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【4日目】コンサート会場のカンジョウ(カンジョウのトリセツ)

◆コンサート会場と『モト』

 今回は「大勢の人がモトを生み出している様子」を説明したいのですが、そのためのとても良い例が一つあります。それは

「アイドルのコンサート会場」

です。その場所でモトがどういうふうに動いているのかを見てみましょう。

 アイドルに限らず、コンサート会場はとても「アツく」なるものです。もちろん、人が集まるので館内温度が高くなる、というのもありますが、それだけではないなぁというのは、コンサートに実際に行ったことがある方ならどなたでも経験があるのではないでしょうか。

 このとき、まずはステージの演者に向かって、観客がモトをどんどん飛ばします。モトは「注目している方へ飛んでいく」んでしたね。もちろん、ステージの演者は「注目されていることを知っている」ので、ほとんどすべてのモトを受け取ります。
 モトというものは、受け手が「注目されていること」に気づいているとき、より多く受け取ることができるものなのです。ほら、お湯がわいたヤカンに飛ばしたモトは「消えてしまう」けれど、人に呼び止められたときは、呼んだ方にモトが移動するんでしたね。こういう理屈なんです。
 実は「アイドルがステージに立つ快感」というのは、この現象によって発生するものです。自分の歌や踊りなどで、たくさんの人に注目されるからです。

 こうしてモトをたくさん受け取った演者のパフォーマンスは、ますます熱の入ったものになります。練習で演奏したりダンスしたりするときより、ずっと「キラキラした」ものになるのです。

 一方で、観客の側はどうかというと……

 大好きなアーティストが、目の前にいて歌ったり踊ったりしてくれているわけです。好き嫌いゲージは当然「好き」の方にグイグイ上がっていきます。だって「好き」なんですからね。
 好き嫌いゲージが「好き」の方に傾いているときというのは、ココロのモトが増えているとき、でしたよね。つまり、観客はステージにモトを飛ばしているにも関わらず、好き嫌いゲージを上げて「モトを増やしている」のです。
 これは「二番目のモトあつめ」でしたよね。そう、ステージに立つアイドルを応援している観客は、二番目のモトあつめを行いながら、生み出したモトを演者にどんどん送り込んでいるわけです。

◆コンサートは大規模な『二番目のモトあつめ』だ

 まとめると、観客が二番目のモトあつめでモトを増やし、アイドルに送る。アイドルはそれを受け取り、パフォーマンスに磨きをかけ、さらに観客を喜ばせる。そしてまた、観客がモトを増やして送り返す……こういう

「モトの循環」

が、そこで行われていると考えられます。

 こうして、会場に人がただ集まっただけの開演前と比べて、コンサートが始まると

『会場全体のモトの量』

どんどん増えていきます。その場にある「モトの量」そのものが増えていくのです。熱狂的なステージ体験というのは、実はこのような「メカニズム」で生まれるのです。

 ちなみに、特にファンでもないアーティストのコンサートに、友人に誘われてたまたま行ってみたら、そのコンサートが最高だったから、一気にファンになっちゃった……なんて経験、ありませんか?
 そこにはこういったモトの動きに「乗っかってしまう」という体験があり、周囲のファンの様子やモトを受け取ってキラキラ輝いて見えるアイドルに、自分の好き嫌いゲージを「好き」側に動かされてしまう、結果として自分もファンになってしまう、という経緯があるんです。こういったことも「その場のモトの全体量が増えていっている空間」にいる、という体験が自分のココロに影響した結果だと言えるかもしれませんね。

◆ファンの声援と『良いモトの循環』

 こうして「モトの動き」を観察すると、よく言われるような

「ファンの声援が、アイドルの力になる」

なんてことが「本当に起こっている現象」であることが分かります。そう、そこにはちゃんと「メカニズム」があるということなんです。面白いですよね……。
 モトの考え方を使うと、こういったさまざまな「ココロの動き」を言葉で説明できるようになるんです。便利でしょ?

 さて、今回見てきたような「二番目のモトあつめで増やしたモトを送り合う」ようなモトの動きを今後

『良いモトの循環』

と呼ぶことにします。次回はこの『良いモトの循環』についてお話しましょう。

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「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)