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魔王、猫になる。〜魔王さまのほのぼの世界征服ライフ〜 第14話 魔王、城を得る。

 我輩は魔王である。名はトラ吉。

 城とは己が権威の象徴である。

 故に魔王にとって城とは非常に重要な存在だ。

 我輩も魔界では数千という国を滅ぼした際に城も奪い取ったが、マシな城など片手で数える程度であった。

 もちろん財など無限に等しいほどにあった。

 その金で腕の立つ職人を世界中から集め、何度か城を作らせた事もあったが満足できる城はひとつも作れなかった。

 とうとう我輩は自ら城を建築する事にしたのだ。

 もちろん設計には専門的な技術が必要だ。

 だが、我輩は叡智を授かりし魔王。

 そのような技術などすぐに会得できたわ。

 そして、自らがその陣頭指揮をとる超がつくほどの大規模な組織により、半世紀もの歳月を経てようやく満足のできる城が完成したのだ。

 今となっては有用な観光資源となっているだろうが、それもまた一興。

 ね、念の為言っておくが、別に元いた世界を征服した後に暇だったというわけではないぞ。

 だが、この世界に来てからというもの、城とは無縁の生活を送っておる。

『ブロロロ……』

 お、「じどうしゃ」の音であるな。

 どうやら主人①②が物資の調達から帰還したようだ。

「はー! 買いだめ買いだめ! よいしょ!」

「明日から台風だからね。 家に引きこもってやり過ごそう。」

「だけど、ちょっと買いすぎたかなぁ。買い物袋に入らなくてダンボールにまで詰め込んできたけど。」

 む?

 主人①よ、その「だんぼーる」とやらはなんだ?

「あれ? ちゃーちゃんどうしたの? ダンボールの匂いクンクンして。」

「お、じゃぁちゃーちゃんに『あれ』やってみようか。」

「『あれ』ってなに?」

「実家の猫によくやってあげてたんだよ見てな。」

 主人②よ、何か手際よくその「だんぼーる」とやらを加工しているがなにを……!?

 それは!?

「じゃじゃーん! ちゃーちゃんダンボールハウス〜。 説明しよう! ちゃーちゃんダンボールハウスとは入り口はギリギリちゃーちゃんが入れ……」

 主人②よ、そんなことはどうでも良い、早速試させてもらうぞ。

 む! このダンボールという素材はなんなのだ!?

 この肌触り、質感、湿度までもコントロールされておるぞ。

 しかも入り口には「要冷配送」という呪文が書かれた札が貼ってある。

 おそらくこの札による効果なのであろう。

「へー、ダンボールにこんな使い道があるんだね。ちゃーちゃん。満足してるみたいでよかったね!」

「ふふふ。このちゃーちゃんダンボールハウスにはまだ仕掛けがあるんだよ。」

 しかし、中は快適なのだが、入り口以外に小さな穴がいくつか空いているがこれは窓であるか?

 窓にしては少し小さすぎるが。

『ガサガサ』

 なっ! なんだ!

 小窓から何かが入ってきたぞ!

『ササッ!』

 む! 次は反対側の小窓から!

 ええい! このような仕掛けで我輩を翻弄できるとでも思っておるのか!?

 望むところよ。

 受けて立とうではないか。

ーーー

 はぁ、はぁ。

 少々我を忘れてしまった。

 しかし、いささかこの入り口は我輩には少し小さい気がするのだ。

 どれ、この我輩が自ら改築をしてやろうではないか。

「あ! ちゃーちゃん! 俺の自信作に何するんだよぉ〜」

 主人②よ、貴様の自信作など知ったことではない。

 これはもう我輩の城であるぞ。

 どう改築しようが我輩の勝手であろう。

 うむ。

 だいぶしっくりくるようになったぞ。

 どれ、我輩の城の寝心地でも確認するとしよう。

 そう、その時が来るまでは。

小窓と魔王さま

ダンボールハウスに納得のいかない魔王さま。



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