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【連載小説】マジカル戦隊M.O.G.(第3回)

前略

もう知ってると思うが、お隣さんの内乱とやらに、俺たちも加わらなきゃならんみたいだ。
訓練が始まって半年、まだまだ半人前にも満たない俺たちが、早くも実戦投入だ。
MOG自体が実験部隊みたいなもんなんだけど、いくらなんでもそりゃないだろって感じだ。
大体、行って何をしろと。
俺らなんか、魔法がちょっと使えるくらいしか役に立たないのに。
マシンガンの安全装置の外し方すら知らないのにな。

それにしても、早速人殺しだよ。
去年まで考えたこともなかった、この手で人を殺す日が来ることになろうとはね。
いや、たとえ自分の手で人を殺すことがないとしても、軍にいる段階でもう人殺しの片棒を担いでいるわけで、どのみち人殺しには違いない。
はぁ・・・この軍の中で、一体どのくらいの人間が、自分が人を手にかけることをよしとしているやら。
もし大多数が、自分なりの理由で納得してそうなんだとしたら、俺はそいつらなんかと一緒くたにされるのはカンベンだ・・・実際には一緒くたなんだけどな、結局俺ももうすぐ人殺しだ。

しかしまぁ、「遠距離からの魔道力支援」って、実際何をすればいいんだろう?
遠距離砲みたいに、遠くから火の玉でも撃てってか?
そんなのバズーカ使えよって感じだろ?
もっとなんかこう、魔法でしかできないような何かをやらされるのかな。
だとしたら非常に恐ろしい。
魔道力って奥が深いからね。

例えば結界一つとってもそうだ。
相手さんの陣地にどんな強力な結界が張ってあっても、その結界の持つ針の穴のごとき微弱な矛盾点を探し出して、その点を無理やり対抗呪文でこじ開けて結界そのものの構造を変えてしまえば、その結界は破れてしまう。
初歩的な例を挙げると、スメラ系の結界だったら、全部で8つある頂点のうち、第4点と第7点のちょうど中間位置に若干の矛盾要素があって、そこにドマラン系の結界構成要素を逆転写してやれば、だいたい1層目の結界ははがれる。
それを繰り返すと、次々に結界を反転させて、敵さんをむき出しにしちゃうことさえできるわけだ。
ただ、現実はそう簡単なもんじゃなくて、これらのいわばウイルス呪文から結界を守る、いわゆるワクチン結界を張っておくと、まずこちらの結界が攻撃されてることを感知できるし、引き続き敵のウイルス呪文を迎撃することだってできる。
この辺まで来ると、もう術者の心理戦みたいな要素も加わってくるから、非常に骨が折れるわけだ。

こういう仕事なんだとすると、行く前から非常に気が重い。
しんどい上に、結界をぶっ壊したらしたで相手は死ぬんだ。
逆に、ぶっ壊されたら自分を含めて仲間が死ぬと。
何でこんなことやらなきゃならないんだろう。
これ面白いのか?
だれか喜んでるのか?
だとしたら、そいつは相当な変態だ、間違いないね。

隣でドンパチが始まってから、色々この国も不安定だから、お前さんの元にこの手紙が無事に届いてることをマジで祈ってるよ。
おっと、神様には祈らないぜ。
だって、こんな世の中なのに指くわえて見てるなんて、神様ってやつは、きっと大の戦争好きなんだ。
そんなのに祈りをささげるのはゴメンだね。
その代わりに・・・そうだなぁ・・・時間と空間、それらそのものに祈りをささげるとしようか。
もし、俺たちが選択できる未来の候補がいくつもあるんだとしたら、その中から一番幸せな未来が来るようにね。
俺は後1週間くらいでこの国からいなくなるけど、また帰ってきたら、一度メシでもいこうや。
おっと、その時食うものがあったらいいけどさ、この国にな・・・ま、冗談だよ。
行く以上俺が何とかしてくるから、心配せずに待っててくれ。
必ず帰る。

早々


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日南本倶生(みゅんひはうぜん)
「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)