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再掲【掌編】かりそめのえにし
また会えるだろうか。
また会いたい。
一見頼りなさそうな人だった。
とても華奢で、背丈も私とほとんど変わらないくらいで。
考えもなしにズンズンと突き進んでしまう私のことを、知らんぷりしているように見えるのに、ピンチになるとさっと前に出てかばってくれる。
目にも止まらぬスピードで問題を解決。そして何事もなかったかのようにまた知らんぷりのふり。
彼がついていてくれる。
そう思うと、私は普段以上にがんばれた。
どんどん歩いた。前に前にと進んだ。
整った顔にサラサラの黒髪のショートヘアをなびかせて、女の子みたいなのに。私が守ってあげなくちゃって、母性本能をくすぐるような人なのに。
背中はやっぱり男の子だった。守られているって、この人がいれば大丈夫って、安心できる背中だった。
どんなに困難でも、敵がどんなに強くても、私の前に飛び出してくれる彼の後ろ姿は頼もしかった。
いつの間にか、私は彼に夢中になっていた。
彼のことが好きだった。
分かっていたのに。長くは続かないこと。
分かっていたのに。一緒に居られるのは今だけだということ。
分かっていたのに好きになってしまった。
そしてお別れのときは来た。
「あと1分です」
システムが私と彼の短い残り時間を告げる。一緒に旅ができる時間は最大48時間と決まっていた。
登録された中からヘルプしてくれるメンバーを選び、旅をする。
仲間を求めても、いつでも同じメンバーが紹介されるとは限らない。次にも出会える保証はない。
彼のレベルがあがってしまえば、職業が変わってしまえば、どんなことをしても探し出すのは不可能かもしれない。
(ありがとね。また会いたいよ)
応えてはくれない彼に、心の中でお別れの言葉をおくる。
涙が出そうだ。
カランカラン。
鐘の音とともに彼の姿は消えた。
冒険はまだまだ続く。
仲間を求めて私はまた酒場に向かう。
「今日はどんな仲間を探しているの?」
紹介人が問う。
すぐには返事ができなかった。
また彼に会えるだろうか。
また会いたい。
(了)
*以下、本文とは関係なく。。。
この掌編は2014年に、大好きなゲームへのオマージュ作品として書いたものです。
小説のnoteへの載せ方について考えていて、行間を多めに記載するテストを兼ねて再掲しました。
最初の掲載はこんな感じです。
パソコンやスマホで横書きで読む、note内の小説として、以前の載せ方よりも読みやすいかしら?
あまり文章を読むのが得意でない人でも、読んでみようかなって気持ちに、今回の方がなってもらいやすいかしら?
あまり変わらない?
そんなことを考えつつ、初出しの作品掲載についての検討をいたしております。
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