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世界の再構築者は3匹の猫耳少女に殺される!? 3-12 新たな生活⑤

「で、タカシさん。お弁当は何を買えば作れるのでしょうか?」

「ルコ、お前それでよくあんだけ自信満々に喋れたな。」

「私の敵にもならなそうですね。近藤くん。兄妹だからといってルコさんを手伝ってはダメですよ。」

 今、俺たちは学校帰りに俺が通っているスーパーに立ち寄っている。

「そう言う柳原さんはもちろん料理はできましてよね?」

「ま、まぁ。人並みにはできると思っていますよ。」

 そう言う柳原さんの額には少し冷や汗が滲んでいるような気がする。

「あら? 自信が無さそうですけど大丈夫ですの? 植松さんも参加すると聞いた時に動揺してらっしゃいましたものね。」

「そんなことないですわよ。」

「そうでしょうか?」

『……』

「「お、おほほほ!」」
 
 ルコと柳原さんは作ったような笑顔でしばらく見つめ合うと、どうしたのか急に笑い出した。
 なんだか柳原さんの口調もルコのようなお嬢様口調になってきている。

「これが一番合理的。」

「甘くて……おいしいと……思います……」

 一方、キキョウとリオンは2人それぞれ店内の商品を物色している。
 キキョウは惣菜売り場で出来合いの惣菜を手に取り、リオンはお菓子売り場でよく見かける定番のタケノコとキノコのチョコ菓子を手に取っている。
 俺はそんな2人からそっと視線を外し見なかったことにした。

「あれ? まだ買い物終わってねーのか?」

 マサは既に買い物を終わらせたようで、その手にはすでにスーパーの袋を持っていた。

「んじゃ、俺は先に帰るから後はがんばりなー。」

 マサはそう言ってそそくさと自転車を漕いで行ってしまった。

「さてと……」

 家の冷蔵庫の中は全て把握しているため、俺は足りない食材や調味料を手際よく買い物カゴへと放り込んでいく。

「あ……」

 店内を物色していると、目の前はにフルーツポンチの缶詰が陳列されていた。
 それを手に取ると2日前にちょうどここに来たことを思い出し胸が締め付けられる。
 2日前のスズとの思い出も、今は俺の中にあるのだから。

「お……お兄ちゃーん! どこですのー?」

 ガラガラとカートを押す音を響かせてルコが俺を恥ずかしそうに呼んでいる。

「感傷になんか浸ってる暇はないな。」

 俺はフルーツポンチの缶詰を棚に戻し、ルコの呼ぶ方へと足を進めた。

「な、なんだよこれ。」

 ルコの押すカートには弁当の材料とは到底思えないような食材が山積みとなっていた。
 柳原さんには手を出すなと言われているが、流石にこれでは勝負どころか大量の食材を廃棄しないといけない事態になりそうだ。
 柳原さんに見られていないことを確認して、最低限の助け舟を出すことにする。

「ルコ、とりあえずその食材はいったん全部戻して。このアプリでお弁当って調べたらいろんな料理がでてくるから作りたい料理を選んで必要な食材をカゴに入れて……」

「近藤くーん。」

 まずい、柳原さんがこちらに来る。
 俺は自分のスマホをルコに素早く渡した。

「わ、わかりましたわ。」

 そうしてルコはもう一度食材を選びに行った。

「近藤くん。あ、ここにいたのね。近藤くんって嫌いなものある? 先に聞いておいた方が良いかと思って。」

 柳原さんは気を利かせてそう聞いてくれているのだろうが、俺の耳にはその言葉は入ってこなかった。
 なぜなら、柳原さんのカートもルコとほぼ同じ状況となっていたからだ。

「や、柳原さん。何を作ろうとしてるの?」

「え。とりあえず食材を集めてから考えようかと思って。」

 結局、柳原さんのスマホにも同じアプリをインストールして料理と食材を決めるようにとアドバイスをした。
 これでルコだけを贔屓していることにはならないだろう。
 やっと一息つけたところで突然後ろからおじさんに声をかけられた。

「お客さん。あの人はお客さんのお連れの方ですか?」

 服装を見るとスーパーの店員さんのようだ。
 店員さんは顔こそ営業スマイルを装っているがその額にはくっきりと血管が浮かび上がっている。
 そして、店員さんの指差す方を見てみると、ルコが先ほどカートにいれた商品を棚に戻しているようなのだが、商品をまったく別の棚に戻したりと、もう滅茶苦茶だ。

「商品はおもちゃじゃないんですけどねぇ? ちゃんと扱ってもらわないとこちらも廃棄しないといけなくなるので買い取ってもらいますよ?」

「す、すみません! すぐにちゃんと戻しますんで」

 俺はそう言うと、ルコが滅茶苦茶に戻した商品を急いで正しい場所に陳列し直した。 

 さて、俺はいったい何を食わされるのだろうか。

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