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『青天を衝け』第12回「栄一の旅立ち」(2021年5月2日放送 NHK BSP 18:00-18:45 総合20:00-20:45)

「俺はどんなことがあっても百姓の分を守る。が、お前はお前の道を行け」と栄一が家を出て志を遂げることを許す父・市郎右衛門(小林薫)。渋沢「中の家」の女衆は父がなんで栄一を止めてくれないのか訝るが、母のゑい(和久井映見)は、「実はとっさまも若い頃はお武家様になりたかった、だから根っこのところで栄一の気持ちがわかってしまったのかもしれね」という。ただ、父自身は「中の家」に婿入りするとき、才覚で身を立てることのできる百姓のほうがよほどやりがいがあると踏ん切りを付けていたのであった。そして、確かにその市郎右衛門が婿に入った「中の家」は再興し、栄一が焼き討ち計画のために百六十両以上の金をくすねても、また京へ向かう際にポンと当座のお金を渡せるほどに成長させていた。5月1日放映のブラタモリ#177では血洗島全体での年間売上高は今の貨幣価値に換算して10億円をくだらなかったと述べられていたのだから、その中心的な豪農であった渋沢家は相当なお金持ちであったことは間違いなかろう。

栄一は自分の味方をしてくれた妻の千代(橋本愛)に礼を言う。その栄一に「ひとつだけお願いがございます。うたを抱いてやっていただけませんか」という千代。しかし、それを無視する栄一であった。

そして、栄一と喜作は再び江戸に。そこで待ち受けていたのは平岡円四郎(堤真一)。円四郎は有意の人材を川村恵十郎(波岡一喜)に探らせていたのだった(前回参照)。「百姓だろうが商人だろうが立派な志をもつものはいくらでもいる。それが身分だからと志をはたせないのならば、そんなこの世はぶっ潰さねばならない」と円四郎の前で啖呵を切る栄一。「こりゃおかしれえや」と面白がる円四郎は、栄一たちに自分が仕えている殿様への仕官を勧め、自分は一橋家家臣であることを告げる。一橋家への仕官と聞いて驚く栄一と喜作であったが……。

一方、円四郎は帰宅するなり玄関先で妻のやす(木村佳乃)に「あの無謀っぷりじゃきっと長生きはしねぇだろうなぁ」と独りごちる。奥から外国奉行に復帰した川路聖謨(平田満)の「おめぇこそ気をつけな」の声。「薩摩・長州が馬鹿やったせいで毎日外国から袋だたきだったぜ」という川路は、さらに「水戸の過激派たちが慶喜の弱腰が円四郎の入れ知恵によるものだと勘ぐってつけ狙っている」と注意喚起、続けて「斉昭や東湖が生み出した攘夷思想が長い時が経つうちに変異してとんでもない流行病(はやりやまい)になっちまった気がする」と。やはりウィルスですか、攘夷思想は……。

赤城おろしが吹き始め、攘夷決行のときが近づいてきていた血洗島に長七郎が帰還。長七郎は惇忠、栄一たちの計画を暴挙とし、「このような子供だましは即刻、やめるべきだ」と説得する。実際に京で長七郎に何があったのかはわからないが、この長七郎の転向は非常に興味深い(渋沢の自伝を読んだときから疑問は解けていないが、新資料も出ないだろう)。結局、真田範之助(板橋駿谷)は栄一たちと袂を分かって出ていき、焼き討ちは取りやめ。神託は燃やされて灰に……。そして、自宅に戻った栄一は、自分が信じていた道が間違っていたことを千代に告げ、泣きながらはじめてうたを抱くのだった。

栄一は、市郎右衛門に喜作とこの村を出て京へ行くという。市郎右衛門は「ものの道理だけは踏み外さず、誠を貫け」と。

ラストは今回初登場の慶喜(草彅剛)。慶喜も京へ。イギリスから購入した蒸気船・順道丸に乗船し、円四郎ももちろん同道。江戸には美賀君(川栄李奈)、やすが残される。血洗島では喜作と(成海璃子)のお別れシーンも。

いよいよ京へ旅立つ栄一と喜作。それを見送る血洗島の女たち。父は黙々と藍染めに精を出す。平九郎(岡田健史)が長七郎に「次は俺も行かせてくれ」と言うが、長七郎は「狐がいたのだ」と謎の言葉。

ここで家康(北大路欣也)登場。第60回 大河ドラマ『青天を衝け』もこの第12回放送分で青春篇が完結。次回から舞台は京へと告げる。はたして幕末の京ではどんな出来事が待ち構えているのか……。栄一と喜作も京の狐に出会うことになるのだろうか?

注)今回記事のトップに掲げた大きな樹は、谷中霊園の栄一の墓の目の前のもの。血洗島シーンで印象的だった大欅を彷彿とさせる。





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