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まつげの長いいとこ。鹿児島にて

 花嫁さんは綺麗だった。綺麗だったって話を、帰って来て整体師さんにしたら
「へぇ~、やっぱりいつか自分って思いました?」
 と陽気に言われて私は動揺しました。ただ純粋に、花嫁さんの美しさ可愛らしさに感動しただけなのに。そうか、女がそれを口にすると、他人には憧れと捉えられるのだ。無理もないよね、他人に純粋な感動を吐露した私が幼すぎたんだ。

 花嫁さんの隣に、私のいとこがいたんです。高校生以来会っていなかったいとこが結婚した!すごい!私たちは大人になったんだ!
 遠目からでも、相変わらずまつ毛が長いのが確認できました。まつ毛の長いいとこ、祖父のお葬式の夜に大富豪をしたのが最後だね。久しぶり、おめでとう。
 噴火する桜島をバックに挙げられた結婚式。「結婚式といえば・・」と想像していた全てが目の前で繰り広げられました。夢かと思ったよ。

 まつ毛の長いいとこは、性別が違うのもあって小さい頃仲良しだったわけではない。でも、同世代の男子に苦手意識が強かった私が出会い頭に「よう」と挨拶できるくらい、馴染んでいた。いい奴なんだ、披露宴が終わって、式場出る時しかサシで会話できなくてちょっと残念。花嫁さんが可愛すぎて、式場出る時にいとこの目の前で「可愛いです」と口説いてしまいました。それくらい可愛かった。

 鹿児島には、高校の修学旅行でちょっぴり寄っただけ。ふらっと入った喫茶店の定食についていたさつま揚げが美味しすぎてびっくりした。おでんに練り物はいらない派の私ですが、この美味しさにはにっこりです。
 まだうつ病の気が残るなか、姉と二人で動いた二泊三日。「一回休みたい」が通じる仲で良かったと思う。飛行機降りたら、搭乗口のベンチで数十分休みたい。披露宴終わったら、ホテルについたら、次の用事まで数時間寝たい。

 鹿児島に着いた日。飛行機のぎゅうぎゅう詰めに疲れた私たちは、都市に一発で行けるでっかいバスに乗るのを嫌がりました。Googleマップを駆使して、小さいバスと電車で都市まで行ったのです。
 鹿児島は南だけど、東京より暑さが優しかった。私たちは美しい無人駅で小一時間電車を待ちました。何もかもが美しかった。姉はたばこを吸い、私はそこら中を駆け回って猫を探しました。そう、その駅は観光大使を務める猫が代々務めている駅だったのです。猫の名前はにゃん太郎。ご飯とお水と毛布が敷かれた小屋はもぬけの殻で、どこを探せど彼の姿は見つからない。壁にひっついて地面に喧嘩を売っているカマキリしか見つからない。

駅名の読み方を忘れた
さんちゃんは先代のお名前


マジでずっといた



 駅舎と向かい合うように、何か作業をしているおじさんたちの建物がありました。ずっとラジオがかかっていて、風に乗って女の歌声が流れてきて、空気が鼻歌を歌っているみたいだった。軽やかなワンピースを着ていたのもよかった。私はトトロのメイよろしく、駅の周りを駆け回りました。軽トラックの下で眠る子猫を二匹見つけましたが、ついににゃん太郎はおらず。にゃん太郎はアイドル猫だから、きっとご近所さんが家に上げてくれてるんだ。クーラーの効いた部屋でにゃんごろしてるんだ、うっうっ。

人間が長居できない場所にいた

 真夏の大冒険。でっかいバスに乗らなくてよかった。大変だったし不安だったけど、楽しかった。
 帰って来てから、一人旅をしたくなってしまった。北海道とか行きたいね。車の免許が取れていたら、もっと冒険できるんだろうな。

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