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ディズニーランドの真実 1/3 カウントダウンパーティ

東京ディズニーランドのスーパーバイザー時代の出来事を3日間記します。手前みそになりますが今年は記念の年、お許しください。お伝えしたいことは「(災いを防ぐためには)予測する、備えておく」ということです。
 
■大晦日のチケットを求めるゲストの列、列、列
 
 チケット販売やゲストパーキング担当のスーパーバイザーをしていた頃、初冬のある日のことです。その日は、大晦日に行われるカウントダウンパーティーの入場券の発売日でした。結果的に、東京ディズニーランドで窓口販売を行った最後の日になりました。
 
 カウントダウンパーティーに対する期待は年々高まり、この年には前売り開始の何日も前から舞浜駅近くに「待機ゲスト」が存在していました。言葉は良くないかもしれませんが、夜を徹して陣取っていたのです。理由は明白です。発売当日の一番列車で来ても買えない場合があることを、このゲストたちはよく知っているのです。車両で来園する購入希望者が、深夜から早朝にかけ殺到するのです。これはこの二年前くらいからの傾向でした。
 
 確かにカウントダウンパーティーのチケットを応募式に変更する案も出されていました。でもどうでしょう。東京ディズニーランドのファンが絶対に購入できる場所がなくなってしまうことを意味するのです。熱心なファンに申し訳ないと思い、応募式を採用してこなかったのです。
 
 私は早朝というよりまだ夜中の四時前に出勤しました。当日の私の担当は、前売り券を販売する部門の責任者でした。所定の出勤時間は朝六時であったと記憶しています。
 計画では、私たちパークオープンのキャストが出勤する時には、前日からの勤務者がゲストパーキングの一定区画にキューラインを作り、整然とチケットブースに誘導することになっていました。もちろん舞浜駅に待機しているゲストも同様です。
 
 販売当日を迎えるに当たり、私にはある不安がありました。前年実績を大幅に上回る前売券購入希望者が集中したらどうなるだろうか。最悪のシナリオは……。
 
 残念ながら予感は的中してしまいました。ゲストパーキングのグーフィーエリアやピノキオエリアは、車両で来園したゲストの列で埋め尽くされていました。人、人、人、言葉では表現し難い光景を目の当たりにしました。
 
「どうなっているんだろう」
 
 そう思いました。状況は最悪でした。列を見て、先頭の数百メートルは一本でしたが、途中から何本にも枝分かれているのを確認した時、正直「困った」と呟きました。
 
■「やるしかない」ことを私に教えてくれたスーパーバイザー
 
 一九八三年四月一四日夜、グランドオープン前夜のパーティーでも、小さな混乱がありました。ワールドバザールのシンデレラ城側で、招待者や関係者を集めたパーティーが開かれた時のこと。小雨の中、エンターテナーによるショーが行われている会場の通路を大勢のゲストが埋めつくしていました。保安部門に所属していた私は「事前の打ち合わせと違う」とゲストコントロール担当責任者のスーパーバイザーに伝えました。
 
「困ります」と。
 
 スーパーバイザーは、実にはっきりとこう言い切りました。
「中村さん、困っている場合ではないんです。どうにかしなくてはいけないんです」
 
 カウントダウンパーティーの前売り券販売の日に戻ります。
「夜間のゲストパーキングは照明が点灯されているものの薄暗い。暗いうちに列を整理しておかないと大変なことになる」
 
 私はそう直感しました。明るくなり、並んでいるゲストの目にこの混乱した状況が映った時、ゲストはより不安になるでしょう。我先に先頭部分に駆け寄るかもしれません。そうなったら収拾がつかなくなるのは明白です。
 
 人々は秩序ある集団の中にいれば秩序を守リます。その反対に、集団が一度無秩序の状態に陥ると、個人は実に身勝手な行動に出ます。
 
私は、アトラクションエリアのスーパーバイザーの経験から、この原理原則を理解していました。アトラクションへの走り込みや、将棋倒し事故をも連想させる「人々の危険行為」を何度も見てきたのです。
 
 混乱を予測して出勤時間前に駆け付けたスーパーバイザーは私だけではありませんでした。同僚のMスーパーバイザーでした。彼もまた私同様アトラクションエリアを経験していました。長い列を効果的に整理する手法を身に付けています。
 
 JR京葉線の一番列車が舞浜駅に到着する頃には、渦巻きのようであった列も、一本の太く整然とした列にすることができました。日が昇り、前売券のオーダーテイカーキャストが何もなかったかのように出勤してきます。その姿を見ながら、私とMスーパーバイザーは「よくやったよな」とお互いに労をねぎらい合っていました。
 
 残念であったことは、早朝に並んでもらったすべてのゲストに前売券を購入していただけなかったことです。千人以上のゲストは券を手にすることができなかったと記憶しています。このゲストの方々は、来年はより早く来て並ぶでしょう。寒い中、夜を徹して舞浜駅に並ぶかもしれません。
 
 ディズニーランドでは、「どの方法が一番ゲストにとって良いのか」を考え続けています。今回の前売り券販売の事実は、ある種の限界を感じさせてくれました。
 
最後に一言、このニュース東京ディズニーシー限定グッズ求め…凄絶バトル「人潰れてる」買い占め・転売…対策は (tv-asahi.co.jp) パーク運営レベルの著しい低下の結果を嘆かざるを得ません。

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