同時に句集を読む会「芝不器男句集」
同時に句集を読む会とは
ひうまさんの「同時に句集を読む会」に参加しています。
会に参加する人がそれぞれ同時に同じ句集を読み、その中から十句選ぶという企画。
今回読むのは「芝不器男句集」。
句集は、ひうまさんが縦書きにしてくださった青空文庫のものを使わせていただきました。
私には難しい漢字や、知らない単語が多かったので、村上鞆彦さん著「芝不器男の百句」を参考に読み解きました。
では、わたしの十選と所感です。
芝不器男句集より十選
繰り返しの「ぞ」から春間近といったわくわくした気持ちが伝わってくる。
土と雪の匂いが入り混じる山は、深呼吸したくなる気持ち良さだろうと思う。
白藤の花にみどりがさしているのか、葉のみどりか。
揺り止んだ後の静寂に白藤が広がって美しい。
軽く歩き出した馬にぐっと力が入り、それから麦車がガタンと動き出す。
砂埃を残して山盛りの麦が運ばれていく。
山ならではの大きな縞蚊が澄んだ空気の中を漂っている。
それを打たずに口を漱いでいる、のんびりした山の朝。
急に立ち上がると目の前がおかしくなることがあるけど、そういう錯覚なのかもしれない。
落穂の大地に見上げる大きな日暮れの豊かさ。
きしきしとみじろぎをしてしっくりくる位置に落ち着く。
秋のあたたかい日差しの中、これから何をするのか想像が膨らむ。
入院中の句らしい。
窓際のベッド、たとえば手できつねを作ってみる。
病院の白いシーツにうまくきつねが現れるように、何度か手首を返す。
そうしている間、少し病気のことを忘れられるのかもしれない。
「病室にて」の前書きがある句。
切る場所に少し迷ったが、夜長と読んだ。
私もがんになった経験があるが、病気になると普段の生活が宝物のように思える。
あのときのなんでもない夜長を、光り輝く星のように思ったのか。
鴨に集中した五感が、パンと打った途端に解放される。
鴨をうつまでの緊張感と、それが解けた瞬間の心の動きが俳句の中に過不足なく収まっている。
冬のまぶしい日差しの中にぶわっと舞う炭が美しい。
美しいか否かは相対的なのだと再確認する。
山での暮らしを詠んだ句が多いが、どれも山を楽しんでいる様子が伝わる。
病床の句は、どの句も不器男のまなざしが見えてくるようだった。
俳句を読むということが、少しできたと思う。
秋の夜にそつと受け取る手紙かな むゆき
拙い文章を読んでいただいてありがとうございました。