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【連載小説】マジカル戦隊M.O.G.(第14回)

前略

最近はよく、あのとき何が起こったんだろう、と考える。
俺が死んだと思った後、なぜ基地が壊滅したのか、そして、なぜ俺は生きていたのか。
まだ納得できる説明をしてくれたやつはいないし、軍の方でも原因そのものは分かっていないらしい。
ただ、どう考えてもあの基地を壊滅させたのは、俺以外に有り得ないというのが彼らの見解だそうだ。
問題は、そう、どうやって、ということだ。
そこまでは、残念ながら今のところ誰にも分からない。

あの夢と関係があるのだろうか。
巨大なくちばし、巨大な二つの目。
ただのの夢だと最初は思ってたけど、臨死体験にしてはちょっと変わってるだろ?
俺が死にかけたのはおそらく間違いないんだけど、でもその間際に、よく言われる花畑とか河原とか死んだ人とか、そういうのは一切見ていないんだ。
俺が見たのは、こないだの手紙で書いたあの変な夢だけ。
しかも、夢なんてもんは普通さらっと忘れちゃうもんなのに(今朝見た夢、覚えてるか? 俺は・・・夢を見たのは覚えてるんだけど、目が覚めて1時間もすれば、内容はすっかり忘れちまう。みんなそうじゃないか?)、あの変な夢だけは、しっかり内容を覚えてるんだよな、一部始終を。
・・・いや、意識だって朦朧としてたのに、一部始終、なんて言っちゃうにはちょっと自信ないかな。
ともかく、あの夢でのやりとりは今でもはっきり覚えてるし、一度手紙に書いたこともあって、また書こうと思ったら多分書ける。
それぐらいはっきりしてるって事だ。

SFファンタジーな考え方をすると、その巨大なくちばしを持った鳥か何かのバケモンが、死にそうになった正義の俺に乗り移って、超人的な力で悪の敵を全滅させたとか、そういう説明になっちゃうわけだが、これがハイそうですかと納得できる説明ではないことも確かだ。
相手はあの忍者でさえ蜂の巣にしてしまうような「軍隊」なのだ。
どんなに超人的な能力を持っていたとしても、重火器を持った何百の兵を相手に、1個の個体がすべてを破壊し尽くすのは不可能と言っていい。
それに俺のMPも完全に枯渇していたし、魔法の力でないことも明らかだ。
おそらく何かのトラブルに、たまたま俺の処刑の時に巻き込まれたんだと考えるべきだろう。
それは例えば、自軍、敵軍とは違う第三の勢力による戦闘行為だったのか、もしくはメイン動力炉のトラブルによる基地の爆発事故だったのか、そういった類のものだと思うのだが・・・
敵さんが逃げ場を求めて東奔西走してる間に、たまたま生き残った俺は朦朧とする意識の中、本能的に基地を抜け出して、自力で脱出した・・・まぁ、こんな風に説明できなくなはい。

それでも、腑に落ちない点はいくつも残るが。

まず、なぜ発見された俺は全裸だったのか。
先に言っておくけど、そんな趣味があるわけじゃないぜ?
最後に拷問台にかけられたときは、確か上半分は裸同然だったけど、下はちゃんとズボンを履いてたと思う。
かなり汚れてはいたけど。
あと、無傷だったのもすごく不自然だ。
拷問で電気ショックにかけられて死にかけたのに。

それから、なぜ移動後の駐屯地を見つけられたのか。
ずっと南の、川沿いの駐屯地へ移る「前の」戦闘で、俺は捕らえられた。
つまり、その場所についての知識は全くなかったということだ。
事実、駐屯地がどこに移動したかなんて全然知らなかったし(戦線の南下に伴って、南の方へ移っただろうということはある程度予測できてたけど)、ずっと敵の収容所にいたわけだから、それを知り得るタイミングも全くなかったはずだ。
でも、俺は宿営地のすぐ入り口で発見された。
誰かに運ばれたとしか考えられない。
だとしたら、一体誰に?

最後に、この真っ黒な羽根だ。
カラスか何かの羽根だろうか、倒れていた俺が握りしめていた、唯一の所持品だったらしい。
調べによると、鳥類の羽根であること以外はよく分からないそうだが、それ以外には特に変わった部分もないそうだ。
つまり、ただの羽根、ということだ。
だが、なぜ俺はこれを握りしめていたのか?
自分でも全く分からない。
ただ、鳥といえば、あのくちばしと目・・・・・・・・・
もしかしたら、もしかするんだろうか。
ハハッ、ばかな。

最近暑いな。
もうすぐ夏になるのだろうか。
こっちに来て、もうだいぶ経った。
正直、早く帰りたい。
戦場じゃぁ海水浴も流しそうめんもやれそうにないもんな。
帰ったら、みんなでキャンプでも行こうや。
そのとき、お前たちの人数が3人になってたら面白いな。
ま、夜のお仕事も頑張ってくれたまえよ。
なんて、俺が言うまでもなかったかい?
ハハハ、冗談だよ、そうムキになるな。

早々



「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)