魔王、猫になる。〜魔王さまのほのぼの世界征服ライフ〜 第16話 魔王、ケケケってなる。
我輩は魔王である。名はトラ吉。
最近になって己が主人たちは「ひゃっきん」と呼ばれる場所に頻繁に赴いているようなのだ。
推測ではあるが、「ひゃっきん」とはこの世界の闇市なのであろう。
魔王である我輩の統制下にある魔界でも闇市は開かれていた。
だが、あれは統制を成す側にとっては厄介極まりないものなのだ。
逆に、愚民どもにとってみれば非合法な取引ができるため闇市を開く輩が後を絶たない。
この世界にも闇市があってもおかしくはなかろう。
そんな闇市である「ひゃっきん」で主人たちは魔道具を頻繁に買ってきておる。
しかも、魔道具が破格の価格で手に入るというのだ。
闇市であるので当たり外れはあるのだろうが、主人は鑑定のスキルがあるのか当たりを多く引いてくる。
こないだなど、魔王であるこの我輩ですら精神を侵食されかけたのだ。
魔界にも様々な魔道具が存在するが、我輩に通用する魔道具など神器級の代物ぐらいだろうに。
ーーー
「ちゃーちゃん! 新しいおもちゃ買ってきたよ!」
うむ、主人①よ、また闇市に出かけたのか。
それが新しい魔道具とな。
見るからに貧相なつくりをしているが。
「これね〜、棒の先に紐がついててこうやって振るとね〜」
『ぶんっ!ぶんっ!』
「虫が飛んでるみたいでしょ〜」
ぬっ!
主人①よ、それを止めろ!
体の内側から何かが湧き上がってくる。
これは魔界におったときの悪夢が蘇る。
我輩の身体には先祖から受け継がれている魔王の血が流れている。
魔王の血とは戦いの血だ。
我輩はその血に抗い続け、知恵を武器にして世界を統べた者である。
だが、その魔道具を見ているとあの時のように血が沸き立つ。
我輩の身体に流れている魔王の血が!
「ねーねー! ちゃーちゃんがクラッキングしたよ!」
「えー、あほんとだ! やっぱり猫の血は争えないね〜」
なんなのだ!?
口が無意識にカクカク動いてしまうぞ。
わかったぞ。
その魔道具は相手の精神を侵食して混乱を誘発する魔道具であるな。
しかし、その紐の先端いついている虫のような何かから目が離せんのだ。
ええい!
それならばこちらから先手を打ってやろうではないか!
「ちゃーちゃんがキャットタワーから降りてきたよ!」
「お、やる気まんまんじゃん!」
愚弄しおって。
その魔道具の性能を見極めるために、しばらく付き合ってやろうではないか。
そう、その時が来るまでは。
ーーー おまけ ーーー
※これは猫のクラッキングという本能的な行動です。
詳しくはググってみてくださいw
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