです。
※素材や磨き剤などの詳細は後ほどまとめて記載します。

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このように磨き仕上げする事で毛羽立ちがなくなり滑らかな断面に、そして程よくツヤが出ている事がわかります。これがコバ磨きです。

今回の素材:牛ヌメ革・サドルレザーのブラック(芯通し)
※ヌメ革とは、ベジタブルタンニンなめしレザーの事です。
今回の磨き剤:CMC(独自のブレンド)

当然、一度の磨きで完成とはなりません。仕立てのレベルをどのレベル(仕上がりどうこうよりもとりあえず回数をこなしてOKとするのか、仕上がり状況を見ながらOKとするのか)に設定するかにもよりますが、一般的には削りと磨きを何度か繰り返して滑らかなコバ面になるように仕上げて行きます。

既にコバ磨きをした事がある方はわかると思いますが、1度目の磨きでは表面がカサついたり、時間が経つとヒビ割れたりといった事が起こりやすいです。磨き剤に何を用いるかでも変わりますが、CMCの場合はこの感じが強く現れると思います。※磨き剤にトコノールを使用する場合は、CMCよりもしっとりと仕上がるのでカサつきは控えめだと思います。

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革は、部位によって繊維が引き締まっているところ、緩いところが存在します。
では、コバ磨きするにはどちらが良いのか???
それは断然、繊維が引き締まっている方が磨きやすいです。繊維が引き締まっていれば繊維の毛羽立ちの比率が低く整えやすく、緩ければ毛羽立ちの比率が高いので、整えるのに時間がかかります。
パーツ取りの際には、そういった繊維質の状態を確認しながら繊維質が荒すぎるところは省くトリミング能力も必要です。銀面(革の表面)と繊維質が2層に分かれてしまってまとまらない、、、なんてこともあると思います。そういった場合は、通常は整えるのが難しいので、必要以上に攻め込むのはやめましょう〜笑

コバ磨きのポイント

・コバ面をヤスリがけでしっかりと整える。
コバ面の余分な角はヘリ落として落とします。そのあとに滑らかなRをイメージしながらヤスリがけで整えて行きます。貼り合わせパーツは特に貼り合わせた接着層が目立ってしまう事があります。出来るだけ凹凸が残らないようにヤスリがけ(荒目→細目の順)で整えましょう。

・磨きは一度で仕上げようとしない。
先にも書きましたが、部位によって繊維質の状態にはバラツキがあります。繊維の状態、磨き剤の浸透状況によって仕上げにも必ずバラツキが出ます。一回めの磨きは様子を見ながら磨き、そこからヤスリがけで削り出して2回目の磨きをするというように、徐々に仕上げていくと良いと思います。

・磨きを慌てない。
磨き剤はしっかりと浸透させる事が大事です。表面だけが固まってその下が緩いと感じる事がある場合は、浸透する前に磨いてしまっている可能性があります。繊維質にしっかりと浸透した状態を作ってから磨き出してみてください。磨き剤を塗布してから、磨く前に指でなぞる感じでコバ面を押さえるだけでも変わります。
※押さえすぎて染み込んだ磨き剤がはみ出て銀面を汚してしまわないように気をつけてください。

・素材によって磨き剤も使い分ける
磨き剤も今は色々あります。僕が始めた当初はCMCしかありませんでした。のちにトコノールが発売されましたが、この2種類くらいしかありませんでした。笑
現在では、これら以外にもCMC成分を既に使える状態にしたトコフィニッシュなど数種類の磨き剤が存在します。近年、クラフト社から発売された「トコプロ」はヌメ革だけではなく、クロームレザーにも使えるという優れ物です。
何を言いたいかというと〜
素材によって磨き剤も調整してみてください。通常はヌメ革をCMCで磨いているとしても、違うヌメ革だと仕上がりにくかったり、いつもと違ったりという事が起こります。これは技術面というより、素材と磨き剤の相性の部分です。技術では何とも出来ない事もあります。そういった場合は、他の磨き剤で試してみてください。マッチする磨き剤があると思いますし、素材によって磨き方を変える事も綺麗に仕上げるポイントです。

・ヤスリがけを滞りなく
1度仕上げたコバ面にヤスリがけをしてまた面を荒らすのはもったいないと感じてしまうかもしれません。しかし、ヒビ割れやカサつきのないコバ面に仕上げていくには仕方がありません。磨き剤と磨きによって引き締めたコバ面は、1回ではまだ完全ではありません。荒く仕上がっていると思ってください。その荒さをヤスリがけで細かくしていくのです。繊維の毛羽立ちを荒い状態から細かい状態へと。繊維の毛羽立ちが細かくなればなるほど、密になりコバ面もより滑らかに仕上がっていくイメージです。1度仕上げたコバ面を削ぎ落とすのはもったいない行為ですが、思い切って削り、また整えて行きましょう!

コバ磨きで使用する道具
磨き剤:CMC、トコフィニッシュ、トコノール、トコプロ
磨き工具:ウッドスリッカー、帆布、角を押さえるヘラなど

インスタグラムでは、磨き工程のライブ配信や動画もアップしています。
ぜひ、インスタグラムもご覧頂ければと思います。

それでは是非、試してみてください。
ご意見やご質問があればお気軽にご連絡くださいませ。

革職人・宮崎泰二

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