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福島原発事故と六本木ヒルズ回転扉死亡事故

かなり長い(11700字)2008年の投稿文ですが、2011年の福島第一原子力発電所事故の真相を知るためには必読のものと考えます。合わせて、新型コロナウイルス対策の政治的失敗の理由も理解して頂けるものと確信いたします。(URLは当時のもの)
 
英科学者、福島原発事故を分析 「チェルノブイリと違う」―東日本大震災10年
2021年03月11日20時33分 時事通信社
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021031100821&g=int
 原発規制をめぐっては、同カレッジのローレンス・ウィリアムズ教授が「当時の原子力安全規制当局が独立していなかったことが事故の主因」と結論付けた。その上で「独立こそが実効性ある原子力安全規制の基礎であり、それを忘れたから危機に陥った」と批判した。
<引用終了>
 
菅直人元首相の当時の対応は間違っていなかった。
しかし、失敗学の畑村洋太郎氏を政府の東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会委員長に任命した(されてしまった)ことが、今日のFukushimaの「現状」につながっていると言っても過言ではないことを理解してください。
 
※村中=中村
 
<転載開始> 論談TV
 
マイクロバスの件で村中様へ
 
( 平成20年01月21日 )
投稿者: 巷のリスクアナリスト  
 村中 様

懇切丁寧な投稿を有難うございます。 どうやら、私と村中様が同一人物と疑う人がいて、私が明確に否定しても信用されないようです。

いくら説明してもわからない ( わかろうともしない ) 輩がおおぜいいても、村中様のように、同一人物と疑われるくらいにリスクマネージメントに関する考えを共有できる方がおられることは嬉しいことです。

六本木ヒルズの自動回転ドアの事故に関しても、ああいった輩は 「 子供に対する親の躾が悪い 」 と言い張るでしょう。 私の分析は村中様のお考えと全く同じで、回転ドアの設計 ( ツーウィングタイプ、二枚羽根型 ) に原因があると思っています。

六本木ヒルズの事故は2004年3月26日に起きましたが、実は、寸前 ( 同じ月 ) の2004年3月4日に、ドイツのケルン ・ ボン空港で、1歳8ヶ月の男児が全く同じタイプの自動回転ドアに頭を挟まれて死亡しています。

同じ回転ドアでは、設置以来、14件の事故が起きていて、2002年には1歳7ヶ月の女児が腕を挟まれて骨折していていました。

二枚羽根型がなぜ事故を誘発するかについてはここでは説明を割愛しますが、ドアを製造したメーカーは、ドイツ国民の批判を浴びて直後に倒産しています。

この事故は六本木ヒルズの回転ドアの日本のメーカーや森ビル、行政も知っているはずです。 ですが、マスコミは報じたでしょうか。 メーカーはつぶれたでしょうか。 ドイツと日本の安全民度の違いはあまりに大きいのではないでしょうか。

六本木の事故はドイツの事故から間もない時期に起きましたが、日本の業界やマスコミがインターネットなどに敏感であれば、もしかしたら何らかの防止策をとれたかも知れません。

明石市の歩道橋事故に関しても全くおっしゃる通りです。 緩やかなスロープは人間の潜在意識に微妙に影響します。

逆のケースですが、東名高速で横浜から東京に向かう、海老名バス停を過ぎた辺りで、特に理由がないのに常時、渋滞する箇所があります。この場所はドライバーも気付かないほど緩やかな上り坂で、ついついアクセルを踏み込まないための減速が渋滞の原因のようです。

マイクロバスが高速道路ではなく片側1車線の市道を走っていたら、とするアナロジーもさすがですね。 ともかくも、どこにでもある、誰もがやりかねないエラーが即、人の死亡に結びつくような設計が問題なのです。

私は、設計で何もかもが解決するとは言っていません。 メーカーも行政もユーザーも、すべての関係者が人間の行動や限界、エラーについて真剣に考え、知識を共有することが重要なのです。

日本のメーカーや行政がなぜ人間のエラーについて考えないのか、なぜ設計の欠陥をひた隠しにするのか、どうやら、この場の頭の固い輩に代表される、国民の安全意識の低さと、生命の軽視に原因があるようです。

村中様はこの投稿を理解していただけると思いますが、ますます 「 同一人物の一人芝居 」 と疑われるかも知れません。 下衆の勘繰りは放っておくことにしましょう。 ですが、トヨタさんをはじめ日本の産業界には何かを感じていただきたいものです。
<転載終了>
ドイツの回転扉死亡事故の責任がメーカーにあるのは当然です。 しかしながら六本木ヒルズで起きた回転扉による死亡事故は事情がかなり違うと考えております。

その理由は、死亡事故が起きる前に30件以上の挟まれ事故が起きていたからです。 六本木ヒルズからは遠く離れた琉球新聞のこの報道をご覧ください。

六本木ヒルズで六歳の男児が、自動回転扉に挟まれて死亡した事故で、警視庁は三十日、業務上過失致死容疑で、ビルを管理する森ビルと回転扉のメーカーを家宅捜索し関係書類を押収した。

事故自体がショッキングだったが、その後明らかにされた事実は、さらに大きな衝撃だった。まず事故はそれ以前からあったということだ。オープン以来、ほかにも三十二件の回転扉の事故があり、うち十件が救急車で搬送された。今回事故と同型の回転扉では十二件で七件は八歳までの子どもが挟まれ、三件が病院に運ばれている。

この事実には驚かされた。救急車で搬送されるような事故は、日常的にあるものではない。
どうみても異常事態と受け止めるのが一般的だ。それを一年間も放置した。この対応はどうしても理解できない。その先にどのような結果が待っているかは、容易に想像できるはずだ。
<引用終了>

運営本部長でもあった森ビルの森稔社長は 「 事故を予見できなかった 」 とされ、起訴さえもされませんでした。

JR西日本の脱線事故やエキスポランドのジェットコースター死亡事故の例を取り上げるまでもなく、事故や不祥事が起きると社長の引責辞任を迫るマスコミですが、この事件ではなぜかそうした動きはありませんでした。

巷のリスクアナリスト様もご存知であると思いますが、マスコミも所詮は営利企業であり、決して真実だけを追究しているのではないのです。 数多くの 「 森ビル 」 には多くの政府系の財団法人や社団法人がオフィスを構えているようです。 手心が加えられたと勘ぐりたくもなります。

話を戻しますが、六本木ヒルズで起きた回転扉死亡事故の責任の大部分は、森ビル側にあるものと私は考えています。 その理由は琉球新聞が報じているように、多数の事故が発生していたにも関わらず、回転扉を作動し続けたからです。

確かに欠陥品を製造したのはメーカーですが、欠陥品であることが分かっている回転扉を作動させるか、させないかを判断するのは森ビルです。 ブレーキが効かないのを知っていながら自動車を走らせ続け、死亡事故を起こすことと同じなのです。

JR西日本の脱線事故は安全より 「 経済運行 」 を優先させた企業の体質が背景にあると言われています。 全くその通りであると思いますが、当時の森ビルも同じ体質であったものと勘案されます。 子どもの安全より、空調の効率という経済性を優先させたのですから。

機会があれば詳しく書きたいと思いますが、明石市の花火大会歩道橋事故と六本木ヒルズ回転扉死亡事故の判決は間違っている、私はそのように考えております。

>ドイツと日本の安全民度の違いはあまりに大きいのではないでしょうか。

確かに違いますね。 スポーツ選手がドイツのベンツを選ぶ理由は事故時の安全性の違いであると聞いています。

機械類も日本製とドイツ製では安全に対する配慮が違います。 たとえば木工用のバンドソー ( 帯ノコ ) ですが、日本製はスイッチがむき出しですが、ドイツや欧州製の機械にはスイッチにカバーが付いています。

つまり、最初の動作でカバーを開けないと、スイッチを入れるという次の動作には移れないような仕組みになっているのです。 何かの拍子に危険な機械のスイッチを入れてしまうことを防ぐためのちょっとした工夫なのです。

このように欧米と日本では安全に関する国民の意識が大きく違いますが、違いの原因の一つはこのようなところにも表顕しています。

木工やリフォームのチャンピオンを決めるというテレビ番組がありますが、「 安全メガネ 」 をかけて作業をしている人は皆無です。 欧米では全く考えられないことでしょう。 なぜならば丸ノコなどの危険な機械類のパンフレットには必ず 「 安全メガネ 」 をかけるよう警告表示が記されているからです。

もちろん自宅や作業場でメガネをかけないで目を負傷したとしても、それは 「 自己責任 」 と言えるでしょう。 しかしながら公器であるテレビは違います。 警告に従った作業を行なわせる義務があると言えるのです。

本来、安全思想を啓蒙すべきマスコミがこのような状態ですから、巷のリスクアナリスト様が言われるように日本人の安全民度が高まらないのは当然なのです。

>日本のメーカーや行政がなぜ人間のエラーについて考えないのか、なぜ設計の欠陥をひた隠しにするのか、どうやら、この場の頭の固い輩に代表される、国民の安全意識の低さと、生命の軽視に原因があるようです。

エキスポランドのジェットコースター死亡事故や六本木ヒルズ回転扉死亡事故、そしてシンドラー社のエレベーター死亡事故には共通するところがあります。

安全指導を行なっている団体が、同じ 「 財団法人 日本建設設備・昇降機センター 」 であるということです。
http://www.beec.or.jp/

<設立目的>
建築基準法第12条第3項に基づく同施行規則第4条の20に規定する登録講習実施機関として、建築設備検査資格者及び昇降機検査資格者の育成、検査実務の標準化、定期報告の推進並びに建築設備及び昇降機・遊戯施設の安全性に関する必要施策の調査、研究及び普及を図り、国民生活の安全に寄与することを目的とした団体です。

このように記されていますが、3件の死亡事故が示すように、国民生活の安全には寄与していないのは明らかです。

公務員改革や独立行政法人改革が叫ばれていますが、高度化、複雑化された今日の社会ではこのような団体の監督指導は既に役に立たなくなっているのです。 官公庁や業界の指導に従っているだけでは必ず失敗する、これが私の持論です。

>マイクロバスが高速道路ではなく片側1車線の市道を走っていたら、とするアナロジーもさすがですね。 ともかくも、どこにでもある、誰もがやりかねないエラーが即、人の死亡に結びつくような設計が問題なのです。

日本は左側通行ですから対向車にはねられることはありません。 失礼しました。 それでも後続のバイクにはねられたり、山道で谷底へ転落したりすることは考えられます。

「 誰もがやりかねないエラーが即、人の死亡に結びつくような設計が問題なのです。」
竹村健一氏は 「 日本の常識は世界の非常識 」 と発言されますが、自動車業界に限らず 「 エラーが人の死亡に結びつかない設計思想 」 が日本の常識になっていくことを強く望むものです。
 
巷のリスクアナリスト様へ
 
( 平成20年01月23日 )
投稿者: 村中  

 巷のリスクアナリスト様とこの論壇の場で 「 討論 」 することが楽しくなってきました。 「 頻繁には投稿できない 」 とした自らを痛く恥じます。

巷のリスクアナリスト様は、私以上に日本全体のリスクマネージメントを考えておられます。 感服いたします。

>ドイツと日本の安全民度の違いはあまりに大きいのではないでしょうか。

リスクマネージメントに関して論じたかったのですが、その前に論壇の読者にもお知らせしなくてはならない情報を提供いたします。

>森ビルは事後に、森社長の肝いりで、失敗学で有名な畑中洋太郎氏を中心に安全チームをつくり、安全のための会合に場所を提供するなどの活動を行っています。

>チームのメンバーの顔ぶれを見ると、過去に事故を起こした企業で 「 火消し役 」 で貢献した人物が多く含まれています。


巷のリスクアナリスト様のこの情報には驚嘆しました。 まさに点と点が線で結ばれたという思いです。 事故後のヤフーの掲示板では森ビル擁護派と呼ばれた人達が異常な理論を展開していました。 畑中教授の持論も登場しています。

日経アーキテクチュアの中で東京大学名誉教授の畑村洋太郎教授が、「 回転ドアはガイドラインどおりに使ってもまた死亡事故は起こる 」 と言い切っていました。 それほど危険な機械だということでしょう。
http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mmHYPERLINK "http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=NW&action=m&board=552019599&tid=obbkdclza5ra5ka5ba2sebehbbbe0k4bbv8n&sid=552019599&mid=5081"&HYPERLINK "http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=NW&action=m&board=552019599&tid=obbkdclza5ra5ka5ba2sebehbbbe0k4bbv8n&sid=552019599&mid=5081"action=mHYPERLINK "http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=NW&action=m&board=552019599&tid=obbkdclza5ra5ka5ba2sebehbbbe0k4bbv8n&sid=552019599&mid=5081"&HYPERLINK "http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=NW&action=m&board=552019599&tid=obbkdclza5ra5ka5ba2sebehbbbe0k4bbv8n&sid=552019599&mid=5081"


あの子供は確実に、自分から挟まっていってるのだから。
そんな子供には来て欲しくはないでしょう、明らかに。

父親も母親もすっかり被害者になりきってますね。 示談で済ませ裁判へ進めなかったのは自分たちの 「 過失 」 が白日の下にさらされるのを懸念したからでしょうね。


回転ドアの脇から
頭突っ込むような行為がマナーあるか?


ヒルズは山猿親子の遊び場じゃないのだよ。


私は、回転扉の事故は、親がしっかり子供を見ていれば、未然に防げたはずだと思う。した
がって、森ビル等の管理者を責めるのは間違っている。


客という有意な立場を悪用して自分の不注意を顧みず会社の責任にするのは間違いです。
三波春男がお客様は神様ですと必要以上に客をヨイショし、甘やかした結果、客と言うだけで金払う以外に能がないクセにどこか自分が偉いと勘違いをしてしまっているんですよね。

それは子供の不注意でです。
会社は関係ありません。

子供が勝手に事故しておいてビルの管理者に責任を擦り付けるのは道理が違うよ。
悪くなくても大きいものには責任転嫁されるから気の毒だ。

死んだ子の親は、「うちの子の不注意で皆様にご迷惑をおかけして申し訳ありません。」と謝るべきだ。どうせ金目当てなんだろ。

親を責めるつもりはない。
しかし、ビル管理者を責めるのはやめて欲しい。
そういう親を外から見ていると滑稽だ。

とにかく、森ビル側が大金を払う。
親は、示談でお金をうけとるだけ。
この場合、親側が一方的な被害者、ってことはありえないと思うけど、現実はこう。

まあ、親としては、大して金かけてないうちに、殺されて、ラッキー!
賠償金ふんだくって、
新たな子作り!が一番の解決法でしょう。

親は金で解決してしまうだろうが、子供は戻らない。
そんな親のところに生まれたのが不幸なんだよ。

確かに、森ビル側の過失は、馬鹿な人間の数を読み違えていた事でしょう。

閉まりかけのわずかな隙間に頭から無理やり突っ込めばそりゃクビチョンパにもなるでしょう。
近隣の人達は異口同音「あんな大きなドアに頭を挟むなんて、相当な無理な入り方をしたんでしょうね」と。

もちろんメーカーやビル側にも責任はあるかもしれないけれど
マナーの知らない子供に育てた親が被害者顔しているのは、なんだかな~。

自分の行動に責任がもてないなら、もしくは親もとれないなら、外出はひかえて欲しい。多大な迷惑ですから。
何故、わざわざ挟まりにいったのか。
そういう子供特有の心理を探らない限り、機械のせいにしたって同じ事の繰り返し。

連日連夜、懲りもせずに地方からやってくる場違いな親子連れやカップルが来てますよ。
事件の影響なんて微塵も感じられませんよ。

あの子の父親すんげー貧乏臭そうな感じだったから、思わぬ臨時収入でウホウホか?誰も知らない場所へ移り住んで家を建てたり車買ったり贅沢三昧したりして、、、、、。ありえるな、、、あの親のように、、、、。(W
子供も浮かばれんだろうね。


論壇の読者の方はどう思われたでしょう。 私には 「 異常 」 としか思えないのですが。

これは5,000を超える投稿のほんの一部です。 この掲示板で森ビル擁護派と呼ばれた人は、このように 「 親が悪い 」 「 森ビルは責任を認め、示談も済んでいる ( だからこれ以上意見しても無駄だ )」 というような投稿を繰り返していました。

森ビル擁護派と呼ばれた人達の当時のモチベーションの源泉が見えてきたような気がします。 もちろん、森ビルから雇われた人達が、情報操作の目的で異常投稿を繰り返していたと決め付けるものではありません。 その証拠もありません。

しかし、です。 巷のリスクアナリスト様から教えていただいた 「 火消し役 」 が本当に存在していたとするならば、掲示板に限らず、当時情報操作の一翼を担っていたことは容易に推察されます。

リスクマネージメントとは 「 火消し役 」 をつくることではありません。 後日書きたいと思いますが 「 災い転じて福となる 」 ようにすることも大事なことなのです。

>森社長が世間に対して安全推進に積極的な姿勢をアピールしたいのでしょうが、今になって本音がわかりました。 畑中氏の失敗学とは 「 失敗した後で有耶無耶にするための学問 」 なのでしょうか。

私も失敗学は間違っているという論者です。 失敗に学ぶのは当たり前であり、リスクアナリスト様が以前に書かれた、プロアクティブ 「 攻めの発想 」こそが安全対策の正道です。

ノンフィクション作家の柳田邦男氏は 「 日本病 」 についてこのように発言しています。 

◇目の前で起きた「コトの重大性」に咄嗟(とっさ)に気付かない。「これは大変なことになるかもしれない」と見抜く職業的直感が育てられていない。

◇ヒューマンファクターの本質が理解されていない。処罰によってミスは防げない。人はストレスを抱えるとミスを誘発され易いだから、ミスがあっても事故に結びつかない、バックアップシステムやフェールセーフシステムが重要。

◇面子や責任を恐れて、対応が遅れる。組織防衛と保身に凝り固まった対応をしてしまう。

表参道ヒルズへの影響も考えたのでしょう。まさに当時の森ビルは組織防衛と保身に凝り固まっていたものと推察されます。

今日は六本木ヒルズでの回転扉死亡事故後の、掲示板の内容をお知らせするために投稿しました。

森ビルの事故後の対応をいくら考察しても亡くなった子どもが帰ってくるわけではありませんが、事故が起きた際の企業の対応例を知ることは大切であると私は考えます。

森ビルは 「 火消し 」 に成功したのでしょうが、この事故後に起きたJR西日本の脱線事故を受け、世論の安全管理に関する目は厳しさを増しています。 「 火消し 」 思想はもう通用しないでしょう。

リスクアナリスト様との意見交換で、リスクマネージメントの正道を探っていけたら幸いです。


 
エスカレーター事故と増水事故の共通点
 
( 平成20年08月21日 )
投稿者: 村中  

巷のリスクアナリスト様とのリスクマネージメント議論 ( 08年2月11日付 ) にこのように書きました。
http://www.rondan.co.jp/html/mail/0802/080211-11.html

以前に明石市の歩道橋事故の事故調査結果は間違っていると書きました。 医療事故に限らず調査委員会のメンバーに本物のリスクマネージメントが理解されていないのは事実です。

<引用開始>
今年も全国で700もの花火大会が開かれている。どこも資金不足に雑踏対策が重なって、かなりの難事業になりつつある。千葉県の印旛沼花火大会は、毎年30万人を集める行事であったが、今年は中止された。4年前に兵庫県明石市で起きた事故の教訓で警備費が膨らみ、一方で協賛金が集まらない。

「明石市の事故は各地の花火を変えた。どこも警備費を増やし、観客の誘導が綿密になった」以前なら50人で足りた警備員を昨年は299人雇った。
<引用終了>
朝日新聞 天声人語 05年8月7日

私は、この事故で明石市や兵庫県警の責任を追求する動きを知った時から、今日のこの状況を予想していました。 警備業法も改定されると予想していましたが、案の定、中小の警備業者が不利になる法律に改められたようです。

私の指摘が正しかったことが証明されました。 と言うのは明石市の歩道橋事故とまったく同じ原因による事故が、今夏、東京ビックサイトで発生したからです。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080806-OYT1T00517.htm?from=navr

私は、責任者を厳罰に処しても、法律を変えてもこのような事故は決して防ぐことができないと主張して来ましたが、まさに予想通りの結果となりました。 残念でたまりません。

それでも、今回の事故を機に同様な雑踏事故が二度と起きないよう改めて意見していきたいと考えます。

私の主張のポイントは以下の3点です。
◇ 自分本位の身勝手な若者が犯人
事故を引き起こした犯人は 「 我先に 」 と考える観衆です。 11名の尊い命が奪われた明石市の歩道橋事故も、どんなに現場が混雑しようとも、全観衆が 「 小さく前へならへ 」 の状態であれば、将棋倒しも群集雪崩も起きようがありません。

居合わせた市民も証言していますが、後ろから押した非常識な若者がいたからこそ観衆はどんどん前に詰まっていったのです。 それが巨大なパワーとなり群集雪崩が発生したのです。

エスカレーター事故も同じです。 先頭集団がエスカレーターに 「 詰めかけるように乗った 」 と報道されていますが、詰めかけた上に、一段に3~4人も乗った非常識な若者 ( 大人もいたようですが ) が存在したからこそ、重量オーバーにより安全装置が作動したのです。 オリンピックの開会式の行進ではありませんが、ゆっくりと、整然とした入場であれば問題は発生しようがないのです。

◇ 群集心理を知らないと観衆の誘導に失敗する。
観衆は秩序ある集団の中にいれば秩序を守リます。 その反対に、集団が一度無秩序の状態に陥ると、個人は実に身勝手な行動に出るという 「 法則 」 があります。 エスカレーター事故も明石市の歩道橋事故もまさにこの 「 法則 」 通りの雑踏事故なのです。

ところが、ほとんどの警備会社はこの群集心理を甘く見た観衆誘導を行なっています。 つまり、群集は誘導に従ってくれるだろうと甘く考え、誘導に従ってくれなくなった場合の安全対策を用意していないのです。

これでは事故は防げません。 まず、群集は誘導に従ってくれないかもしれないと考えなくてはなりません。

その上で、無秩序化した場合の安全対策をいくつか用意しておくことにより、はじめて安全な観衆誘導は成功するのですが、残念ながら警備会社にはそのノウハウはありません。 これが、雑踏事故が起きる最大の原因なのです。

◇ 災いが起きる原因とは
作家のマーク ・ トウェインの警句です。
「 災いを引き起こすのは知らないことではない。 知らないのに知っていると思いこんでいることである 」

知らないのに知っていると思い込んでいることが、すべての災いを引き起こすと言っても良いでしょう。 明石市の歩道橋事故もエスカレーター事故もそうです。 正しい誘導方法を知らないのに知っていると思い込んでいることが、事故という災いを引き起こしているのです。

昨年行なわれた富士スピードウェイでのF1日本グランプリの運営不手際が集団訴訟に発展してしまったケースも同じです。 正しいイベント運営を知らないのに知っていると思い込んでいたことが原因なのです。
http://www.j-cast.com/2008/02/29017310.html

司法も同じです。 正しい群集警備のやり方を知らないのに知っていると思い込んでいるから 「 警察が悪い 」 という間違った判決を下してしまうのです。

兵庫県警は花火大会歩道橋事故の裁判で現在も係争中ですが、東京ビックサイトを管轄する東京湾岸警察署が、「 エスカレーター事故は雑踏事故であり、非常識な群集を正しく誘導できなかった警備会社と運営会社の責任である 」 という捜査結果を打ち出せば、兵庫県警の冤罪も晴らされることになります。

それだけ、今回のエスカレーター事故の持つ意味合いは大きいものがある、私はそのように考えこの事故の行方を追って行きたいと思います。

ここからは、今夏に連続発生した増水事故の原因を解明し、今後の防止策を提言します。 長くなりますことをお許しください。

ポイントは3点です。

◇ イージス艦事故と同じ 「 見張っていなかたった 」
雷や台風は地震のように突然発生するものではありません。 時間の経過とともに襲ってくるものです。 つまり、地震と違い発生を予見できるものなのです。

私は以前に 「 羽越線脱線事故の事故調査報告は間違っている 」 ( 08年4月5日 ) と書きました。
http://www.rondan.co.jp/html/mail/0804/080407-06.html

<投稿文>

羽越線脱線事故は「天災」か

特急列車が脱線・転覆して乗客5人が死亡した事故で、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は2日、「原因は瞬間風速40メートルほどの局地的な突風で、運転方法に問題はなかった」とする調査報告書を公表した。事故は「天災」であるという側面を印象づけたことになる。

この事故は本当に「天災」なのだろうか。レジャー施設で安全管理の責任者を務めた私には到底そうは思えない。房総沖で起きたイージス艦と漁船の事故原因と同じに思えてならない。突風の予想は「容易ではない」としているが、国交省の観測では、周辺で事故発生の7分前に約37メートルの強風を記録している。荒天時には突風を想定し、国交省や気象庁の観測データから、減速などの取るべき対応を即座に決定していれば、この事故は防ぐことができたのである。

私が勤めたレジャー施設では、起こりうる事故を想定し、気象情報を収集している。目を見開いて周辺を見張っている。事故を起こしたイージス艦やJR東日本は、周辺を見張ることを怠っていたのである。国交省や気象庁が観測したデータが、列車の安全運航にまったく生かされていないことも分かった。この事故は決して「天災」ではないのである。
<終了>

兵庫県で起きた都賀川の増水事故と東京豊島区で起きたマンホール内増水事故で10人の方が無念の死を遂げましたが、この2件の事故もイージス艦事故や羽越線脱線事故同様に、関係者が見張っていなかったことが原因です。 言葉を換えれば警戒が不十分であったことにより多くの被害者が発生したのです。

それでは、誰の警戒が不十分であったのでしょうか。 その答えは安全を管理する組織です。 兵庫の増水事故は兵庫県の防災組織であり、豊島区の事故は東京都の防災組織と現場で作業を行なった会社の防災組織の警戒が不十分であったために多くの尊い命が奪われたのです。

◇ 従来型の警戒態勢の限界
東京で起きたマンホール内増水事故では、気象庁から大雨の注意報が発令された数分後に作業員は増水により流されています。 警報が発令されたのは事故からかなり経ってからです。

この例が示すように、気象庁の注意報に基づく避難行動では災いを防ぐことができないことを、防災に関わるすべての関係者は知るべきなのです。

その上で従来型の警戒態勢に代わるより実効性のある警戒態勢を構築する必要がありますが、そのベースとなるのがディズニー ・ テーマパークで取り入れられている徹底予見型の警戒態勢です。

さらに、台風などの広域に被害をもたらす可能性のある情報はもちろん気象庁から発表される必要がありますが、ゲリラ豪雨など、局地的で予見が難しいものは、民間の気象会社から情報を購入しなければ、増水事故のような現代的災害は決して防ぐことはできないと私は考えます。

従来型の警戒態勢の限界を知り、官民のコラボレーションによる防災態勢が構築されることを強く望みます。

◇ 失敗学の限界
事故が起きると必ず失敗学が登場します。 失敗学は限界に来ているというのが私の見方ですが、私同様に横浜国立大の清水久二名誉教授 は 「 失敗学は国際的に見て時代遅れ 」 と批判されています。
http://www.nrec.sakura.ne.jp/sippai.pdf

<引用開始>
事故から学べ、は正しいか?
「事故から学べ」、は聞こえの良い言葉ですが、発生していない事故や原因が究明されていない事故には無意味です。

失敗学は実験万能主義を助長する
事故災害には必ず明確な原因がある筈だ、という信念は新たな災害を引き起こします。被害者はその因果関係を立証しなければ、訴訟も受け付けてもらえません。問題は安全機能を付加しない段階で、既に不作為の過失が生じているのです。司法の世界でもこれは時代の後戻りです。
失敗学は会社内安全活動の正当化に利用できる、という程度のもので新たな学では決してありません。
<引用終了>

増水災害も雑踏事故も同じです。 「 最悪の事態が起きるかもしれない 」 と、起きうる可能性がある状況を事前に想定し、取り返しのつかない事態に陥らないように早めの安全対策を講じることが大切です。 このことを一言で言え 「 前兆を見逃すな 」 ということでしょう。

失敗から学ぶことを否定するつもりはありませんが、清水名誉教授が説くように、失敗学だけでは今までに発生していない災いは防ぐことはできません。 マーク ・ トウェインの警句のように、経験したことがない事故や災害を 「 知らないのに知っていると思いこんでいる 」 ことになってしまいます。

これからは、失敗学ではなく、災いを予見する学問が求められることでしょう。 マスメディア関係者には失敗学の限界を知り、時代に即した予見型の防災を研究するよう願ってやみません。

最後に、表題のエスカレーター事故と増水事故の共通点を列記します。
◇ 日本社会は、マーク ・ トウェインの警句 「 災いを引き起こすのは知らないことではない。 ( 正しい誘導方法や正しい警戒態勢を ) 知らないのに知っていると思いこんでいることである 」 ということを理解していないために事故が発生した。

◇ ディズニー ・ テーマパークのように失敗しない正しい誘導や、失敗しない正しい警戒態勢を行なっているところから学んでいないために事故が発生した。

長くなりました。私は過去のこの論談目安箱への投稿で 「 長い、簡潔に記せ 」 と読者の方からお叱りを受けたことがあります。

無念の死を遂げる人が日本からいなくなって欲しい、そう思っての投稿です。 ぜひ、お許しいただきたいと思います。
 

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