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【12日目】『恐怖』のメカニズム(カンジョウのトリセツ)

 今回の話題は、前回の『怒り』に次いで厄介な感情

『恐怖』

についてです。

 この『恐怖』も感情の一種で、感情である以上「好き嫌いゲージの動き」によって起こります。感情というのは、全部そういう仕組で「ココロが勝手にわき起こす」ものでしたね。

◆『恐怖』のメカニズム

 では『恐怖』が起こるメカニズムを、好き嫌いゲージで見てみましょう。恐怖がココロにわき起こっているときは、好き嫌いゲージが

「嫌い」側にマックスまで下がっている

ときです。好き嫌いゲージの性質を思い出してほしいのですが、針の位置とモトの量が連動しているんでしたね。つまり、ココロとしては「モトが限界ギリギリまで減っている」状態になっているわけです。

 あなた自身が「怖い!」と思っているとき、どう行動するかを思い出してください。怖いときの行動とは

・逃げる
・しゃがみ込んで身を小さくする
・目や耳をふさぐ、涙を出す(目の保護)
・泣いたり大声を出したりして助けを呼ぶ

などですよね。どうしてこういう行動を取りたくなるのかというと「怖いものから身を守ろうとしているから」です。

 モトの観点から言うと、これらの行動は「モトをこれ以上減らさないようにしよう」とする行動です。上に挙げたどんな行動も、そうすることによって「モトの流出を抑えよう」としていると思いませんか? モトは対象に「注目する」ことによって相手に流れ出ていきますので、その「注目」をカットしようとする気持ちこそが「恐怖」なわけです。

 「その場から逃げる」というのは、モトを吸ってくる対象から距離を取って、モトを吸われないようにしようとする試みです。

 「しゃがみこんで身を小さくする」のは、カラダへの損害をできるだけ減らすことで、痛みや苦しみを和らげ、モトの流出を減らす試みです。

 「目や耳をふさぐ」のは、音や光の情報をカットすることで、対象への注目度を下げ、モトをこれ以上吸われないようにしようとする試みです。

 「泣いたり大声を出す」のは、他の人に助けを呼ぶことで、恐怖を感じる状況を改善してモトの流出を減らそうとする試みです。

 こんなふうに、恐怖を感じているときの行動というのは、どれも「その場の状況を変えることで、モトの流出を減らそうとする試み」なんですね。言いかえると、好き嫌いゲージがマックスまで下がっているので「これ以上モトを減らしたらヤバい!」という気持ちこそが『恐怖』なわけです。

 前回までのお話で出てきた「怒り」をもってこちらに対峙してくる相手は、とても「怖い」ものですよね。なぜなら「怒り」をもって接してくるということは、こちらに「危害を加えよう」という意思を持っている、ということですから、当然「怖い!」と思うはずです。モトの観点から見ても、危害を加えようとしてくる相手にはめちゃくちゃ注目しますので、その分急激にモトが減ってしまいます。

 ほかにも、なにか新しいことを始めようとするときにも「怖い」という気持ちが出てくるものです。特に、安定した「今のやり方」を手放して何かを始めるときというのは、この「怖い」という気持ちが出てくるものですよね。
 このときのメカニズムも同じで、新しいやり方をすることで「今まで安定していたモトが急に減るかもしれない」と考えることで、好き嫌いゲージがギューッと下がって「恐怖」が出てきます(人間は「アタマで考えたこと」にモトを飛ばしてしまうこともよくあるんでしたね)。

◆『恐怖』の正体とは

 では、こういった「恐怖」の気持ちをどうしたらいいのか? という話をしていきましょう。ヒントは入門編で紹介した『ABC理論』にあります。ちょっと復習しましょう。
 『ABC理論』というのは認知行動療法の一つで、出来事と気分の間にある「信念」について考えましょう、という話でしたね。例えば「怒っている人が怖い!」という場合は

 A(出来事)=怒っている人に出会った
 B(信念) =( ? ? )
 C(気持ち)=怖い!!

こういう構図があるんでした。

 この『ABC理論』は、僕が唱える「三つのパーツ」のそれぞれの働きに関係していて、感情というものが起こるプロセス

 カラダ(感覚がとらえた状況)
  ↓
 アタマ(無意識の信念・習慣)
  ↓
 ココロ(感情)

のそれぞれに対応しているんでした。ですから、この例の場合ですと

 B(信念)= アタマにある無意識の信念( ? ? )

というふうになるはずなんですね。ではこの( ? ? )に入るものは何でしょうか?

 実は……「怒っている人は怖いものだ」という『考え』が入ります。

 これを見て「当たり前やん!」と思った方は多いでしょう。ですがこの「当たり前」こそが『無意識の信念』の正体なんです! あなたにとっての「当たり前」こそが、あなたが知らない間にアタマに蓄積している『無意識の信念・習慣』の正体だったですよね(入門編参照)。

 というわけで、恐怖を乗り越えるためにはこの「当たり前」をどうにかしないといけないのですが、ここが「難しいポイント」なわけですよね。怖いものは、怖いですからね……。

 では次回、そのへんをもう少し深掘りしてみましょう。

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日南本倶生(みゅんひはうぜん)
「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)