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ねこのたまご【お試し読み】


ぜひぜひ、お試し読みしてください!


ねこのたまご


 しましまがやって来たのは、思いがけず土砂降りになった日だった。

 それまでさんさんと降り注いでいた太陽が、突然、姿を消した昼過ぎ、ザーッと降り始めたスコールのような雨は、簡単には止みそうになかった。

 部屋干しになってしまった洗濯物が部屋を圧迫している。散らかし放題だった部屋を片付け、溜め込んでいた洗濯をやっつけ終わった途端の雨だった。久しぶりの休日に、わざわざ傘を差して出掛けるというのも億劫だ。幸い、どうしても済ませなくてはならない用事もない。それならば、と僕は昼寝をすることにした。

 ここのところ蒸し暑い日が続いている。梅雨も半ばといった六月の終わりだから、これもまた突然の大雨とおなじく、どうしようもない。僕は窓を開け、両手を空に向けて差し出した。

 全神経を手のひらに集中させる。雨は当たらない。僕の手の届かないところで地面に向けてまっすぐに落ちていくだけのようだった。それでもしばらく手を伸ばしてジッとする。雨音を近くに感じた。

(これなら大丈夫)

 たっぷり数分のあいだ、雨が吹き込まないことを念入りに確認してから、僕は窓を大きく開け放って昼寝をした。

 そうして目が覚めたらトラ猫がいた。僕につかず離れずの絶妙な空間を設けて、バナナ型になって寝転んでいる。驚いた僕が身体を起こすとトラ猫は片目を開けた。

 そのトラ猫の仕草を、僕は「いいな」と思った。特別に猫が好きだというわけでもないし、特にかわいらしいトラ猫だったわけではないけれど、単純にこの状況を「いいな」と思う。

 僕はトラ猫をそのまま寝かせておくことにした。

(雨が止んだら勝手に出ていくだろう)

 トラ猫には構わず自分だけ起きて、パソコンに向かう。窓は開けっ放しのままにしておいた。


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ちょこ
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