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【5日目】『良いモトの循環』とコミュニケーションのテクニック(カンジョウのトリセツ)

◆『良いモトの循環』とは

 今回の話題は

『良いモトの循環』

です。

 これは前回の話題「アイドルのコンサート会場」でモトの動きがどうなっているのか? という話にあったように「二番目のモトあつめ」を使ってモトを増やし合うような現象を指す言葉です。

 二番目のモトあつめの例は、他にも「二人の人物がお茶を飲みながら楽しく会話しているとき」なんていうものも書きました。このときも、二人は「増やしたモトを与え合う」ようなコミュニケーションを取っています。こういうシチュエーションを僕は

『良いモトの循環』

と名付けました。この概念は今後「幸せとは何か?」ということを考えていく上で、大変重要な考え方になります。よく覚えておいて下さい。

◆『良いモトの循環』が起こるメカニズム

 では、この『良いモトの循環』のメカニズムをもう一度振り返ってみましょう。ここでは、先の例である「二人の人物が楽しく会話をしている」シチュエーションを使って説明しますね。

 まず、片方がもう片方の話を聞きます。聞き手は、話し手に注目しているので、話し手にモトを飛ばします。このとき、聞き手のモトは一旦減少します。

【モトの動き】 聞き手(減) → 話し手(増)

 その後、聞き手が好き嫌いゲージを「好き」側に動かして(話が面白い、相手が好き、などの理由で)モトを増やすことができたら『良いモトの循環』が始まるのです。

【モトの動き】 聞き手(増) → 話し手(さらに増)


 そして、会話というものは「交互に」行われるものですよね。さきほど話し手だった人は、次は聞き手に回ります。このときも、さきほどと同じように一旦モトが相手に向かって飛んでいきます。

【モトの動き】 話し手(増) ← 聞き手(減)

そしてさきほどと同じように、聞き手の好き嫌いゲージが「好き」側にあるとき、聞き手のモトが増えていきます。

【モトの動き】 話し手(さらに増) ← 聞き手(増)

 二人の「ココロが持つモトの量」が会話を始める前より増えていますので、このとき「その場全体のモト」が増えています(コンサート会場ほどではありませんが)。
 楽しい時を過ごしているときというのは、なんだかちょっと居心地が良くなるものですよね。それもこの「その場のモトが増えている」という現象に由来するものだと考えられます。

 このようにして、お互いのモトを「増やし合う」ようなコミュニケーションのことを、先に書いたとおり

『良いモトの循環』

と呼びます。片方が「二番目のモトあつめ」でモトを増やし、そして増やしたモトを相手に送り、逆にまた相手からも送り返してもらう、そういう「モトの循環」がそこには存在するのです。

◆『良いモトの循環』は幸せな人生のカギだ

 実は、僕たちが「幸せに生きる」ためにとても重要な方法がこの『良いモトの循環』を、自分の意志で起こすこと、なんです。

 その理由はこうです。まず「好き嫌いゲージ」というものを思い出してください。好き嫌いゲージが「好き」に傾くと、ココロはとてもポジティブな気持ちを出します。僕たちが「幸せだ」と感じるときというのは、「必ず」こういうふうに好き嫌いゲージが「好き」の方に傾いているときです。例外はありません。
 そして、好き嫌いゲージが「好き」寄りのとき、ココロは「モトをたくさん持っている」と判断しています。「好き嫌いゲージの針」とココロが持つ「モトの量」は、正確に連動しているんでしたね。このとき、ココロは周囲の空間にモトをポコポコ生み出していきます……ココロというのは、「そういう機能のある『臓器』」のようなものだ、と前巻でお話ししましたね(その理由や動作原理は、エキスパート編でお話しますね)。

 そういうわけで、好き嫌いゲージを「好き」寄りにする方法はモトを増やすことなのですが、僕の言う「一番目のモトあつめ」=他者から奪ってくるモトあつめだけでは「その場全体のモトが増えない」んです。ただ相手から奪い取ってくるだけなのですから。
 そうではなく「二番目のモトあつめ」を上手に活用して、自分がいるその場全体のモトの量を増やしてやれば、自分が得られるモトの量も当然増えます。相手も増やしてくれているのなら、なおさらです。

 つまりです、こういう『良いモトの循環』が「すでに起こっている場所」に自分の身を置くことや、自分の意志で良いモトの循環を「起こしていく」ことによって、自分のココロの好き嫌いゲージが「好き」寄りになっている時間をできるだけ長くすることで、だれもが「人生は楽しいものだ」と思えるようになってくるのです。
 結局のところ、僕らが「幸せに生きる」というのは、こういう「楽しい・うれしい・面白い」時間をいかに積み重ねるか? という話に集約されると思うので、モトの性質と考え方を突き詰めると、この

『良いモトの循環』こそが、幸せに生きるたった一つの方法

であると言い切ってしまえるのです。

◆コミュニケーションの技術と『良いモトの循環』という知識

 では、これからはみんなで良いモトの循環を起こしていきましょう!

……と言ってしまえたらいいのですが、そうカンタンにはいかないのが世の中というものですよね。そしてまた現在「他人がニガテだ」「世の中は冷たい」「私は一人ぼっちだ」なんてことを考えながら、辛く孤独な日々を送っている方々にとって、この『良いモトの循環』を起こすための具体的な方法(積極的に誰かに話しかける、楽しい雑談を続ける、など)については、結構ハードルが高いものであったりするのではないかと思います。

 ここらへんはもう「テクニック」の問題になってきます。たとえば、人と話すときにどういう振る舞いをするのが「相手を不快にしない」のか、集団で活動するときにどういう行動を取るのが「よりその場の雰囲気を壊さない」のか、などなど……。こういったことには、具体的な「勉強」と「慣れ」の両方が必要になりますので、ある程度「場数を踏む」必要があるのではないかと思います。

 こうしたテクニック(話術や振る舞い訓など)は、ちまたにたくさんの本や情報があふれていますので、コミュニケーションのド素人である僕のものよりはそちらの情報にふれていただくとして……ここではやはり「モト」を通して、そういったものを考えていきたいと思います。

 今回のテーマ『良いモトの循環』という「メカニズムの知識」があるのとないのとでは、さきほどの「テクニック」への理解が大きく変わってきます。
 どう変わるのかというと、これまで語られてきたさまざまな「テクニック」……会話を始めるための話題選びや、適切な相づちの打ち方、自分の話をするときの態度や言葉選び、そして会話をやめるタイミングなど……こういったいわゆる「手練手管」について

「なぜそうするほうがいいのか?」

という理由が「アタマで」理解できるようになるのです。
 それら「テクニック」を「モトの流れ」という概念でとらえ直し、「今どちらからどちらにモトが動いていて、どっちのモトが増えていて(逆に減っていて)、それによって気持ちがどう変化したのか?」という、これまであいまいに語られてきたことが「理論的かつ直感的に」アタマでつかめるようになるのです。

 こういう「理解」が、コミュニケーションの練習において大きく僕たちの手助けをしてくれるはずです。

 というわけで、コミュニケーションがニガテだから、今まで話し方教室に通ってみたり、たくさんの本を読んで勉強してみたりしたけど、なかなか身につかない……そういうお悩みのある方にこそ、この『良いモトの循環』を意識したコミュニケーションの練習をオススメします。今までニガテだと思っていた「他人」の『ココロの中で起こっていること』が、少しずつ理解できるようになるかもしれませんよ。

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日南本倶生(みゅんひはうぜん)
「ニンゲンのトリセツ」著者、リリジャス・クリエイター。京都でちまちま生きているぶよんぶよんのオジサンです。新作の原稿を転載中、長編小説連載中。みんなの投げ銭まってるぜ!(笑)