実用化で電気代が半分以下になる、完全国産の次世代薄膜「ペロブスカイト太陽電池」が熱い!

【投稿者コメント】

【キーワード】

[電気代が半分以下に]、[23%の光電変換効率]、[どこでもいつでも発電]

【件名】

「薄くて軽くて雨でも発電出来る、完全国産の次世代薄膜「ペロブスカイト太陽電池」が熱い!/実用化で電気代が半分以下になる!/都市全体が"発電所"になる、どこでもいつでも発電!」

【投稿本文】

 下記の【以下転載】の報告は、『薄くて軽くて雨でも発電出来る、完全国産の次世代薄膜「ペロブスカイト太陽電池」』の報告だ。

 発電効率が高く、軽量でかつ曲げる事が出来て、大量生産が可能になればコストも安くなり、原材料は輸入に頼る必要がないと云う、まさに、理想的な、国産技術が、国の内外から注目を浴びている。(添付図12)

 「ヨウ素と鉛の結晶」のペロブスカイト結晶を有機溶剤に溶かして、3Dプリンターで薄膜にして、オープンで乾かして、出来た薄膜シート状の「ペロブスカイト太陽電池」を帽子のツバに縫い付けて、ポータブル音響機器やスマホへ給電すれば、曇りの日でも室内でも発電可能になるばかりか、街中の建物の壁面や窓に貼り付けた「ペロブスカイト太陽電池」だらけにすれば、曇天でも発電可能だから、CO2削減にも、災害に備えた蓄電にも役立つ。

 原料のヨウ素と鉛は、国内で調達可能であり、日本のお家芸の「薄膜技術」を加えれば、太陽光発電の分野で、世界の先端を走る事も可能だ!

 ここは、せっかくの純国産技術の「ペロブスカイト太陽電池」と云えども、「半導体や蓄電池、シリコン系太陽電池の失敗」の轍を踏んではならない!

 当初は技術的に大きなアドバンテージを持ちながらも、巨額の投資を躊躇したり、戦略を誤ったりした結果、中国や韓国、台湾などとの競争に敗れて、国際的な競争力を失ってきた苦い経験がある。

 ここは、経産省や有力企業や理研、産総研、NEDOの研究機関等の日本の総力を注いで、さらなる発電効率化と大型化と応用分野の開発を目指した「実用化研究」と「応用開発」を加速・推進する必要がある!

添付動画_「日本で発明された次世代太陽電池 軽くて薄くて折り曲げられる「ペロブスカイト太陽電池」の実力 都市全体を"発電所"に」
https://www.youtube.com/watch?v=ADzXL-fpj28

■従来の太陽電池に匹敵する発電効率

 脱炭素社会の実現に向けて、重要性を増す再生可能エネルギーの活用。今、その主役のひとつである太陽光発電の可能性を大きく飛躍させる日本発の画期的な技術が注目されている。それは「ペロブスカイト太陽電池」だ。

 現在、太陽光発電の主流となっているシリコン系太陽電池とほぼ同等の発電効率を実現しながらも、安価で軽く、薄いフィルム状にも出来るので、曲面でも使用出来るのが大きな特徴だ。

 2009年に桐蔭横浜大学の宮坂 力教授の研究グループが、ペロブスカイト太陽電池に関する最初の論文を発表した。

 当初は余り注目されなかったが、現在では次世代太陽電池の本命として世界各国が研究開発にしのぎを削るまでになり、既に一部の国では実用化もスタートしている。

 今後、本格的な実用化が進んで、世界で広く普及するようになれば、太陽光発電の活用の幅が大きく広がると期待されている「日本発のイノベーション」だ。

 この技術の生みの親で、ノーベル化学賞の有力候補にも名前が挙がる先述の宮坂特任教授が語る。

 『ペロブスカイト太陽電池は、化学の技術を応用して生まれた次世代の太陽電池です。ペロブスカイトと云うのは物質の名前ではなく「ペロブスカイト型」と云う結晶の形の名前です。

 ペロブスカイト結晶を有機溶剤に溶かしてインクの様に均一に塗れば太陽電池が出来る。

 特定の組成を持つペロブスカイト結晶を半導体材料に使うと、光のエネルギーを電気エネルギーに変換する高い機能を持ちます。主な材料は、ヨウ素と鉛の化合物です。

 今から15年ほど前、ペロブスカイト結晶に電圧をかけるとLEDの様に発光する性質がわかっていて、これを調べていた大学院生が、「逆に光を結晶に当てれば電気が生み出せるのでは?」と試したのが発見のきっかけでした。』

 当初は、シリコン系太陽電池の5分の1程度の発電効率だったのが、今ではシリコン系とほぼ同等の発電効率を実現出来ていると云う。

 「この技術の最大の特徴は、ペロブスカイト結晶が「有機溶剤に溶ける」と云う点で、溶剤に溶かした液体をインクの様に塗って乾かすだけで太陽電池が出来る。

 その為、例えば薄いプラスチックのフィルムにインクジェットプリンターで印刷すれば、しなやかに曲がる軽量な太陽電池を作れる。

 こうした「軽くてペラペラの柔らかい太陽電池」の開発の試みは他にもあったが、いずれも発電効率が低くて、普及しなかった。

 その点、ペロブスカイト太陽電池は現在、主流となっている高効率のシリコン系太陽電池に匹敵する20%以上のエネルギー変換効率を達成している。

 現在、主流となっている高効率のシリコン系太陽電池に匹敵するエネルギー変換効率を達成している。

 『近い将来、大量生産が可能になれば、シリコン系太陽電池の半値以下と云う安価な太陽電池が実現出来るので、本格的な商業化に向けた開発競争が激化している。』(宮坂氏)

■【メリット1】薄くて軽いから曲面にも使える

 ペロブスカイト太陽電池の何がスゴイのか? まずは、最大の特徴である「軽さ」と「しなやかさ」だ。

 現在、メガソーラーや住宅の屋根に設置する家庭用太陽光発電で使われているシリコン系太陽電池は、約140℃という高温溶融法で作ったシリコン結晶の硬いウエハーを重たいガラス基板に保持して使うので「軽くて柔らかな太陽電池」は作れなかった。

 ところが、ペロブスカイト太陽電池は、材料を液状にしてフィルム等の柔らかい素材に印刷する事で、「薄くて、軽くて、フレキシブル」な太陽電池が出来るので、太陽光発電の活用範囲が大きく広がる。

 「フィルム状にしたペロブスカイト太陽電池は軽量で柔らかく曲面にも使えるので、これまで太陽電池の設置が難しかった建物の壁面や窓などでも発電が可能になり、近い将来「建物全体が発電する」と云った事も可能になる。

 これまでは太陽電池の設置が難しかったビルの壁面や窓、看板などにペロブスカイト太陽電池を張り付けて発電する社会が来るかもしれない。

 又、今後、車の電動化が進む中で、ペロブスカイト太陽電池を自動車の車体や窓などに張り付ければ「発電する車」になる。

 フィルム状の太陽電池なら、古くなった車のバッテリーを交換するのと同じ様に、耐用年数を超えたら張り替えるだけで済むという点も魅力だ。

 フィルム状のペロブスカイト太陽電池は曲面にも張り付けられるのが大きな特徴だ。車の車体、信号機のカバー、電柱などでの活用も可能だ。

 「より小規模な活用方法としては、キャンプなどのアウトドア用品や、日中、野外で作業する人のファン付きの服を、服に縫いつけた太陽電池を使って動かすと云う使い方も考えられるます」(宮坂氏)

 スマホやタブレットはもちろん、メガネ、腕時計、ファン付き衣服など、身に付ける物でも発電が可能になるかも。

 こうした「軽くてしなやか」と云うペロブスカイト太陽電池の特徴を生かせば、「街中のあらゆるものが発電する」と云う時代がやって来るかもしれない。

■【メリット2】弱い光でも発電!室内でも利用出来る

 利点2は、一般的なシリコン系太陽電池に比べて「弱い光でも発電出来る」と云う点だ。用途によっては、室内や電灯などの光でも利用出来ると云う。

 「屋外に比べて、屋内の光の強さは500分の1ぐらい」と云われている。

 シリコン系太陽電池の場合は、どんなにシリコンの純度を高めても、光が弱くなると急激に発電効率が落ちると云う弱点があり、明るさが晴れた日の10分の1程度になるだけで、電圧が大きく下がるので、屋内での活用は不可能だった。

 その点、ペロブスカイト太陽電池は光が弱くなっても、シリコン系に比べて、電圧の落ち込み方が緩やかだと云う特徴がある。

 ゆえに、日陰や角度的に太陽光を効率よく受けられない建物の壁面や窓でも、安定した発電能力が期待出来るし、大きな電力を必要としない用途なら、室内の弱い光でも活用が可能だ。室内照明のもとでは、発電効率は34%まで高まると云う。

 屋内のLED照明は可視光しか出さないので、これを効率的に集光出来るペロブスカイト太陽電池は、屋内の環境で効率が大きく上がる。

 この特徴を生かせば、屋内で使用する電子系のデバイスや、IoTの広がりで、家電など暮らしの中にある様々な機器に取り付けられたセンサーや通信機能を、コンセントの電力や電池を使わずに利用出来る様になる。

 さらに、ペロブスカイト太陽電池は薄い半透明のフィルム状にも出来るので、メガネのレンズなどに張りつければ「発電するサングラス」になり、ウェアラブル端末などの電源供給にも役立つ。

 又、従来のシリコン系太陽電池と弱い光にも強いペロブスカイト太陽電池を組み合わせた、発電効率を30%前後まで大幅に高めた「タンデム型」の電池開発も進められていると云う。

■【メリット3】「完全国産化」が実現!

 メリット3は、ペロブスカイト太陽電池は、日本にとって大きな利点がある。それは、主な材料となるヨウ素と鉛をすべて「国産」で賄えて、レアメタルなどの希少で高価な材料を必要としないと云う点だ。

 実は、日本のヨウ素の産出量は、南米のチリに次いで世界第2位で、世界シェアの約3割を占めるヨウ素大国だ。その大部分が千葉県の天然ガス鉱床から産出されていて、何と埋蔵量は、世界の3分の2とも云われている。

 もうひとつの主な材料である鉛も国内で賄えるので、主な材料を輸入に頼らず、全て国内で調達出来ると云う点もペロブスカイト太陽電池の強みだ。

 それと同時に、より環境への負荷が少ない「鉛フリー」のペロブスカイト太陽電池の実現に向けた研究も進められており、2017年には、理化学研究所がスーパーコンピュータ「京」を使って、鉛より毒性の低い51種類の代替材料の候補を発見している。

 又、こうした材料面だけでなく、日本には高品質なペロブスカイト太陽電池の製造に欠かせない「薄膜」を作る為の基礎技術があり、そのふたつを組み合わせれば、国際的な開発競争の中で、日本にとっては大きなアドバンテージとなる。

■失敗を繰り返さずに、日本が世界をリードする為に

 既存のシリコン系太陽電池に匹敵する発電効率を実現して、しかも室内などの弱い光でも発電可能で、軽くて薄くて、曲面にも使用できて、その上価格も安い・・・

 ここまでの話を聞くと"いい事ずくめ"のペロブスカイト太陽電池だが、本格的な実用化に向けては幾つかの課題も残されている。

 日本が国際競争から後れを取らない為にも、企業は今こそアクセルを思い切り踏む事が重要だ。

 ひとつは耐久性の問題で、現時点ではまだ20年以上と云われるシリコン系太陽電池と同等の耐久性が実現出来ていない事だ。

 もうひとつは、大量生産の過程で製品の品質を安定して高いレベルで実現し、「歩留まり率」を高める生産技術の確立だと云うが、既にポーランドやイギリス、中国などの企業はペロブスカイト太陽電池の商用化に踏み切っている。

 そうした中、日本でも経済産業省やNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)や産総研(産業技術総合研究所)などの支援も受けながら、東芝、積水化学工業、アイシン、カネカ、パナソニックHDなどの企業が商用化に向けた開発を加速させており、積水化学はJR西日本が2025年に全面開業を予定する大阪の「うめきた(大阪)地下駅」の広場部分に、同社のペロブスカイト太陽電池を設置すると発表した。

 元々が、日本発のイノベーションなだけに、何としても世界をリードしてほしいが、世界的な開発競争は激化しており、中でも中国企業は、この分野に巨額の投資を行なっている。

 ちなみに、日本には半導体や蓄電池、シリコン系太陽電池などの分野でも、当初は技術的に大きなアドバンテージを持ちながらも、巨額の投資を躊躇したり、戦略を誤ったりした結果、中国や韓国、台湾などとの競争に敗れて、国際的な競争力を失ってきた苦い経験がある。

 ペロブスカイト太陽電池を巡る国際的な開発競争で、日本が又、これまでと同じ様な失敗を繰り返さずに、この技術で世界をリードする事は出来るのか?

 「ペロブスカイト太陽電池の実用化、商用化に向けた最大の課題は、大量生産に向けた製造技術の確立であり、日本の企業は高品質なペロブスカイト太陽電池の製造に必要な薄膜を作る技術に関しては、世界トップレベルの技術やノウハウを持っている。

 その技術的な優位性を生かす為にも、今、このタイミングで思い切りアクセルを踏む事が重要であり、企業がそこに向けて思い切った投資をすれば、日本にはまだ世界をリード出来るチャンスが十分に残されている。

 もうひとつ大事なのは、ペロブスカイト太陽電池を私達の生活に活用する為のこれまでにない斬新なアイデアを考える事だ。そうして積極的にニーズを生み出していく事が、技術開発や投資を加速する事につながる。

 軽くしなやかな太陽電池と、柔軟なアイデアの組み合わせの向こうに見える街全体が発電する未来の社会!日本発のイノベーションの今後に注目したい!

●宮坂 力(みやさか つとむ)
 桐蔭横浜大学 医用工学部臨床工学科 特任教授。東京大学大学院工学系研究科修了。富士写真フイルムの主任研究員を経て、2001年より桐蔭横浜大学大学院工学研究科教授に就任、2017年より現職。2020年より早稲田大学先進理工学研究科の客員教授も務める。新刊の自伝「大発見の舞台裏で! ペロブスカイト太陽電池誕生秘話」では、ペロブスカイト太陽電池で日本が勝つ為の戦略を主張している。

【以下転載】

https://www.nhk.jp/p/zero/ts/XK5VKV7V98/blog/bl/pkOaDjjMay/bp/pwvox6A81j/
「ペロブスカイト太陽電池 実用化への道!薄くて軽くて雨でも発電!?」
                  NHK 2022年9月20日 午後2:00 公開

 人類が直面しているエネルギー問題を解決し、脱炭素社会を実現するため、再生可能エネルギーの活用が加速しています。その中で大きな期待を集める「太陽電池」ですが、従来型の太陽電池は、発電効率が天候に大きく左右され、曇りや雨の日だと発電量が大幅に落ちるという弱点がありました。その弱点を克服しようと、今、世界中が「次世代型太陽電池」の開発に注力しています。

 その中で、最も注目されているのが、「ペロブスカイト太陽電池」です。曇りや雨の日、さらに室内の弱い光でも発電することができることに加え、薄くて軽いため様々な場所に設置することが可能で、世界中の企業が実用化に向けた開発にしのぎを削っています。
 実は、このペロブスカイト太陽電池は日本人研究者が開発したもので、そのきっかけは学生からの相談という意外なものでした。“ノーベル賞候補”とも言われるほどの画期的な太陽電池の開発秘話と可能性に迫ります。

添付図1

■世界が注目! ペロブスカイト太陽電池の実力

 地球に降り注ぐ太陽のエネルギーを全て電気に変換できれば、世界中で使うエネルギーをまかなえるほどのポテンシャルがある「太陽光発電」ですが、現在の主流となっている「シリコン」を用いた太陽電池は、寿命が長くて、発電効率が高いという利点がある一方、天候によって発電効率が大幅に落ちるという弱点を抱えていました。

 その弱点を克服しようと開発が進められているのが「次世代型太陽電池」です。その市場規模は、2035年には現在の10倍以上、年間8,300億円にまで成長すると予測されています。そして、その大部分を占めると考えられているのが「ペロブスカイト」を用いた太陽電池です。

添付図2

 ペロブスカイトというのは、もともと自然界にある鉱石です。その結晶構造に特徴があり、利用価値が高いため、人工的に作ったものが超電導やLEDの材料などに使われています。

添付図3

 この人工的に作ったペロブスカイトの結晶を太陽電池の素材に使うと、曇りや雨の日、さらに室内の照明でも発電できることが発見され、次世代型太陽電池の最有力候補となったのです。そして、弱い光での発電を実現させているのが、ペロブスカイト太陽電池のもう一つの特徴である“薄さ”です。

添付図4

■「薄さ」のおかげで曇りでも発電可能

 太陽電池は、材料に半導体が使われています。半導体は光を吸収すると、電子(マイナスの電荷を帯びている)と正孔(プラスの電荷を帯びている)がセットで生まれ、それらが別々の電極に移動していくことで電流が流れて発電する、という仕組みです。このとき、電子や正孔の移動距離が長ければ長いほど、それらが電極まで到達できずに損失となります。

添付図5

 従来型のシリコンの場合、太陽電池パネルを薄くすることに限界があるため、光を吸収して生じた電子や正孔が電極まで非常に長い距離を移動しなければなりません。強い太陽光が当たっていると問題なく発電できますが、曇りなどで光が弱くなると、生じる電子や正孔が少なくなるため、影響が大きくなります。

 一方、ペロブスカイト太陽電池は光を吸収する力が強く、非常に薄い0.1マイクロメートルでも電池として使えるため、電子や正孔の移動距離が短く、ロスがほとんどなく電極に到達できます。そのため、太陽光の500分の1程度の強さの光である室内の照明でも発電ができるのです。

添付図6

 また、ペロブスカイト太陽電池が非常に薄いことは、弱い光で発電できること以外にも大きなメリットがあります。フィルム状の曲げられる太陽電池も作ることができるため、様々な場所に使うことができるのです。

 自動車メーカーでは車体に貼り付けてソーラーバッテリーに使うアイデアや、家電メーカーでは室内のIoT機器の電源に使うというアイデア、建築分野では建物全体に貼り付けて発電するアイデアが提案されるなど、様々な業界でペロブスカイト太陽電池を使う構想が練られています。

■開発のきっかけとなった“学生の声”

 この画期的な太陽電池の生みの親は、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授です。宮坂さんがペロブスカイトと出会ったのは、今から17年前のことでした。当時、ペロブスカイトは超電導やLEDの材料などには使われていましたが、太陽電池の世界ではほとんど知られていませんでした。

 「開発する前はペロブスカイトという物質に私はあまりなじみがありませんでしたが、私の研究室に来た大学院生が突然『ペロブスカイトによる太陽電池をやってみたい』と言いだしたのです」(宮坂さん)

 当時、大学院生だった小島陽広さんは、もともとペロブスカイトの特性を調べる研究をしていましたが、その光を吸収する性質に注目し、もしかしたら光を電気に変える性質を持っているのではないかと考え、宮坂さんに相談を持ちかけたのです。

 「私は基本的には学生がやりたいと言ったことは『まずは試してみるべき』という考えでしたので、軽い気持ちで『じゃあ、やってみたら』と言いました。しばらく実験をした後、小島さんから『光を当ててみたら微弱な電流が生じた』という報告を受けたのです」(宮坂さん)

添付図7

 それまで太陽電池の素材としては注目されていなかったペロブスカイトが、発電すると分かった瞬間でした。しかし、いざ本格的に太陽電池の研究開発に着手したところ、すぐに大きな壁にぶつかったといいます。

 「本腰を入れて太陽電池を作ったのですが、なんせ安定性が悪く、しばらく光を当てると発電しなくなるんです。しかも効率も低くて、正直、これはダメかなと思っていました」(宮坂さん)

 実際、2009年に発表した論文は、光を電気に変える効率(光電変換効率)が低いために、世界の研究者からの反応はほとんどありませんでした。

 転機が訪れたのは2012年のことでした。ペロブスカイト太陽電池に関心を持った海外の研究者が、「発生した電気を電極に運ぶ部分を液体から固体に変える」という研究を始めたのです。これにより光電変換効率を3%から10%を超えるレベルにまで上げることに成功しました。その成果を『サイエンス』誌に発表したところ、世界中の研究者の目に留まり、ペロブスカイト太陽電池は一気に注目される存在となったのです。

添付図8

 そして、世界中で研究が重ねられた結果、変換効率は飛躍的に向上し、従来の太陽電池に匹敵する25%を超えるまでになったのです。今や世界中で推定3万人ほどの研究者がペロブスカイト太陽電池の研究開発に参入し、実用化に向けた開発競争が激化しています。
 宮坂さんは、ペロブスカイト太陽電池がこれほど世界から注目される存在になったことに驚きながら、こう振り返ります。

 「ペロブスカイトは化学と物理という異分野が交わっているテーマです。私たちは化学が専門ですが、物理にも手を出す。不得意でも試してみるというチャレンジ精神が非常に大切だと思ったからです。難しいとは思っていましたが、誰もやっていなかったことだからこそ、チャレンジしがいがあると思ってやりました。やってみてよかったですね」(宮坂さん)

■実用化に向けた開発競争の今

 宮坂さんは、ペロブスカイト太陽電池は“実用化の入り口”に入ったと考えていますが、実用化のためには大きな課題が残っています。それは「大型化」と「耐久性」です。

 日本のある化学メーカーでは、2025年までに実用化することを見据え、大型化を実現しようと研究開発を急ピッチで進めています。大型化が難しいのは、安定して高い効率で発電するために、太陽電池の面に均一にペロブスカイトの結晶を並べる必要があるからです。面積が小さい場合は均一に並べることができても、面積が大きくなるにつれ結晶にばらつきが発生し、効率が落ちてしまうのです。

 このメーカーでは均一に作る技術を磨き、30センチ角であれば結晶のばらつきを抑えて十分に高い効率で発電できる太陽電池を作る方法を確立しました。そして、これを組み合わせることで1メートル角以上の大型の電池の実用化を進めようと考えています。

添付図9

 また、ペロブスカイト太陽電池は、物質としての安定性が低く、劣化が早いため耐久性に課題がありました。この課題を解決する方法として、このメーカーでは、耐久性が高いシリコンの太陽電池にペロブスカイト太陽電池を重ねるという「タンデム型」の太陽電池の開発も行っています。

 このタンデム型にはもう一つ大きなメリットがあります。ペロブスカイトとシリコンとでは、それぞれ吸収する光の波長帯が異なるため、二つを組み合わせることで、より広い範囲の波長の光を無駄なく使え、変換効率を高めることができるのです。

添付図10

 このメーカーでは、タンデム型はバルコニーや壁面に設置し、ペロブスカイト太陽電池は透明タイプで窓ガラスに貼り付けるなどして、太陽電池を建物のさまざまな場所に張り巡らせたいと考え、開発を続けています。

添付図11

 宮坂さんは、シリコンとペロブスカイトの太陽電池がこれから共存していく将来を考えています。

 「晴れた日にはシリコンを使って、曇った日はペロブスカイトが補助する。また、シリコンが使えない窓や壁などはペロブスカイトを使っていくと。両方が共存していくことで、総エネルギー量を高めていくというのが今後の方向性だと思います。実用化される未来はそんなに遠くないと思います。場合によっては、数年先には商品化が始まると思っています」(宮坂さん)

 一人の大学院生のアイデアとそれを尊重する宮坂さんのチャレンジ精神によって誕生した次世代型太陽電池が、実用化への課題を克服し、地球のエネルギー問題を救う日が来るかもしれません。日本生まれの画期的な新技術の今後に期待が高まります。

いいなと思ったら応援しよう!