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『決定版 マインド・コントロール』紀藤 正樹 著

もう、20年以上前の話になるが、僕の身近な人が、仏教系の新興宗教にハマっていたことがある。
その際に、なんとか力になることはできないかと、カルトについて勉強したことがあり、今でも当時読んだ本を何冊か手元に残してある。

中でも勉強になったのが、『なぜカルト宗教は生まれるのか』(浅見 定雄)と、『マインド・コントロールとは何か』(西田 公昭)である。

前者は1997年発行の本であり、オウム真理教と統一教会について詳しい。安倍晋三元首相の銃撃事件以来、メディアから引っ張りだこの有田芳生氏も、「新々宗教と文化人の責任」と題する章の構成を担当している。

後者は1995年発行の本であり、社会学者らしく、社会心理学的立場からのマインド・コントロールの技術や原理について詳しいが、欧米の事例の紹介が多いため、少し身近さには欠ける。

そして、今回、読んだ紀藤氏の本書。カルト宗教やマインド・コントロールについての細かなところは省かれているが、被害者救済のために長年活躍されてきた弁護士さんらしく、被害者側の立場に寄り添った視点で、よくまとめられているように思う。
カルトやマインド・コントロールについて、まずは、浅く広く知りたい、学びたい方には、適した本である。

プロローグに続く第1章では、マインド・コントロールとは何かについて書かれている。どんな行為が違法なのか、どんな人がひっかり易いのか、マインド・コントロールの際に、駆使される心理テクニック等が書かれている。

本noteの前に『影響力の武器』について3回に分けて書いたが、『決定版 マインド・コントロール』の中でも、相手を思い通りに動かす6つの原理として紹介されている。相手は、こういった心理テクニックを駆使してくるので、うっかりと話を聞いてしまうと、どんどん相手の術中にはまることになる。まさに、思う壺である。

第2章では、霊感商法で使われるマインド・コントロールの手口について書かれている。統一教会、法の華三法行等で使われている実際の手口が書かれているので参考になる。

この中で、勧誘方法の4つのルートが紹介されていた。
①訪問
②該当
③FF(ファミリー&フレンド)
④広告
の4つであるが、統一教会では、すべてを駆使して勧誘しているらしい。

統一教会の広告なんて見たことがないよ?と思われる方がいるかも知れないが、彼らは、名前を隠すので、そうとは気付かずに目にしていることもあるだろう。

通信販売の広告で何かを購入する。
そういうことをきっかけに勧誘が始まることがある。

オレオレ詐欺やフィッシング詐欺でもそうだが、こういう手口があると知っているだけで、予防になるのではないだろうか。

第3章では、具体的なカルトの手口が紹介されている。知らないような事件がいくつか紹介されており、参考になった。

第4章は、脱マインド・コントロールの手法について書かれている。基本的には、専門家に任せるのが良いようである。もし身の回りに、ハマっているような人がいれば、教えてあげていただきたい。

この章で、「引き離し」について書かれている。
引き離しは、本当に気をつけないと、逆効果になるので気をつけたい。

冒頭の話に戻るが、かつて、知人がハマっていた新興宗教の教義(宗教の教え)について、調べたことがある。
すると、「迫害を受けるのは正しい宗教である証」という教義になっていて驚いた覚えがある。だから、無理に引き離そうとすればするほど、信者は、宗教にしがみつくことになる。

オウム真理教は、誰が見ても違法な事件を起こした。それでも、今もなお信者がいるのは、自分たちは正しいことをした。私達を責める世間がおかしい。迫害を受けているのは、正しい教えの証だ。そう考えている信者も一定数いるということだろう。

統一教会を始めとする他のカルト宗教も、そんな教えが含まれている可能性があるため、よく知らない状態で、引き離し等の行動に出るのは、やめておいた方が良いだろう。

「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」
自分の身を守るため、そして大切な人を守るためにも、この機会に本書を手にとってみてはいかがだろうか。

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