世界の再構築者は3匹の猫耳少女に殺される!? 2-10 3匹+α③

「……猫耳?」

 俺を取り囲む3人の頭には、確かに猫の耳を思わせる物体が付いている。
 母親がオカルトマニアなら子供はコスプレマニアとなると、かなり複雑な家庭状況を想像してしまう。

 その他に特徴はないかと3人それぞれの容姿を改めて確認する。

 まずは俺の右側に立っている赤髪の少女は、おそらく1番目に部屋に入ってきたお嬢様口調の子であろう。
 顔は口調通り凛々しく、歳は俺と同じぐらいか少し下に見えるが、その口調から年上の印象を与える。
 その髪は母親と髪色は違えど同じように艶やかで長く気品がある。

 次に、俺の背後に立っている青髪の少女は、その冷たい印象からも2番目に部屋に入ってきた子であろう。
 俺の顔をあたかも嫌いな虫を見るかのように顔をしかめて見ている。
 背後にいるので更に恐怖が増す。
 髪は肩にかかる程度で、妹のスズと同じぐらいの長さだ。

 最後に、俺の左側に立っている黄髪の少女は、おそらく3番目に部屋に入ってきた不安げな子であろう。
 なにが原因でそうなっているのかはわからないが、先程からおどおどと落ち着かない様子である。
 顔立ちも幼く、この3人の中では最も子供っぽい。
 頭の後ろには大きなリボンが見え、それが幼さを更に強調させる。
 見ていると、こちらがほっこりしてしまう。

 3人それぞれの服装は母親が着ているそれと系統は同じに見えるが色が白を基調とした上品な色で統一されており、ところどころのワンポイントには髪色と同じ色が使われている。

 こうして、自分を囲む3人を一周して確認した。

「何ジロジロ見てますの?」

「不潔。気持ち悪い。ウジ虫。」

「あの……イヤ……です……」

 あ、青髪の子やっぱり俺のこと虫だと思って見てたのね。
 不覚にも、結構な時間見ていたようである。

 ちょっと下心はあったかもしれないけど。

 今から何をされるかもわからないこの状況で、彼女達の機嫌を損ねてしまってはよろしくない。
 なるべく友好的に話しかけて、時間を稼ぐんだ。
 そうすれば逃げる隙だってあるかもしれない。
 そう思い口を開く。

「あ、あのー、立ち話もなんですから、お、お茶でも入れますか?」

「虫の淹れた茶など飲めない。」

「あ、そうですか……」

 青髪の子が即答し、空間に沈黙がただよう。

 いったいどうすればいいんだよ!

 苦笑いをしながらフゥとため息をついた。
 俺、こんなことしてる場合じゃないんだけどな。

 気絶から目覚めて困惑しっぱなしの頭がこの沈黙おかげで冷静になる。
 あの出来事を一刻も早く調査し、スズの記憶を取り戻さなくてはならない。
 最も怪しいのは眼前にいるこの女である。
 なぜこのタイミングで俺を気絶させて家まで運んだのか。
 そもそもなぜ俺を襲ったのか。
 この女なら何か知っているかもしれない。
 そう思い、口を開きかけたところで。

「じゃぁ、とっとと終わりにしますわよ。」

 赤髪の少女がそう言うと、その少女の手元に突然大きな薙刀(ナギナタ)が現れた。

「そうね、時間の無駄。」

 今度は青髪の少女の腰元には日本刀が現れて抜刀の構えを取る。

「じゃぁ……さようなら……」

 黄髪の少女が両手を頭上に掲げると打ち出の小槌のような巨大なハンマーが現れる。

「な!?」

 終わる。
 三方向 から殺気が向けられ、本能が俺にそう告げる。
 始まる前に終わってしまう。
 そんな悔やむ時間すら与えてもらえず次の瞬間。

『ザク!』

『ザシュ!』

『ズドーーン!』

 けたたましい音とともに、俺の眼前は真っ暗闇に包まれた。
 不思議なことに痛みはない。
 即死だったのだろうか。妹を救えなかったのは心残りだ。
 だが、初めから俺を知らなかったことになっているため、兄を失う悲しさはないであろう。
 それが唯一の救いである。
 もう家族を失う悲しみをスズには味合わせたくない。
 そう思うと、死んでしまったはずなのに魂の中で安堵することができた。

(あ、死んだ後ってこんなに暗くて、でもあったかくてふわふわなんだな。なんだか気持ちがいいからこのふわふわをもっと味わおう。)

『むにゅ』

(ん? 妙に感覚が生々しいな。死んだ後もこんな感じなのかな?)

 そんなことを考えながら、とりあえず顔面のこの感触を楽しむことにした。

(顔面? まだ肉体があるのか?)

『むにゅ。むにゅ。』

「あぁん。やだわこの子ったらぁ。お、ま、せ、さ、ん!」

(ななななななんだ!? 息苦しい!)

「ぷは!」

 俺は酸欠による苦しさから顔を持ち上げた。
 すると顔の目の前に先ほどの女の顔がそれこそ鼻先がくっつきそうなほど近くにあった。
 俺は死んでいなかった。
 いや、ある意味では天国に行っていたようだが。
 なぜか殺されかけた直後に女の豊満な胸の谷間に顔を埋めていた。

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