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【連載小説】マジカル戦隊M.O.G.(第8回)

前略・・・って、ま、決まりごとだから、一応、な。今回音声だけど。

えー、正直退屈してるんだ。
今のところまだ拷問とか始まってなくて、俺は敵さんのどこかの要塞? か何かの独房でゴロゴロしてる。
退屈なのを除けば、そんなに悪くない環境だ。
メシもまぁそこそこ食わせてもらってる。

当然ながら捕虜として捕まってるわけだが、番兵に魔術系の知識があまりないのが救いだ。
こうやって式神を作って録音してても、全然それと気付かないらしい。
そもそも、ちゃんと魔道部隊を持ってる国は、俺たちんとこを入れてまだ2~3だろ?
ま、あと何年かすれば、各国の軍隊に魔道部隊がきっちり配備されるだろうから、こんな風にチャラチャラしてられるのも今のうちだけだろうが。

あーさて、紙や筆記具、ナイフやはさみのない環境でどうやって式神を作ったか教えてやろう。
実はだな、至極原始的な道具、つまり歯を使ってシーツを引きちぎって、形を整えて・・・かなりいい加減だが・・・この式神を見たら分かると思うけど・・・あとは自分の指先をちょっと噛んで、血で呪文を書き込んだら出来上がりだ。
訓練でちょっとだけでもサバイバルかじっといて正解だったぜ。
あとはこれが無事にお前さんのところに届くことを祈るだけだ。
あ、軍へは先に別の式神を送っといたから、じきにそいつが俺の居場所を知らせてくれるだろう。
問題は、軍の皆さんが俺を助けに来てくれるかどうかってこと。
こればっかりは、軍の上層部の皆さんにほんのちょっとだけでいいから善意があることを期待したい。
できれば、ランボーやエクスペンダブルズのような腕利きが来てくれるとありがたいんだけど・・・。
とはいえ、そんな感じのガチムチは、軍にいても見たことないんだけどね。
じゃ、無理じゃないか、ハハハ。何言ってんだろ俺?

ただ、残念なことが一つだけある。
それは、この小汚い独房の中央にジェイコブの陣が書いてあって、俺のMPはこの部屋にいる限り回復しないってこと。
そこそこ魔道をたしなむ輩が、敵の軍隊にもいるって事だろうな。
だから多分、こうやって式神にメッセージを託せるのもこれが最後になるだろう。
あとあんまりシーツがビリビリだと怪しまれるだろうしね。
だからもしここから上手く抜け出せたら、また手紙でも書くわ。
次の手紙では、きっともうちょっと状況を詳しく伝えられるんじゃないかな?
つっても俺の文章力だから、期待はできないと思うけど・・・ま、お楽しみにー。

というわけで、早々・・・またな。



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日南本倶生(みゅんひはうぜん)
「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)