世界の再構築者は3匹の猫耳少女に殺される!?  2-9 3匹+α②

「あらぁ? 急に元気になったのねぇ?」

 女はそう言うと、ソファーに座る俺を見下ろす。
 周囲が暗いこともあり月明かりに反射するその目には迫力があった。
 負けじと睨み返し、今度は身体が硬直しないように女の覇気を押しのける。

「うふふっ。いい目をするのねぇ。でも、あなたはもうオモチャにはなってくれそうにないし、じゃあ残念だけど。」

「!?」

 女は右手をゆっくりと俺の方へと前へ差し出し口元をニヤつかせた。
 直後、彼女の周りに何か風のようなものがまとわりついているよう感じて背筋に悪寒が走る。
 身の危険を感じ反射的に顔の前に腕を交差して目をつぶる。
 次の瞬間。

『パチン!』

 軽く小気味好い、よく耳にする音が耳に飛び込んできた。
 どうやら女は指を鳴らしたようだ。
 その音に思わずビクッと体を震わせてしまったが、俺の身体には特に何の影響もなかったようで、腕を交差させたまま恐る恐る目を開けてみると。

「あれ。明るい?」

「うふふっ。」

 先ほどまで月明かりが差し込んでいた窓から、今はなぜか日光が差し込んできている。
 現実離れした光景を目の当たりにして思考は完全に停止してしまう。

「どう? どう? 暗い方が雰囲気出てエロかったでしょぅ?」

「なっ?」

 明るくなった部屋で改めて女を確認する。
 先ほどまでの色気はどこへやら、子供のようにニタニタと笑って、アホなことを聞いてくる。

「雰囲気って大事よねぇ。そろそろ起きるかなぁと思ってね。思いつきで部屋の中を夜にして見たのよぉ。すごいでしょ?」

「は、はぁ。」

 部屋の中を夜にしたとはどういうことだろうか。
 日中に室内灯を消したぐらいではあの暗さになるはずもない。
 そもそも先程はカーテンも閉めておらず、月の光が直接差し込んでいたのである。

「いったい、どんな原理で暗くしてたんだ?」

 思わず声に出てしまった。

「うふ。それはね、あなた達で言うところの妖術で部屋を暗くしていたのよぉ。」

「よ、ようじゅつ……」

 俺は女を睨みつけていたが、妖術と聞いて顔の力が抜けた。
 どこのオカルトマニアだろうか。
 この現代社会で妖術など馬鹿げているというのに、それをさも当然かのように言っている。
 実は、かなり痛い人なのではないだろうか。

 百歩譲って妖術なんてものが使えたとしても、この人は俺をからかう為に妖術を使ったことになる。
 妖術とはそんなに気軽に使えるものなのだろうか。
 もうアホすぎてついていけない。

「そ、そんなの信じられませんよ。それでなくてもあなた達は勝手に人の家に上がり込んで。それって不法侵入ですよ? それに貴方は俺を気絶させたって言いましたよね? もう警察呼ばせていただきます。」

 警察へ電話をかけるため、自分のスマホを取ろうとソファーから立ち上がろうとした。
 しかし、足が震えてなかなか力が入らない。
 自分でも気づかなかったが体が緊張していたようだ。
 それもそうである。
 目の前には自分に危害を加えたことを認めた人間がいて、次は何をされるかわからないのである。

「あら、信じてもらえないのねぇ。」

 女は後から部屋に入ってきた3人の少女に目で合図を送った。
 それに反応した3人がコクっと頷き俺の周りを取り囲んだ。

「お母様の後始末をなんでわたしたちがやらなきゃいけないんですの?」

「不本意だ。後でちゃんと説明してもらう。」

「あの……ごめんなさい……。」
 
 今度はいったい何をするつもりだろうか。
 自分を取り囲んでいる3人に目を配る。

「な!?」

 先程は部屋が暗く、その容姿を確認することがてきなかったが、改めてその姿を見て率直な感想を口にした。

「……猫耳?」

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