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明石市の花火大会歩道橋事故の「怪」
神戸新聞より
神戸第2検察審査会が全国初の起訴議決を出した明石歩道橋事故で、元明石署副署長の強制起訴を準備している検察官役の指定弁護士が(2010年3月)25日、関係者に聴取するなど補充捜査する方針を明らかにした。
<中略>
遺族らは、同署が事故当日、現場を記録しようと遠隔操作したビデオカメラのモニター映像や無線の傍受状況の検証▽不明になったとされる録画用ビデオテープの捜査▽当日の110番記録の捜査▽遺族からの事情聴取‐を要望。公判で被告人質問などができる被害者参加制度を活用する方針も伝えた。
<引用終了>
http://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/0002811933.shtml
筆者は、事故が発生した瞬間からこの事故を今日まで追いかけてきました。報道された内容も記録しています。しかしながら、本日の報道を受けこの事故の捜査も「おかしい」と考えるに至りました。
「不明になったとされる録画用ビデオテープの捜査」とはどういうことでしょうか。証拠とすべきビデオテープが、どこかに行ってしまったということなのでしょうか。
当日の現場状況は、テレビの報道でも「映像」として流されました。明石市のホームページにも「事実認定に用いたビデオ」の存在が記されています。
http://www.city.akashi.hyogo.jp/soumu/bousai_ka/h_safety/natsumatsuri_houoku.html
遺族が取り上げているのはこの部分でしょう。
明石市花火大会歩道橋事故における事故調査結果と調査報告書から. -都市災害における調査制度のあり方について
<引用開始>
ア 警察
兵庫県警察本部雑踏事故調査チームによれば、午後4時に全部隊に対する明石署長・副署長および金澤地域官等の指示がなされた(場所は、明石署内と思われる)後、午後4時36分明石署に警備本部を開設、午後5時に大蔵海岸花火大会会場に現地警備本部を開設し全部隊が配備完了したとのことである。なお、近隣のホテル屋上に設置されたカメラが随時歩道橋階段付近を捉えており、その映像は、歩道橋階段下1階の警察官詰め所、明石署および県警本部においてモニター上に映し出され録画もされていた。つまり、現地警備本部のみならず明石署警備本部および県警察本部においても花火開始前から花火終了後本件事故に至るまで本件歩道橋上の混雑が随時映像として映し出されていたにもかかわらず、現地警備本部・明石署警備本部および県警本部は何らの対応もしなかったのである。
<引用終了>
筆者は、事故現場に立ちましたが、「階段付近」に事故現場が含まれるかどうかは微妙であると考えます。たとえ含まれていたとしても、警察にはどうすることもできなかったと判断します。なぜならば、警察には「混雑」が事故につながるという「予見能力」がありません。「混雑」を解消するノウハウも持ち合わせていません。
筆者は、東京ディズニーランドで警察の警備課の方から「雑踏警備」について教えてもらったことがあります。「混雑」が「押し合い、圧し合い」の状態になったらどうするのかという問いに対し、警察は「(警笛をならし)そこの(メガネの)人、押すんじゃない」と拡声器を使い注意する」と語ったことをはっきりと覚えています。
この事故は、警察官がいくら奮闘しても防げなかったと思います。警察が映像として残したビデオは、以前にも惨事になったことがある階段の転倒事故防止のためであり、最初から「混雑」を事故に至らしめないようにする「群衆警備」は、職務外であるととらえていたはずです。(群衆警備上のポイント地点に警察官は配置されていませんでした)
遺族側の方々は、何が何でも警察幹部に責任を負わせようとしています。感情的には理解できなくもありませんが、理性に欠けていると言っても過言ではありません。
さて、表題に「怪」と書きました。この事件の判決は、警備業者、明石市、兵庫県警の三者の量刑の差がないとされましたが、ある疑惑が浮かんできました。
それは、「事故調査委員会も警察も、真犯人は後ろから(朝霧駅側から)押した市民である」ということを知っていたというものです。筆者は、事故の報道を見てすぐに、「お祭り気分の市民が後ろから押した」ことが事故原因であると直感し、当時の岡田市長にも「業者の責任が重大」という文書を送った経緯があります。
遺族の方々は残念ながら「混雑」の意味を理解されていません。どんなに混雑していても誰もが「小さく前にならえ」の状態であれば、秩序は保たれます。
<引用開始>
人々は秩序ある集団の中にいれば秩序を守リます。その反対に、集団が一度無秩序の状態に陥ると、個人は実に身勝手な行動に出ます。筆者は、アトラクションエリアのスーパーバイザーの経験から、この原理原則を理解していました。アトラクションへの走り込みや、将棋倒し事故をも連想させる「人々の危険行為」を何度も見てきたのです。
警察もこの原理原則は知っているはずです。ですから、事故発生後すぐに事故の真因にたどり着いていたのだと推察します。
しかしながら「真犯人は特定できない市民」では、この事故の「決着」にはなりません。警察は明石市や警備会社とは異なり、今でも争っていると聞いていますが、おそらく、職務上の瑕疵はあったとしても、殺人事件の「犯人」ではないことを確信しているのだと思います。
遺族の方々は、真実を求めています。
<引用開始>
この事故がうやむやのまま処理されていまうのではないかと、不安になります。
警察が警察を調べるなんて、自分で自分を調べるようなものではありませんか。
それを、どこまで信用できるのでしょう。
明石市や警備会社にしても同じようなものです。
いろいろな人から話しを聞けば聞くほど、
何を信じたらいいのかわからなくなるばかりです。
<引用終了>
http://www.omoi.jp/documents/tada_seeking_fact.pdf
この事故の「怪しい点」は、誰がどのような「着地点」を設定したのかという点です。警察は「特定されない市民」が犯人ではまずいため、「明石市と業者の責任」としたかったのが、警察に矛先が向かい困惑しているというのが実情でしょう。
事故後に警備業法が改正され、再発防止が進めば遺族の方々も納得するだろうくらいに考えていたのかもしれません。
いずれにしても、これ以上警察の責任を追及しても、遺族も市民も何も得るものはありません。現在の「赤信号 みんなで渡れば 怖くない」という身勝手社会を、他人を利し、思いやるという友愛社会に変えていかないとこのような「間接殺人事故」は防ぐことはできません。
当たり前ですが、思想から行動が生み出されます。他人を思いやらない思想からは、他人を思いやらない行動が生み出されます。明石市の花火大会歩道橋事故は、この当たり前のことを私たちに教えてくれる事故なのであり、他人を思いやることこそが成功の鍵であるというディズニーの教えの正しさをあらためて確認させてくれる事故なのです。
参考
第32回明石市民夏まつりにおける花火大会事故調査報告書/明石市 (akashi.lg.jp)
第32回明石市民夏まつりにおける花火大会事故調査報告書[概要版] (akashi.lg.jp)
兵庫県明石市・歩道橋事故。検事役の弁護士が補充捜査へ - 消費者保護。東日本大震災・津波避難・福島原発。子供安全。冤罪。警察不祥事。労働者権利。相川哲弥ブログ (goo.ne.jp)