見出し画像

2-3:好き嫌いゲージと感情の起こり方(人生はなぜ辛いのか?と思った時に読む『モト』の話)

2-3:好き嫌いゲージと感情の起こり方

感情はゲージの針の「動き」で起こる

 好き嫌いゲージの解説をもう少し続けましょう。

 好き嫌いゲージは、前述のとおりモトの「量」をはかる装置です。それと同時に、感情を発生させる源でもあります。
 ココロのモトの量が「増えた」ことを検知したら、ゲージの針が「好き」のほうに動きます。逆に「減った」ことを検知したら針は「嫌い」のほうに動きます。その「動きかた」と「動く前の量との比較」によって、感情が生まれてきます。

 例えば、嬉しい気持ちになっている時は、好き嫌いゲージはぐいぐい上昇しています。嬉しい気持ちになっている時というのは、ココロのモトの量が増えていっている時です。
 あれ? 針を動かす時に、モトの量が減るんじゃなかったっけ? とお思いの読者さん、鋭いです! そうなんですよ。たしかに好き嫌いゲージの針を「好き」に動かすときも、モトが消費されるんです。何かに注目していますからね。注目するとモトが減ります。
 ですが、僕たちの気分が嬉しさや楽しさで満たされているとき、ココロのモトの量は消費される量を上回る勢いで増えているんです。


ゲージが減ると「不安感」が増す

 逆に、悲しい気持ちや怖い気持ち、怒っている時なんかは、好き嫌いゲージはぐいぐい低下しています。モトがいたずらに消費され、ココロが持っているモトの量がどんどん減っていっているんですね。そんな時、僕たちのココロは幸せの反対にある気持ち

「不安感」

を抱くようにできています。

 不安感がどのような感情として現れるかは、その時の「針の動き方」によります。動き方と感情のあらわれ方は人それぞれ個性があるのですが、大雑把に言うと、次のようになります。

 針がじわじわと下がると、段々テンションが下がって、半分を切ると悲しい気持ちになってきます。すごく寂しかったり、悲しかったりする時は、おそらくゲージの針は「嫌い」側にずいぶん傾いているはずです。

 ほかにも、針の動き方によっては「怒り」「恐怖」「心配」といったネガティブな感情も起こってきます。


「怒り」はココロの自己防衛機能

 針がある時に急激に下がると、ココロはモトの量がこれ以上減らないように、自己防衛機能を発動します。

 この自己防衛機能を僕たちは「怒り」と呼んでいます

 人が怒っている時は、必ず何かを「守ろう」としている時です。たいていの場合、自分のモトの流出を防ぐために、他者がこちらに干渉してくるのを避けるために人は怒りを表します。
 何を守ろうとしているかは、その時その時によって異なります。友情や愛情であったり、お金やモノであったり、立場やプライドであったり、単純に今いい気分だから邪魔しないでほしかったり。
 そういう日常のちょっとしたイラつきから大激怒に至るまで、全ての怒りは「自己防衛機能」です。これらは好き嫌いゲージが「急に下がった」ことをココロが検知して発生します。

 他にも、「怖い」思いである恐怖感というのは、モト量の急激な低下と、それによって個人的な「許容量」を下回ってしまった時に起こる反応です。ただグイッと針が「嫌い」側に動くだけでなく、それがほとんど「嫌い」側に振り切っているとき、人は恐怖を感じるようにできています。


心配は「モトのムダ遣い」

 余談ですが、ココロには「心配する」という働きもあります。
 これは人間のアタマの働きに関連していて、アタマが将来のことを予測する時に「その時、好き嫌いゲージが低下するだろう」と判断したことで起こる感情です。
 未来の時点で起こりそうな出来事を考えた時に、同時に「好き嫌いゲージが下がりそうだ」と考えたら、その時点でもう「今の」好き嫌いゲージが低下してしまうんです。

 もったいないですね・・・。まだ減らさなくていいモトを、未来のことを思うだけで減らしてしまっているんですから。

 僕は常々「心配はするだけムダ」だと周囲に言っていますが、ココロのモトの量は未来が来た「その時」に減らせばいいだけなので、「今」は絶対に分からない「未来」のことをあれこれ考えて、それで「今」のモトの量を減らすなんて本当にもったいないと思っています。

 こんなふうに「モトの動き」を知ると、ココロの動きもコントロールしやすくなります。ココロのモトが動くとき、好き嫌いゲージもまた動くからです。


「モトあつめ」を無意識にやっている僕ら

 前章で書いたとおり、僕たちのココロにはモトを増やしたり減らしたりする機能がついています。その機能を使って好き嫌いゲージを「上昇させた時」だけ、僕たちは幸せを感じるようにできています
 ですので、モトのことを知っていようといまいと、また意識していようといまいと、僕たちは全員が日々

「モトあつめ」

を必死に全力でやりながら暮らしているのです。

 ココロがモトを増やすためにする「モトあつめ」には、第一章で書いた通り二つの方法があります。
 ひとつはほかのココロから分けてもらう(もしくは奪い取る)方法。
 そしてもうひとつは、自分のココロに備わっている「機能」を使って、自分自身で増やす方法です。

 前章でも少し書きましたけど、モトの性質になぞらえながら、ここでもう少し詳しく説明していこうと思います。

(続く)

いいなと思ったら応援しよう!

日南本倶生(みゅんひはうぜん)
「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)