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『KIKIKAITAI』が流れてかっこいいムービー入った!この事件は解体しました!ヨシ! ……通るかそんなもん!【都市伝説解体センターネタバレ感想】

はじめに

くっっっそ長いです。

各種プラットフォームにて大好評配信中の『都市伝説解体センター』
都市伝説、ミステリ、ドットのグラフィック…
などの、ネットのオタクが好きそうな要素を取り揃えて合体させた、墓場文庫の最新作品となる。
筆者もそういった作品がオタクの例に漏れず大好きなため購入し、ちまちま遊んで全編をクリアした。
その上で、(この作品……どこか違和感がある? SNSの反応も調べてみようかな?)と思い立ったためSNS調査、ついでにネットの海に自分の感想も流しておく。


以下全て、クリア済み想定のネタバレ全開、かつ批判的な内容を多大に含むため『都市伝説解体センター』を楽しんだ方で悪意を持った意見を見たくない方はこれ以降を読まないことをおすすめします。
こっから先は見なくていいよ、気分悪くなるだけだろうから」


作品全体の概略と個人的な評価

まずは本作の大まかな特徴と、ざっくりした感想について

*概略


本作は、都市伝説解体センターという架空の組織にひょんなことから所属することとなった、福来あざみと、先輩職員のジャスミン(止木休美)、そしてセンター長の巡屋渉三名が、怪現象によって起きた可能性のある事件を調査し、事件に関連する都市伝説特定、事件の真相を解き明かし、解体していく…というミステリーとホラーの融合したストーリーとなっている。
そのストーリーをあえて低解像度・色数を絞ったドットグラフィック(だいたいゲームボーイアドバンスくらいの解像度で、色数はゲームボーイカラーくらい)や、シチュエーションに合わせた相当な曲数のBGMで彩り、本作の独特の雰囲気を構築している
また、X上でも話題になったやけにニュースなどへの大衆のリプライの再現度が高いSNSを確認して情報を集めるSNS調査も本作についてかなり強調されているポイントとなる、はず。

*個人的評価


しっかりとクリアしたうえでの意見ではあるものの、読み返したりができていないため、印象に依ったものになっている可能性はあり、訂正すべき箇所があればご指摘願います。



まず、クリア時点の率直な感想としては「ラスト5分の衝撃! きみはこの展開を予想できるか!?」みてーな帯がついた小説、という感じでした。
この時点で言いたいことがだいたい解るとは思います。


一応、全体の構成・特に最終章ラスト周りについてはおおむね好印象です。
けっこう予想はできてしまう展開ではありましたが、後述する作品の個人的に感じた不満・問題点との兼ね合いもあって、最後までどのような着地点を迎えるのかは未知数でした(褒めてはいません)。

その上でも、後半に怒涛につぐ怒涛の展開。急展開からつぎつぎと明かされる事実……これまでの事件と、最後の事件が実はつながっていて……? というオタク大好き展開と、ED後のCパートで超かっこいいカットが入って〆!をされたらまぁどうしてもキャッキャと喜んでしまうよね。

とにかく画面いっぱいに描写されるドットアニメーションのシーンや、メインテーマの「奇々解体」が良すぎる。
シティーハンターで「Get Wild」流れだしたときくらいの昂揚感が得られてしまい、細かい粗はまぁええか……という気持ちにさせてくれます。

ただそれはつまり、本編をプレイしている最中に頭の片隅にチラつく「ここいる?」「解体パート入ったけどじゃああれなんだったん……?」がラストでまぁええか……となるだけであって、プレイ中に細かなフラストレーションを抱えてしまいました。


あと、目玉のはずのSNS調査も正直ものすごいマンネリ化をしてしまうので、もっと活用してほしかったですね。



個人的な評価をまとめると、「世界観や雰囲気を最高に堪能できる良作」であると同時に、「ノベルゲームとしての欠陥や欠点が目についてしまう作品」といったところです。



個別の要素について

以下では個別の要素について言及していきます。

主に取り上げる要素としては
・グラフィックス
・サウンド
・アドベンチャーゲーム要素・UIなどプレイ部分
・シナリオ
・題材(都市伝説という要素)

などになります。



*グラフィックスについて

文句なし! 100点満点!!!!
……と、言いたいところですが少し気になる部分もあります。


まず、前提として本作のドットグラフィックは素晴らしいです。ここはおそらくこのゲームをプレイするような方であれば異論はないはずです。

特に、カットインされる画面いっぱいに表示されるキャラクター達のアニメーションシーンは迫力があります。
個人的な好みとしては、体験版範囲にもあるあざみーがベッドの下に隠れるカットが大好きです

また、会話シーンのバストアップもキャラクターの性格や生活感などを感じられる表情が描写されています。電話がなってびっくりしているあざみーがこれまたかわいい

これらの大きめなドット絵については私個人としては素晴らしいの一言です。

と、言ったからには細かいドット……つまりアドベンチャー部分のドットについて不満があるということになるのですが……これはアドベンチャー部分にまとめて言及します


*サウンドについて

私自身がゲームサウンドにそこまで深いこだわりを持っていない、という問題があるためこの辺りは言及が難しいのですが、シーンごとにBGMがマッチしているという感覚はかなりありました。

非常にありきたりな感想になりそうですが、センター長が出てきて「KAITAI」が流れるシーンのクライマックス感「奇々解体」のミステリードラマのEDの空気、これらがあったからこそ私は本作を良作だと感じられたのだと思います。



それから、本作はインディーのノベルゲームとしてみると非常に曲数が多い印象です。
推理やSNSなどの各パートの専用BGMはもちろんですが、章ごとのマップで、特徴的なところだとBGMが違うあたり、雰囲気作りに大いに貢献しています。

インディーだとフリーBGMだったりも多く、同じ曲を聴いた過去作品の印象に引っ張られてしまうなどもあるためオリジナルサウンドであること、作品とマッチしていることは非常に素晴らしいと思います。

*アドベンチャーゲーム要素・UIなどプレイ部分


ここら辺りから、不満点が噴き出てきます。そして、文章量も数倍! でも名作だと思っているんです。本当に。


まず、SNSでも言われがちな部分として、UI面で個別セーブないという点がよく取り沙汰されます。
これは本当にそうで本作はオートセーブのみセーブは1つのみというかなり厳しい仕様になっています。

これはプレイ中は個人的にはそこまでは気にならなかったのですが、noteを書くにあたって好きなあのカットインを見返したいな、と思った際にそれが出来ないというのはストレスになりうるな、と思いました。

実プレイ中も後半のシナリオを読んでいて、そういえば序盤の事件でこの人はどんな行動をしていたっけ……? と思ったときに記憶に頼るしかないのは困りました。

あざみーが事件ごとにファイルを個別に作っているのはいいとして、次の事件になると過去の事件のリストを見返すことができないのでそのようなことになってしまっており、過去の事件などのファイルも参照できるだけでかなり印象は違ったのかな、という印象です。
雑で味の薄い都市伝説ファイルだけはずっと見れるんだから、できてもいいじゃん……。


UI関連で追加で言及すると、オプションの簡素さに若干の不満があります。

スキップは既読の選択肢を選んだときのみ、テキスト送りの速度は変更不可(表示中に決定で高速表示にはなる)、という点は現代のゲームとしてはちょっと重たい
各章をリプレイしようとした際には未読扱いになっている仕様のためリプレイ時も初見と同じテンポで進むことになります。

この辺は個別セーブさえあれば一切問題ないのですがそれがない以上はリプレイ性や初見でもせっかちでサクサク読みたい人にはつらい点。

まぁこの辺のオプションの少なさは、旧世代の携帯機ADVだいたいこんなものだったので、当時の再現ですと言われたら納得できるものではあります。

アドベンチャー部分(以下ADVと称します)について、謎解きの難易度が低いのはそういうレベルデザインということで、詰まったりせずサクサク遊べて良いと言えると思います。

ですが、人物をファイルに登録するときのギャグみたいな選択肢2つと正解1つ、のような存在理由のない選択肢が多く、章ごとにかなり頻度が高いためネタ選択肢も踏み抜いて一通りの反応を見ようとは思えなくなっていき、ここいる? 感が強くなってしまいました。 自動登録でよくない?

これはSNS調査でも同様に、インタラクト(メガネで見る)するべきコメントが視覚的に明示されている(文字が揺れていてかなり目立つ)ためどれが正解か迷うなどの要素が一切なく、後半になるにつれ順番にコメントを見てあざみーたちの反応を見るだけという印象が強くなります。
不正解のコメントはメガネで見てもなんのリアクションもないので揺れてる文字のときにメガネをかけるだけになってしまいます。


また、先述していた、ADVパートの細かいドットについてですが、背景のクォリティはとても良いのですが……人物、特に痕跡部分についてはどんな動作なのかをキャラが説明しないと理解しづらい説明をもらったうえで納得しづらい部分があり、ちょっと苦しいところ。特にある章での「痕跡がこっちを見ている気がする」という表現は、痕跡に目のドットの有無でそれを示したいという意図はわかるのですが、納得感はないです(立ち位置によっては目がキャラの逆側を向いていてむしろそっぽを向いているようにしか見えなかったりするし、そもそも過去の痕跡がこっち見てるから何? という疑問もずっと残る


特異な動作をしたので痕跡が化け物のようになっている、という描写が1章であったうえで、異形の痕跡がそれ以降も出てくるのですがそれらの異形の理由はまるで説明がないなど、ビジュアルを優先したかっただけのような演出が多く、ミステリーのヒント要素としては不誠実と言わざるを得ませんでした。(配達員の痕跡の足元から手が這い上がってたり、ツアーの死神みたいな形をしているとされた痕跡など)
そもそもが棒立ちの痕跡も散見されるので形どうこう言われても。

まぁ、ビジュアル的には印象付けしやすそうなのでそういった点では良いのでしょうし、実際は痕跡を見るものではなかったということもあり、過去が見えていたわけじゃないから見え方は自由でいいよね、ということなのかもしれませんね。

は?

概ね、痕跡のドットが見た目だけでは何をしているかわかりづらく、主人公の解説があって初めてわかるのですが、我らがあざみーは推理力がぽんこつなために解説も判然としないことがあるなどでヒントとしての期待度が低かった印象です。

また、獲得できた情報についても主人公のみが知覚できる視覚情報で、口頭でしか周囲に伝達できないという点は、ギミックとして非常に魅力的だったのですが、見つけたヒントは基本的に伝えた相手には割ときれいに伝わり、能力で知った内容について誤解や不信を生むことがほぼなかったためにプレイヤー目線ではギミックを活かしているようにはあまり感じられません。

せっかくの主人公の特殊能力なので、ただフラグ管理に活用するだけでなく、逆に振り回されてミスリードになったりなどするシーンなどもあってよかったと思います。

そもそもADVパートはペナルティもないし総当たりしていけばいいだけ、と言えばそれまでですが。(ノベル的に見る場合)



……と、言いたかったのですが。そこについても不満があります。

ADVパートでは特定の手がかりを探していくのですが、手掛かりが揃った時点で強制的に次のシーンに移行してしまいます
後半はもう慣れてしまいましたが、新たなヒントについて各キャラに聞きに行くときに、正解のヒントを持つ人から話を聞いた時点で残りの人の話を聞きそびれてしまうことがありました。
これはキャラ重視のミステリとしてみるならかなり痛いところで、キャラが特定の事件などについてどんな感情を持っていたのかを知るきっかけを少しづつ損なってしまいます。
もちろん、推理のヒントは揃っているため進行には不要な部分であるのですが、その雑談部分を全部聞いた想定? と思われるようなセリフが次以降のシーンにあるためにちぐはぐな印象になってしまいました(異界事件の際に最低限の質問で進もうとしてみたためおそらくそれなりに読み逃した)。

おそらく、全テキストを読んでから次のシーンに向かっているような想定
かと思ったのですが、それならヒントをそろえた後に手帳を開いたりジャスミンに話すなりで進行でよくなかったですか?(異界事件以降の章では、せっかくなのでなるべくテキストを読もうとした結果ヒントが残り一つになったら答えに繋がりそうな会話を避けて会話を埋めるというなんだか余計なことに意識をさいたプレイになってしまいました)
この辺はテキストを読むだけではないADVにした以上は矛盾の起きないように配慮してほしかったところ。まぁこれも個別セーブがあれば済む話なんですが。なんでないの?

あと、これは細かいところなんですがマップの移動や選択肢のレスポンスが微妙に悪かったり、マウス操作だと調べられるオブジェクトのクリック範囲が他より押しづらさを感じるものがあったり(きのこの家のライトとか)逆に判定広すぎて移動時に誤クリックしてしまう大きさのものがあったりしたのですが、まぁこれはコントローラーでやりましょうということで。 



総じて、ADVとしてはシステム面や操作感がイマイチな印象でした。
とにかくせめて個別セーブを3個とかでいいからつけてください。

私が勝手に期待したのが悪いんですが、セーブデータが自由に作れずにあえてオートセーブのみにしているからには何かしらのギミックがあるのでは? と思ったりもしたので。

選択肢の結果を見てからリセットされないようにすることが目的か?などと勘ぐったりしていました。
オンラインゲームや、ランダム要素の確率が重要なゲームでもない限りオートセーブのみにする必要ないんじゃないですか?


*シナリオ

独特の雰囲気のある設定・魅力的な主人公や周囲のキャラクターたち……う~~~ん、これは100点!!


はい。この部分については私は絶賛できます。


都市伝説解体センターの各キャラはビジュアルも性格も魅力的で、彼女らが活躍していくストーリー、というだけでキャラものADVとしては高評価です。

つまりミステリとしては?


本稿はマジで引くほど長くなったので、キャラゲーとして見た本作・ミステリとして見た本作 として分解して語ります。

慌てずに、ひとつひとつ考えていきましょう。


・キャラゲーとしてのシナリオ


さっき100点!! って言ったばっかりじゃん!!

・・・が、この部分については70点くらい、という感じです。

言ってることが違う! と思われるかもしれませんが至って真面目です。
どういうことが言いたいかというと、本作はメインキャラはキャラ立ちしていて魅力的だが、サブキャラの扱いが粗末である、ということです。
センター長・あざみー・ジャスミン先輩・・・彼女らは皆魅力のあるキャラクターと言えます。
ですが、それぞれの事件で出演するサブキャラクターたちが基本的に個性や役割が薄く愛着も敵意も沸きにくいという問題がありました。



あとはもうさすがにここまで長々と読んでいて未プレイの方はいないと思うので全開で話しますが、最終的な犯人かつ被害者である5ソサエティのみなさんが、とにかく嫌な印象になるキャラ造形をしている。

この点はもちろん意図されたものと思われるのですが、じゃあ好印象なキャラがいるのか? という風に考えると、あれ? 嫌な奴ばっかりでは? となってしまうために嫌~なキャラが多い中でも特に嫌な感じのキャラたち、という印象になってぼやけてしまう。

もちろん、本作のラストで実行犯だけでなく「根拠のない噂で人を害する大衆も悪である」という話になるので世の中嫌な奴ばっかりでもそれはそれで良いのですが……。
嫌なキャラばっかりだと読んでて気分が良くない、という極めて単純な理由により私はテキストを送る手がかなり重く感じました。

表面ではいい人のようでも一皮剥けば性根は真っ黒、とかでもなく真っ向から第一印象時点でイメージが悪い
出会うキャラがだいたい最初に嫌な感じのことを言ってくる。意図した構成だとしても、好きになれるキャラが少なすぎる
ミステリやホラー、サスペンスのゲームや小説は枚挙に暇がないほどありますが、多くの場合、探偵役が人気なのは当然として、犯人や敵役にもファンがつくものです。
ですが、本作では都市伝説解体センターのメンバーと、あとまぁ富入さんくらいまでは人気が出そうですが、ほかのキャラはいかにも微妙です。


本作はSNS調査という要素で、SNS上で無責任に悪意を発露する大衆を描いているわけですが、そもそも作中のキャラはだいたいリアルでも性格が最悪なので匿名の大衆がどうこう以前に、この世界ネットとか匿名実名とか関係なくカスしかおらんやんけとなっています。
そんなカスどもに対しあざみーは無垢な反応をし、ジャスミン先輩はたま~に喝を入れてくれます。ありがとう先輩。
プレイヤーの価値観に近いところにおそらくいてくれるのでジャスミン先輩が口を挟んでくれることでカスどもへの溜飲が少し下がる仕組みになっていました。ありがとう。



・ミステリとしてのシナリオ

ミステリというジャンルは裾野が広いのでミステリということにします! ミステリじゃねぇだろという意見は知らん!


そのうえでまぁ点数は……うん


さて、こんなところまでお読みいただきありがとうございます。ジャンルについてはミステリクラスタの方とかはいろいろ言いたいこともあるかもですが私はこれを推理モノ、ミステリというジャンルと見做しています

まぁ情報収集して真実を明らかにするってんだからミステリでいいでしょ。

本作をミステリとしたうえでどうしても重要になるのは、あざみーがいわゆる「信用できない語り手」であり、プレイヤーがそれに気づくタイミングがまちまちになっていそう、ということです。
あざみーことセンター長こと歩ちゃんは、いわゆる多重人格の主人公に当たるのですが、そのうえ更にあざみーが「過去の痕跡をメガネ越しに視認できる」というサイコメトリーような超能力者を自称している、というのがややこしくしてきます。

最後に全部の種明かしされますが、まぁそこまでにあざみーなんかおかしくね? とはなっているはずです。

ただそのうえで、何がどうおかしいのか? は推理では最後まで断定できそうにありません
この辺は、「結局都市伝説は本当にあるのか?」という命題がこの部分の推理の際について回ってしまうためですね。



この辺りを要約すると、

『この作品のリアリティラインはどこにあるのか?』

という話でありここが初見では手さぐりになってしまうわけです。

先に超能力についての話をしますが、本作では2つの超能力が紹介されます。
センター長の現場にいなくともその場を見てきたように知ることが出来る千里眼を、あざみーは先ほども言及した過去を見る能力、ですね。
これらはゲーム開始後すぐに提示される情報です。

ここではいったん多重人格の話を抜きにして初見でストーリーを進めていく場合を考えると、「超能力者を自称する者は複数いる」「主人公の痕跡を見る能力はプレイヤー視点からは本物の能力にしか思えない描写である」という状況から始まります。(プレイヤーの操作して起きる変化や描写が事実ではないのでは? なんて疑いを持つ人はまぁ少ないでしょう)

読み進めるうえで操作しているプレイヤーの画面に映る映像やセリフは(主人公の主観とはいえ)事実という想定でいくと、メガネをかけると過去の痕跡があざみーにはマジで見えている。という判断になり、そうなると「超常現象はある世界観」、という視点になるのですが……


ベッドの下の男はストーカーであり、ブラッディメアリーは覗き見していた女性であり……と全ての事件は
「都市伝説と思われた事件は実は人の手によるものだった」
というオチに収束していきます。

じゃあオカルトについては『主人公であるあざみーだけが本当の超常現象なのか?』(一応、センター長に関しては千里眼の証明をプレイヤー視点ではしていないため、トリックがある可能性について道中で考察していた人も多いでしょうし、あざみーのみ本物、としておきます)
……という話になりますが、KAITAIの後の『奇々解体』がカッコよく流れているときに大オチとして、本当に怪異がいるのでは? というようなホラーなカットが入って終わりとなります。



結局のところラストを迎えて、最終的にあざみーの捜査した全ての都市伝説は関係者がそれに見立てをしていた事件でした、ということになるのですが……

じゃあ各章のラストで第三者視点から事件の関係者の背後に表れてた怪異は???

各章でちょいちょい起きる、あざみーにも事件関係者にもできるわけがない怪現象の真実は?

これらについては明確な回答がないまま終わります

は?

ブラッディメアリーの鏡で呼び出された幽霊は?
眉崎の受けた呪いは? 壁の絵の蛇は?
自宅に入ってきた、家政婦さんも黒沢も見たドッペルゲンガーは?


ぜ~んぶ、謎のままです。(さすがに無視しづらいデカいとこだけ抜粋)

は?

さすがにこれは、本筋には関係ないからで流すにはデカいです。

別に都市伝説が実在しようがしまいがそれぞれの事件は無関係で、ストーリーは成立するのですが。

じゃあ都市伝説解体! 人為的トリックでした! までで良いでしょ?

「でも、本当に実在してるのかも……?」みたいなカットなくても成り立つじゃん!

この、都市伝説があったかもしれないという各章のでかめのカットインまでついていたイベントについてはマジで存在理由がわかっていません。(TRICKでもたまにそんなオチあったでしょ~みたいな説明でもいいんですが…)

ちょっと熱くなってしまいましたが、終始こんなノリである以上センター長はマジの千里眼なのか? それとも解体できる都市伝説(つまりフェイク)なのか? みたいな読みが入り、本物の千里眼だったらなんでもアリになってしまうためあざみー視点からのセンター長に関する違和感や矛盾点も、そういうものとして流していいのか、ちゃんと引っ掛かりを覚えて考察したほうがいいのか判断をする必要が出てしまいます。(プレイ中の自分の視点では本当に千里眼であると示す描写はないのですが、考察が本当に千里眼でしたで覆される可能性がよぎるのはあまり読んでいて楽しくなかった点)

リアリティラインが不明瞭な状態を維持して進むことが、考察の邪魔になってしまう要素と感じてしまうことになりました。

事件そのものは解体できる都市伝説である、みたいな認識を中盤からは持てたわけで事件そのものについてはそこまで邪魔ではなかったかもしれません。(ドッペルゲンガーは邪魔になった
ただ、メインキャラであるセンター長の考察をする際にひたすら邪魔だった、ということで。


ついでにちょっとだけ、多重人格の犯人についても。

同一人物が服装や行動を変えることで別人になりすまし、一か所に同時には表れない状態で記録などを使ってアリバイを作り、複数人に見せかけるというトリックはそもそも、多重人格とは無関係によくあるネタです。

そのためSAMEJIMA管理人=センター長 については道中で大半のプレイヤーが思いつくことになると思いますが、センター長=あざみーについてはまぁ結構難しい……というか推理はほぼ無理筋なんじゃないかと思っています。
やけに脳内に出てくる、あざみーの見たものはなんでも把握しているなどのセンター長の特徴は脳内人格や幻覚の可能性を提示していますが、ジャスミン先輩もセンター長と面識はある様子や、SAMEJIMA管理人=センター長とするならば、実在し、行動している管理人がいる=センター長も実在するに傾いてしまい、一人3役の可能性には私は思い至りませんでした
そもそもセンター長とあざみーの通話をジャスミン先輩も聞けてる様子があったりとか、ジャスミン先輩がSAMEJIMA管理人の拠点に突入するときあざみー=センター長=SAMEJIMA管理人だとしたらどうやってそこまで? とか無視しづらい疑問点が多数出てきます

ただ、ストーリーの大筋には影響しないので、作中では無視して進んでいきます。



総括としては、



チェーホフの! 銃! という感じでした。



*題材(都市伝説という要素)

  • 都市伝説を題材にする作品、というのはホラー作品などで散見されるものです。

    また、ミステリなどでも怪談の見立て殺人などでテーマに都市伝説が扱われることもあります。

    そこにおいて本作、都市伝説解体センターは、タイトル通り都市伝説解体する……という作品なわけですが、全体の流れとしては




    ・怪現象を含む不思議な事件などが起きる 

    ・調査をし、不思議な現象が都市伝説の『〇〇〇〇』であることが判明する 

    「解明」

    ・調査の結果、今回の事件は人為的なものであることがわかる

    『解体』

    ~♪ 事実は不透明 どうせ底辺 (『奇々解体』が流れ出す)

    という流れですね。



    そもそもが事件は自分で根回しして起こした事件が……とかって話になるわけなんですが、題材として、海外の古くからある都市伝説から、国内の比較的新しいものまで見立てに活用しています。いますが……



    いうほど都市伝説感なくない? 
    となってしまいました。



    登場人物はセンター長を除いてオカルト素人が大半のため、なんだか妙なことが起きたとしか解釈されておらず、それを調べたうえでセンター長が

    「Great!」
    「Excellent!!」
    「Brilliant!!!」
    と、好き放題盛り上がった上でこれは都市伝説の『〇〇〇〇』!!! 

    「解明」

    とやってくれるんですが。

    なんせ被害者もあざみーもみんな詳しくないので、あざみーは漠然と怖がり、被害者たちも自分の問題を解決してくれという主張が先で都市伝説そのものへの興味が薄い。
    そのうえ、出てくる都市伝説もいまいちこれといった対策がないものが多く、特定はできたが『〇〇〇〇』にはこれをすると良い、などの広がりもない(異界は一応対策が出ましたが、言われたとおりにするって対策か……?)

    この際、口裂け女みたいな怪異であれば(もし知らない方は調べてね
    ・私、きれい? という質問にどう答えるか > 答えないでポマードと唱える
    ・出会ったらべっこう飴を投げる
    のような対処を提案するなどで
    のようなこの都市伝説ならばこうすれば対処可能! センター長の知見!みたいになるんですがそういう展開は基本的にありません。

    そのため、センター長が特定してくれた(マッチポンプですが)都市伝説の名前を事件関係者が知っても特に大きな変化はなく。
    なんなら都市伝説とか知らねえからさっさと依頼をこなしくれというようなキャラも現れ、そのまま進行し……

    『Fabulous!!!!』

    『解体』
    興味深い事件でしたね……

    となるわけです。

    ストーリー全体を通して都市伝説そのものに興味を持ったりビビったりしているのはセンター長・あざみーくらいなもの
    で、ジャスミン先輩もブラッディメアリーの鏡の時に被害者になった疑惑のときにはビビってくれましたがそれくらい。
    事件の関係者はだいたい興味が薄いことが多かった(SAMEJIMA管理人の指示を受けてる人らはもっとリアクションしてあげてもよかったんじゃない?)ように思います
    幽霊や呪い、怪現象そのものを恐れる人はいても、それが『〇〇〇〇』だと分かったからと言っても行動に変化は起きませんでした。

    例えば、コトリバコであればそれについて調べ>水子が入っていない! となったりするなどで都市伝説の解体のきっかけにも出来たはずなのですが……そういうのはありません。

    本作ではコトリバコというのは、「なんか人が死ぬ呪いの箱」くらいの扱いになっていました。


    用意したイルミナカードに合わせた事件をセンター長=SAMEJIMA管理人が、それに見立てられるように人為的に起こしていた事件だった、という話の筋書き……なのにその見立てに乗っかっているのが誰もいない(あざみーもびびってくれはするが由来や対処を調べようとはしてくれないので)ために
    変な事件にセンター長が都市伝説の名前をつけてそれを自分で解体しているだけ、のような構図になってしまっているのが本当にもったいなく感じました。


    タイトルやPV、体験版のベッドの下の斧男の序盤範囲などを見ていた限りでは

    ・怪現象が起きているという幻想に振り回されている被害者の事件に立ち向かい
    ・ある特定の都市伝説が原因であることが「解明」され
    ・その都市伝説を調査したり対策をしていくうちに違和感に気づき
    ・相違点から真実を『解体』していく……

    みたいなのを期待していたんですが。

    実際は
    ・怪現象に遭遇した被害者(大半はカス)が問題解決を依頼し
    ・センター長がそれっぽい都市伝説に事件を当てはめて「解明」!
    ・都市伝説でもなんでもいいから依頼をさっさと解決してくれと懇願され調査継続し
    ・人間の人為的に起こした事件でした。『解体』!

    だった感じでした。

    あとは、都市伝説ファイルをマスコットが解説してくれるコンテンツがあり、そこにはSNSで蒐集した都市伝説の名前と詳細が記載されているのですがまぁ内容がWikiやまとめの表面をなぞったくらいの量なのであんま語ることがそこにはないです。最後の最後にトシカイくんが出てきたのにちょっとイラッとしましたが

おわりに

あらためて総評

あらためて、本作の個人的な総合評価についてですが

雰囲気や世界観にこだわった、非常にキャッチーで魅力のあるゲーム

というのが感想です。
マジでボロカスに言っているところもありますが、こんな長文を書きたくなるくらいには心動かされる作品でした。

繰り返しにはなりますが、メインキャラやグラフィックス、サウンドなどについては素晴らしいですし、シナリオも後半の怒涛の展開、勢いある急展開の連続は細けぇことはいいんだよ! という気持ちで楽しめました。
個人的には都市伝説というテーマをもっと深く掘り下げたり、ミステリとして魅力ある謎の提示を期待していた部分がありましたが、これは私が勝手にハードルを上げていた部分でもあります。魅力的なキャラが事件に相対する部分に注目して見ていくのであれば本作は間違いなく名作です。

本作はネット上では好評を博しており、その評価については間違いないと思っているのですが、めんどくさいタイプのオタクとしては重箱の隅をつつくようなことを思わず口に出してしまうのでした。(けっこう隅にでっかい問題が転がってる気もしますが……

都市伝説解体センターは、インディーゲームというくくりの中では傑作と言ってもいいのかも知れませんね。墓場文庫さまの今後の作品にも期待しております。(過去作も買います)
















でも集英社が協力してんのにインディーって言うのもなんか違うくない!???!?


乱文でありましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。


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